「条件に合致した仕訳しか抽出できない」「数千件の結果から絞り込むのに多大な労力がかかる」「会社ごとに勘定科目が違い、網羅的な分析は困難」。あるグローバル製造業企業の監査部は海外子会社モニタリングで“見えないリスク”に直面していた。数百社の海外拠点から毎月数十万〜数百万件の仕訳が集約され、約20名体制のシナリオベース分析では見落としを防ぎきれない。2022年末のChatGPT登場を機にAI活用を検討し、KPMGの「AI仕訳分析ツール」を導入。複数条件を同時に考慮し、高リスク仕訳の上位約100件を自動抽出し、従来では見えなかったリスクを可視化した。
概要 Overview
課題(Before)
- グローバル展開による管理の複雑化
現在の監査部門体制では、グループ全体の網羅的な管理に限界。従来の「増減分析」や「経理モニタリング」では、分析の深度が不十分 - シナリオベース分析の限界
事前に設定した条件に合致する仕訳しか抽出できないうえ、月次で数十~数百万件のデータから数千件が抽出され、絞り込みに多大な労力が必要 - 子会社ごとの特性も踏まえた網羅的な分析
金額的な重要度は子会社ごとに異なるほか、各社で勘定科目コードが異なり網羅的なシナリオ設定が困難 - 自社開発システムの限界
カスタマイズが可能というメリットがある一方、プログラミング可能な人材が限定され、メンテナンスやエラー対応などに課題
解決策(During)
- KPMGのAI仕訳分析ツールを導入
2022年末のChatGPT登場を契機に、AIによる課題解決を検討。実際のデータを使って分析した結果、前述した課題をクリアできると評価。 - AIによる高リスク仕訳の自動抽出
数カ月分の仕訳データをシステムに投入し、AIが複数の条件を同時に考慮して高リスク伝票上位100件を自動抽出。手入力エラー、期間帰属エラー、会計処理の誤りなどを識別 - 時系列分析と関連伝票検索機能の活用
AIが提示した高リスク伝票について、海外監査担当者がツールの分析機能を使って精査し、サンプル仕訳を効率的に絞り込み。海外子会社へのヒアリングと証拠資料入手を効率化 - 段階的な展開とグローバル連携
J-SOX対象の会社子会社を追加し拡大。各リージョンの内部監査人がツールを直接活用する体制へ移行予定
成果(After)
- 内部統制の課題を効率的に発見
手入力仕訳の自動化による経理業務の改善と、システムでエラーを防止する仕組みの導入を実現。修正仕訳の分析からも内部統制の不備を評価可能に
- 包括的リスク分析の実現
サンプル抽出ではなくデータを包括的に分析できるため、様々なリスクをダイレクトに発見。異常兆候の検知やリスク評価を自動化。 - 「見える化」によりリスクを直感的に把握
グラフやダッシュボードによる「見える化」により、異常値やリスクを直感的に把握
- グローバル監査体制の強化
年間数社しか実施できなかったモニタリングが、グループ全体に拡大。会計不正リスクの早期発見と再発防止、経理ガバナンスの高度化を実現。現地のガバナンス意識も向上した