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      企業活動の複雑化とデジタル化が進むなか、不正リスクへの対応はますます高度化が求められています。あずさ監査法人はAI技術を活用し、より高度で実務に即した不正検知の仕組みを構築しています。本連載では、「AI×不正対応」をテーマに、あずさ監査法人が取り組む技術と実務への応用事例について紹介します。

      第2回となる本稿では、企業全体の不正リスクを俯瞰し、ハイリスクとなる関連要因を“解釈”できるAIツール 「Fraud Risk Scoring_ai_3.0」を取り上げます。企業の財務諸表に“人の目では気づきにくい不正の兆候”が潜んでいる場合、こうした兆候に早期に気付き、監査人と企業(監査関与先)が適切に対応して、重大な結果を予防することが重要です。あずさ監査法人が開発した「Fraud Risk Scoring_ai_3.0」により、財務諸表に潜む不正の兆候を“見える化”して監査現場での対応につなげる取組みを解説します。


      Fraud Risk Scoring aiの全体像:リスクを0~1で「見える化」し、要因を「解釈」する

      Fraud Risk Scoring aiは、あずさ監査法人で開発され、これまでも実務適用と機能追加を継続してきたAIツールです。財務諸表などの公開情報をもとに、過去に会計不正があった企業の特徴を学習し、同様の特徴を持つ企業を早期に発見します。具体的には、不正のリスクを0~1のスコアで定量化、スコアが高いほど不正リスクが高いと評価され、リスクの高い領域に優先的に対応するための判断材料となります。これにより、監査人は客観的な視点で不正リスクを識別し、監査関与先にタイムリーに共有することで、未然防止や早期是正につなげることができます。


      Fraud Risk Scoring aiの全体像

      スコアの“背景”も、意思決定につながる形で解釈可能に

      2025年9月にリリースされた Fraud Risk Scoring_ai_3.0では、主に以下の機能が強化されました。

      高スコアとなった要因を特定しグラフ化

      リスクを数値化するだけでなく、そのスコアの裏にある要因を分析し、監査人が直感的に理解できる形で提示します。たとえば、財務諸表の特定項目や指標がどのようにスコアに影響しているかをグラフで可視化し、「なぜこの企業のリスクが高いのか」を一目で把握できます。スコアに影響する要因を、監査人が監査上のアプローチを判断しやすい指標を用いて解釈できる点も特長です。

      関連不正事例の表示

      スコアが高い場合には、過去の関連不正事例を参考情報として表示し、監査人が追加手続や対話の進め方を検討する際のヒントを提供します。これにより、単なる数値評価にとどまらず、リスクの背景を深く理解し、より戦略的な監査対応が可能になります。

      公開情報版と進行期版の機能統合

      従来は公開済み情報に基づく通常版と、監査対象である進行期の財務データを用いる進行期版が分かれていましたが、Fraud Risk Scoring ai _3.0では1つのツールで双方のデータに対応できるようになり、期中のモニタリングやレビューの一貫性が向上しています。

      こうした機能の強化により、Fraud Risk Scoring_ai_3.0は、より監査実務に適したAIツールとして進化しています。


      実際の監査フローにおける活用

      あずさ監査法人では、上場会社の監査計画において、監査関与先のリスク評価情報としてFraud Risk Scoring_ai_3.0の活用を進めています。スコアが高い場合には、影響度の高い指標の分析や過去スコアとの比較などを実施し、不正の兆候を示す状況かどうかを検討します。

      具体的には、以下のように監査手続の意思決定に活用します。

      • リスクが高い領域の絞り込み:スコアが上位数パーセントの高い水準となった場合や、特定指標の高スコアが出た場合は、早期に追加手続を計画します。
      • 「なぜ高いか」の解釈:財務指標の特定項目や指標とリスクの関係を表す線グラフ、ヒートマップで、リスクが高いと判断された要因を確認します。監査人から監査関与先の企業へ、リスクスコアに関する納得できる説明を実施します。
      •  期中モニタリング:進行期の数値を適時に確認し、スコアの変動を随時レビューします。必要に応じて適時に監査手続きの見直しを行い、早期の対応につなげます。

      監査関与先が得られるベネフィット

      監査人が客観的な視点で不正リスクを特定し、監査関与先にタイムリーに共有することで、不正の未然防止・早期是正につなげます。監査関与先の企業は、特定された「高リスクの要因」について深堀することで、不正リスクが高いエリアの特定や不正防止のための施策の検討をより効果的に行えます。


      Fraud Risk Scoring aiの将来像

      Fraud Risk Scoring aiは、あずさ監査法人がさまざまな研究の成果を反映し、改良を重ねてきたツールです。開発は現在も継続され、より実務に直結した機能強化を計画しています。例えば、業種特性(例:棚卸資産回転期間に関する業種ごとの中央値の設定など)を踏まえた指標を取り入れる検討も進んでおり、企業グループ全体を俯瞰する視点と個社ごとの解釈を両立させる進化を目指しています。

      あずさ監査法人が機械学習を用いた不正リスク検知ツールに適用した技術の詳細は、こちらの記事で公開しています。

      不正リスク検知モデル(Fraud Risk Scoring ai)

      Fraud Risk Scoring_ai_3.0は、不正リスクを「解釈して使う」ためのAI基盤として、監査人と監査関与先双方の具体的な対応を後押しするツールです。ただし、提示されるスコアはリスク評価を補完する情報の一部に過ぎません。スコアが低い場合でも、財務諸表に不正による重要な虚偽表示が含まれる可能性は常に存在し、監査人はその点を十分に意識する必要があります。

      あずさ監査法人は、監査DXを単なるテクノロジー導入ではなく、資本市場の信頼を守るための本質的な変革と位置づけ、実務への適用を進めています。次回は、AIエージェント活用による不正リスクの評価、実務対応の動向を取り上げ、監査実務に活用するポイントを解説します。


      執筆者

      あずさ監査法人
      Digital Innovation&Assurance統轄事業部

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