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      本稿は、KPMGコンサルティングの「Automotive Intelligence」チームによるリレー連載です。
      インドにおける、二輪車BEV(バッテリー電動二輪車)の急速な市場拡大、その背景にある要因、特徴について解説します。

      1.インド市場における二輪車BEVの急成長

      二輪車販売台数が年間1,500万~2,000万台で推移する世界最大の二輪車市場を持つインドで、二輪車のBEVの販売が伸びています。2023年の二輪車BEV販売台数は約90万台に達し、2022年から30%以上増加しました。その背景には、車両価格がガソリン車に比べて割高なことや、充電インフラが十分に整備されていないなどのマイナス要因もありますが、ガソリン車と比較して燃料費が大幅に低くなるといった経済性がポジティブ要因として挙げられます。

      【インドにおける二輪車BEV/ガソリン車の燃料コスト比較※】
       BEVガソリン車
      車両価格(量販価格帯)7万~19万ルピー7万~11万ルピー
      燃料価格20~45ルピー/フル充電
      (6.5~10ルピー/kWh)
      90~100ルピー/L
      (2024年7月現在)
      航続距離/燃費80~120km/フル充電
      (実燃費、推定)
      50~70km/L
      100km走行あたりの燃料コスト(推計)20~40ルピー150~250ルピー

      出所:KPMG作成

      ※燃料コスト比較は2024年時点の内容で、KPMGによる推計・試算を含みます。BEVおよびガソリン車(スクーター/モーターサイクル)の主要製品のスペック等を参照し、車種・スペックにより燃費性能等が異なるため、一定の幅を持たせています。

      2.購入補助金による需要喚起

      インド政府は、2010年代半ばから電動化政策を導入・強化してきました。その一環として、二輪車BEVへの購入補助金制度を導入しています。その背景には、複数の国家的課題の深刻化があります。

      1つ目は、石油・ガスの輸入依存度が70%前後(2010年代半ば時点)であったため、貿易赤字が拡大したことです。2つ目は、中長期的な人口増加と経済成長の影響で化石燃料消費量の急増が予想されているため、エネルギー安全保障が国家的な戦略課題となっていることも挙げられます。また、首都デリーの高等裁判所が「ガス室」と指摘するほどに大気汚染問題が深刻化し、政府に改善を求める事態が起きたことも背景のひとつです。

      このような状況のなか、インドでは新車販売および保有台数の拡大により、特に二輪車のBEVの導入が政策の優先課題として位置づけられています。2015年4月に導入された電動車普及促進スキーム「FAME-India」が導入され、購入補助金の給付を柱に需要喚起が図られてきました。

      2019年4月は、「FAME-India」の第2フェーズが開始され、2021年6月~2023年5月までの期間中、さらに二輪車のBEV購入に対する補助金が引き上げられ、需要拡大につながりました。2022年~2032年を対象とする国家電力計画では、BEV普及拡大のインパクトも織り込んで、発電と蓄電容量を引き上げていくなど、需要創出と並行して電力供給体制などのインフラ整備も進められています。

      【「FAME-India」第2フェーズにおける二輪車のBEVへの購入補助金】
      時期購入補助金単価購入補助金上限額主な要件予算
      2019年4月~
      2021年6月
      1万ルピー/kWh
      (電池容量ベース)
      車体価格の20%工場出荷額
      最大15万ルピー
      100万台分
      2021年6月~
      2023年5月
      1.5万ルピー/kWh
      (電池容量ベース)
      車体価格の40%
      2023年6月~
      2024年3月
      1万ルピー/kWh
      (電池容量ベース)
      車体価格の15%

      出所:ページ末尾記載の各公表データを基にKPMG作成

      3.政策と製品の両輪で加速する市場拡大

      政策面の取組みが進む一方、2020年前後に地場の新興企業を中心に二輪車のBEV事業を立ち上げる動きが本格化し、ブランドや車種、性能、価格の観点で消費者の選択肢が広がっています。2024年現在、二輪車のBEV市場には100以上のブランド・メーカーが参入しており、新興企業と地場系大手企業がシェア上位を競っています。製品ラインナップをみると、通勤・通学用途のスクーターが比較的多く、主力製品の価格帯は7万~19万ルピー前後となっています。加えて、スポーツモーターサイクルやクルーザーなどの車種も多数みられ、20万ルピーを超えるプレミアムモデルも登場しています。 

      インドの二輪車のBEV市場は成長期の初期段階にありますが、政府支援と製品供給の両輪が回り始めたことで、市場規模は100万台を超えていく段階に達しています。さらに前述のように多数のプレーヤーが参入しているため、今後2030年にかけて市場規模が1,000万台以上に拡大するとの予測もあります。このような市場環境において、二輪ガソリン車市場で高いシェアを持つ日系OEMおよびサプライヤーにとっても、このマーケットの成長性と競争リスクを積極的に取りに行くのか否か、競争優位性を保つための重要な戦略が問われています。

      【インド二輪車のBEV販売台数・BEV比率】
      インドにおける二輪車BEV普及と市場拡大の背景とは_図表1 出所:ページ末尾記載の各公表データを基にKPMG作成

      ※燃料コスト比較は2024年時点の内容で、KPMGによる推計・試算を含みます。BEVおよびガソリン車(スクーター/モーターサイクル)の主要製品のスペック等を参照し、車種・スペックにより燃費性能等が異なるため、一定の幅を持たせています。

      本文およびグラフの数値は下記資料を参考にしています。

      インドで躍進する二輪車BEV市場の考察

      本シリーズは全2回で構成されております。

      「インドで躍進する二輪車BEV市場の考察」第2回。インドにおいて重要視される二輪車BEV国産化の課題と、その解決にむけて動く政府やメーカーの取組みを解説します。

      「自動車サプライチェーン ~グローバル企業と中国企業の比較分析~」第2回。自動車のバッテリー材料となる資源の埋蔵量および生産量を国別に解説し、サプライチェーンの形成を考察します。

      再生可能エネルギーの調達環境に恵まれているモロッコの優位性や、そこに注目する各国の自動車サプライチェーン動向を解説します。


      KPMGコンサルティング

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