リモートモニタリングを推進するうえで、さまざまなイネーブラー(目標達成を促進するもの)が挙げられます。これらは海外子会社管理の高度化やグループガバナンス強化の実現においても、重要なポイントとなります。
1.ESGの潮流と地政学リスク
ここ数年で、日本企業を取り巻く環境はますます複雑化と不確実性を増しており、複数のメガトレンドが相互に影響し合う世界観のなかでのグループガバナンスの再考が、各企業に求められています。同様に、企業が対処すべきリスクの範囲は、時間・テーマともに拡大しており、リスクマネジメントの重要性が一層高まっています。
社会におけるサステナビリティへの関心度に比例して、企業のESGへの姿勢に対する感度も高まっており、対応に不備があった場合、消費者からの不買運動や取引先からの取引停止等、市場撤退を余儀なくされるなどの深刻な影響に発展するケースもあります。このように、リスクが多岐にわたり、またリスク発現時の影響が甚大になっているため、子会社一つひとつに至るまでリスクマネジメントの重要性が浸透し、実効性を持った活動が行われていることが重要です。
下図は企業が注視する必要のある重要リスクの一例と、今後重視すべきリスクを挙げています。
2.データ分析を活用した海外子会社モニタリング
コロナ禍において海外現地拠点への訪問が制限されるなかで、各企業が検討を進めた施策の1つにリモートモニタリングがあります。グループ全体の抱えるリスクを本社として適時に把握し、速やかに対応を行うために、データ分析手法を取り入れたモニタリングの実施が有用と判断されたと言えます。
データ分析を活用するメリットは、大きくは以下の3点であり、従来型の人手による対応と比べ、モニタリング活動の高度化が可能となります。
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社内ルールの違反や異常取引の検出など、取引の視点でのモニタリングテーマの一例は以下のようなものがあります。財務データと非財務データを組み合わせることで、多面的な分析が可能となります。
| 1 | 業務領域 | モニタリング対象 |
|---|---|---|
| 2 | 経費分析 |
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| 3 | 購買分析 |
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| 4 | 労務管理 |
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| 5 | サードパーティー分析 (取引先管理) |
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| 6 | 販売店管理 |
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| 7 | 不正に特化した分析 |
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3.リモートモニタリングを契機としたグループガバナンスの強化
ITインフラの整備
子会社管理を進める際、グループ内に散在した情報を収集するための仕組みについて、検討を行うことが望まれます。近年、普及が進んでいるコラボレーションツールを活用することで、財務データに限らず、非財務データも含む多様な情報を効率的に収集・共有することが可能です。
業務の標準化 ~管理標準の整備
経理や法務、人事等の管理テーマごとに、グループとして最低限遵守すべき要件や実施手順を明確化します。これらをグループ共通の「管理標準」として各子会社に展開することで業務品質を統一するとともに、本社・子会社におけるモニタリング活動に使用することで、内部統制・コンプライアンスの強化が可能です。
体制整備 ~グループ「2線」機能の強化
子会社管理における本社管理部門の役割・責任を明確化し、事業部門との棲み分けを再整理することがポイントです。また、本社・子会社間の機能軸でのレポートラインの確立により、グループ全体の横串を効果的に作業させることが可能となります。
4.おわりに
経営環境の変化に速やかに対応し、企業価値を継続的に向上するためには、グループ共通の業務運営基盤を前提としつつ、社内外の専門リソースの知見を活用しながら各地域・事業の個別事情にしなやかに対応を行うことが必要です。
【グループガバナンスの将来像】
執筆者
KPMGコンサルティング
アソシエイトパートナー 鎌形 潤