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      本稿は、KPMGコンサルティングの「Automotive Intelligence」チームによるリレー連載です。
      インドの二輪車BEV(バッテリー電動二輪車)における国産化に関する主要課題や、国産化推進に向けた政府やメーカーの取組みおよび輸出拠点化の可能性について詳述します。

      1.BEV部品の国産化が重要課題

      インドでは、二輪車を含む自動車業界全体において、BEV主要部品の国産化が喫緊の課題の1つとなっています。国産化が進まずに輸入依存が続く現状では、BEVの普及とともに貿易赤字がさらに拡大する可能性があるからです。

      実際、BEV用リチウムイオン電池のセルやパックの大部分は中国からの輸入への依存度が非常に高い状況です。リチウムイオン電池の輸入額は、2023年で29.4億ドルに達し、そのうち75%が中国(香港を除く)からの輸入となっています。2016年度までは5億ドル未満でしたが、2018年度に10億ドルを超え、さらに2022年度には30億ドル弱に達し、増加傾向にあります。二輪車(ガソリン車)では、エンジンを含む主要部品を国産化できていますが、BEVにおけるこの状況に対して、インド政府は輸入依存を解消し、国内生産を強化しようとしています。

      【インドのリチウムイオン電池輸入額】
      出所:ページ末尾記載の各公表データを基にKPMG作成

      2.インド政府のBEV国産化政策

      前述のとおり、BEV関連部品の国産化政策が大きな課題であるなか、インド政府は二輪車を含む自動車業界全体で、どのように国産化を推進しているでしょうか。
      主な施策の1つに電動パワートレイン部品を対象とする段階的生産プログラム(PMP)があります。このPMPでは、部品ごとに国産化の達成期限などが決められ、その達成が電動車普及促進策である「FAME-India」第2フェーズの新車購入補助金の受給要件になっています。また、BEVおよび電動パワートレイン部品を含む自動車分野、電池セル分野を対象に、生産連動型インセンティブ(PLI)スキームを導入しています。

      参加企業は、投資額などの要件を達成する必要がありますが、生産量の増加額に応じて政府補助金を受給できます。政府補助金の予算額は、自動車と電池セルの2つの分野のPLIで約4,400億ルピーです。これまでインド政府は、国家予算からの支出を伴う産業支援策をほとんど実施してきませんでしたが、PLIでは多額の産業補助金を給付する方法を採用し、国内生産の奨励と海外輸入依存からの脱却を図ろうとしています。

      【インドのBEV国産化に関連する主な政策】
       段階的生産プログラム(PMP)生産連動型インセンティブ(PLI)
      正式名称Phased Manufacturing ProgrammeProduction Linked Incentive
      主な目的国産化推進投資促進、サプライチェーンの強靭化
      自動車関連
      プログラム
      電動パワートレイン部品EV充電器部品BEV、FCEV、自動車部品(PLI-Auto)電池セル(PLI-ACC)
      発表時期2019年3月2021年11月2021年9月
      (閣議承認)
      2021年5月
      (閣議承認)
      政府予算2,593.8億ルピー1,810億ルピー
      内容国産化に関する期限・ルールを規定投資奨励金(政府補助金)を給付
      その他「FAME-India」第2フェーズの優遇措置と連動新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を機に導入

      出所:ページ末尾記載の各公表データを基にKPMG作成

      3.自動車メーカー・サプライヤーが進めるBEV主要部品の国産化

      インドの二輪車メーカーおよびサプライヤーは、二輪車BEV市場で主要部品の国産化を積極的に進めています。
      既存のガソリン車向けサプライヤーの一部が二輪車のBEV分野に進出しているほか、新興メーカーやスタートアップも新規参入しており、主要部品である駆動用モーターやパワーコントロールユニットなどの国内生産に取り組んでいます。
      また、リチウムイオン電池セルの国産化も進行しており、電池材料であるリチウムやコバルトなどの重要鉱物資源の確保に向けた国内外での調達戦略も重要な課題となっています。段階的ではありますが、輸入に頼らない生産体制が整いつつあります。

      4.二輪車BEV輸出拠点化の可能性と将来展望

      二輪車BEV市場がさらに拡大し、国産化および量産効果によるコスト競争力の向上が進むことで、インドは将来的に二輪車のBEVおよび電動パワートレイン部品の輸出拠点として成長する可能性が高まっています。すでに、乗用車および二輪車のガソリン車で輸出拠点化を実現していますが、同様のことが二輪車のBEVでも見込まれています。

      特に、東南アジアやアフリカといった地域は、二輪車のBEV需要拡大のポテンシャルがあり、期待される市場です。インドで事業展開する二輪車メーカーおよびサプライヤーにとって、内需の成長性をどう取り込むかが成長戦略の優先事項ですが、環インド洋諸国に対する市場開拓も今後検討すべき優先事項の1つとなっています。

      本文およびグラフの数値は下記資料を参考にしています。

      執筆者

      KPMGコンサルティング
      マネジャー 中田 徹

      インドで躍進する二輪車BEV市場の考察

      本シリーズは全2回で構成されております。

      「インドで躍進する二輪車BEV市場の考察」第1回。インドで二輪車BEV市場規模が大きく拡大している背景とその特徴を、成長を支える政策とともに解説します。

      自動車業界を対象にしたグローバル調査の結果を基に、各国のエグゼクティブが予測するBEV(バッテリー電気自動車)の市場予測と展望を考察します。

      「進化するモビリティ」第6回。世界最大の二輪車市場であるインドのEVバイク需要と日本企業の成長機会について考察します。

      KPMGコンサルティング

      戦略策定、組織・人事マネジメント、デジタルトランスフォーメーション、ガバナンス、リスクマネジメントなどの専門知識と豊富な経験から、幅広いコンサルティングサービスを提供しています。

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