Skip to main content

読み込み中です


      I.TCFD提言等の経緯

      第1回の図表2でTCFD提言の内容をごく簡単にご覧頂いていますが、最初に今までのTCFDに関する出来事を時系列で追ってみたいと思います(図表1)。

      (図表1)TCFD関連イベントの経緯
      DATEEVENT
      2015年4月G20財務大臣・中銀総裁会議がFSB(金融安定理事会)に気候関連課題に対する金融セクターの対応を要請
      2015年12月FSBがTCFDを設立
      2015年12月パリ協定採択
      2017年6月TCFDがFSBに最終報告書(TCFD提言)を提出、公表
      2018年9月TCFDがステータスレポート第1弾を公表
      2019年6月TCFDがステータスレポート第2弾を公表

      (筆者作成)

      この中でパリ協定だけがFSBが主体となっていないものになります。
      図表1にパリ協定を記載した趣旨は、TCFD提言がパリ協定を意識したものだからです。TCFD提言のエグゼクティブサマリーの冒頭でパリ協定が引用され、同提言に基づく開示フレームワークの根幹をなすものとして紹介されています。


      II.TCFD提言の概要

      1.TCFD提言が必要とされた理由

      TCFD提言はご存知のように気候関連リスクに関する開示のフレームワークであり、開示するか否かは任意とされています。この気候関連リスクは中長期のリスクであって不確実性が高いリスクということになります。

      先般の金融危機において短期的な視点からの投資に対する反省の機運が生まれ、長期投資への流れが出てきました。また、昨今の一連の異常気象等による損害額の発生、地球温暖化による環境の変化が強く意識されるようになってきました。投資スタンスが中長期化したことから、投資期間に見合うリスク管理も同様に中長期化することになります。

      FSBは金融システムの安定を主目的の一つとする国際機関であり、金融システムの安定のためには銀行が当初見込み通りに貸出金を回収できたり、損害保険契約を引受ける保険会社が想定内の保険金支払いができたり、機関投資家や資産運用会社が想定のリスク内で投資の果実を手にすることができることが重要になります。異常気象やそれに伴う自然災害等を原因とする投融資先企業の資産の毀損や劣化、想定を上回る保険金の支払い、予測を上回る投資資産の毀損などが広がると金融システムの安定にネガティブな影響が生じます。

      また、気候変動によるリスクを抑えるためには、低炭素経済への移行が必要となりますが、その過程で現有資産の価値の毀損や現存技術の陳腐化・劣化などのリスクが生じます。このような事態を事前に防止するためには、投融資先の企業が気候関連リスクに係るリスク管理、それに対する戦略をきちんと立て、全社的なガバナンスの中で経営者や取締役会が関与することが必要になるとともに、適切なKPIを設定するなどして達成度合いをモニタリングすることが必要です。

      また、気候関連リスクはそれが単にリスクとなるだけでなく、経営環境の変化に伴って新たなビジネスチャンス(機会)をもたらすことにもなります。投融資する側の金融機関にとっては上記のような情報を入手することで中長期の目線にも立った形で判断することができますし、投融資を受ける側の企業としても必要な情報を開示することで中長期の資金を調達することなどが可能となります。

      情報開示による透明性を確保することで、資金の出し手と受け手がともにメリットを受けることになります。この情報開示に関するフレームワークがTCFD提言となります。


      2.開示対象とする気候関連リスクと機会

      移行リスクと物理的リスク、関連する(ビジネス)機会が開示対象となります。

      (1)移行リスク
      低炭素経済への移行は、そのための政策遂行に伴う法令・規制の変更・追加、技術の陳腐化、などをもたらします。こうした事象の影響によって、企業に対して財務的なリスク、レピュテーションに係るリスクをもたらすと考えられています。

      具体的には、I.政策及び法的なリスク、II.テクノロジーに関するリスク、III.市場に関するリスク、IV.レピュテーションに関するリスクが挙げられています。このうちIは温室効果ガスの排出を削減するための各種政策が企業の業績に与える影響を通じて財務的なリスクを生じさせたり、気候関連リスクへの対応を巡って訴訟が提起されるリスクを指します。

      IIは低炭素経済への移行に伴う技術革新やイノベーションによってサプライチェーンが劇的に変化したり、生産・流通コストが大きく影響を受けたりするようなリスクを指します。

      IIIは気候変動によって商製品・サービスの需給が変動するリスク、IVは気候変動に対する企業のスタンスが地域や顧客グループの間での認知度や選好度に影響するリスクを指します。

      (2)物理的リスク
      物理的リスクは、台風、洪水などの異常気象によって生じる資産の毀損やサプライチェーンの分断などが生じる急性的なリスク、継続的な海面上昇や高温による熱波などが引き起こす事業オペレーションへの影響などの慢性的なリスクに分けられます。

      (3)機会
      TCFD提言は気候変動及び低炭素経済への移行に関連したビジネス機会についても提言しています。エネルギー利用効率の向上による組織運営コストの低下、再生可能エネルギー等による資源利用の効率化、新商製品・市場の開発と拡大、グリーンボンド等を利用したグリーンプロジェクトの推進、などです。


      ご紹介:TCFD及びEUタクソノミーに関するKPMGジャパンのサービス等

      KPMGジャパンでは、GSDアプローチによるTCFDアドバイザリーサービスを提供しています。
      また、EUタクソノミーに関するご相談を受け付けています。
      詳細は、ページ内の「お問合せフォーム」もしくは「ご依頼・ご相談 RFP(提案書依頼)」からお問い合わせください。
       

      ※ GSDアプローチとは、Gap analysis(TCFD最終提言とのギャップ分析)、Scenario analysis(シナリオ分析)、Disclosure analysis(開示内容・手法の妥当性分析)を指します。


      執筆者

      KPMGジャパン
      コーポレートガバナンスCoE/TCFDグループ
      テクニカルディレクター 加藤 俊治

      加藤 俊治

      KPMGサステナブルバリューサービス・ジャパン/有限責任 あずさ監査法人 金融統轄事業部/サステナブルバリュー統轄事業部 テクニカル・ディレクター

      あずさ監査法人


      気候変動リスクは投資家、開示企業だけでなく社会的な関心事です。サステナビリティを見据えてTCFDに関するさまざまな情報を提供します。

      気候関連リスクに関する社会の関心が高まっています。本ページでは、関連するさまざまな情報について、最新動向を含め発信しています。

      財務報告と非財務情報に関する知見を結集し、統合報告で戦略的な開示を実現するための様々なサービスを提供します。