生成AIや新しい働き方が浸透することで、オフィス需要はどう変わるのか。カナダのある不動産会社は、生成AIが自社のビジネスに与える機会とリスクを定量的に把握できず、全社的なAI導入に踏み出せずにいた。そこで、KPMGのプログラムにそって、まずは経営層へAI変革の全体像を説明し、生成AIがビジネスに与える影響の包括的分析に着手した。次に、自社の各組織機能のAI成熟度(現状/優先度)を分析。その結果、管理部門の44%、法務・施工部門の業務も約40%が不要になると予測された。これは、不動産会社にとってはオフィス需要の激減を意味する。そこでAIを軸にした戦略を再構築し、AI導入に向けたガバナンス体制(アクセルとブレーキ)を整備、人材戦略、全社展開施策によって、不動産業界におけるAI活用リーダーたる要員体制を短期間で確立した。
概要 Overview
課題(Before)
- 戦略不在と方向性の欠如
生成AIやハイブリッドワークが今後のオフィス需要に与える影響を定量的に把握できておらず、生成AI時代の具体的な戦略を描けていない
- 組織やガバナンスが未整備
生成AI導入に向けた会社としての準備状況(AI成熟度)を客観的に評価できておらず、AI利用のためのガバナンス体制も未整備でリスク管理の観点から懸念された
- スキルギャップの特定困難
従業員のAI関連スキルのギャップを把握できておらず、適切な人材育成プログラムを設計できていない
解決策(During)
- 第1段階:経営層向けトレーニングとワークショップ
KPMGが生成AIのメリットとリスクに関する経営層向けのトレーニングセッションを実施した後、具体的なビジネス機会を特定するワークショップを開催
- 第2段階:包括的な生成AI影響調査
業界調査、事業領域分析、広範なステークホルダーインタビューを実施。クライアントへの影響を調査
- 第3段階:AI成熟度評価
生成AIターゲットオペレーティングモデル(TOM)を用いて自社への影響を①サービス提供モデル②アーキテクチャとツール③データ④文化・組織・人材⑤ガバナンス⑥機能プロセスという6つの軸で評価し、優先度付きロードマップを作成。これらの評価結果に基づき具体的な行動計画を策定。
成果(After)
- 戦略的な意思決定の前提を明確化
クライアントのオフィス・管理部門の44%、法務・施工関連の37~44%の業務が減少しオフィス需要が激減する可能性を把握。ポートフォリオ構成と投資戦略を見直し - 人材戦略の明確化
影響調査により従業員のAIスキルギャップを明確に特定。AIスキル向上プログラムを導入し、重要業務領域でのAI専門知識を持つ人材の採用を優先化 - ガバナンス体制の強化
厳格なテストと検証プロセスを確立し、AIガバナンスを強化すべき領域(データプライバシー、セキュリティ、出力検証、バイアス対応)を明確化。プロトタイプ開発から本番展開、廃止に至るライフサイクル管理プロセスを導入 - 組織全体の変革と競争優位性の確立
一部チームの独自実験から、全社的なAI活用推進体制へと進化。明確なガバナンスのもと責任あるイノベーションを推進し、不動産業界におけるAI活用のリーダーとしての地位を確立