複雑な社会課題を解決する量子コンピュータの未来ー「次世代ビジネスを牽引するテクノロジー最前線」

KPMG×先進技術をビジネスに取り入れるイノベーション企業との対談/株式会社エー・スター・クォンタム代表取締役社長兼CEOの船橋弘路氏をお迎えし、量子コンピュータの可能性について伺いました。

KPMG×先進技術をビジネスに取り入れるイノベーション企業との対談/株式会社エー・スター・クォンタム代表取締役社長兼CEOの船橋弘路氏に、量子コンピュータの可能性について伺います。

昨今、企業を取り巻く複雑な課題を解決するエマージングテックが多数登場しています。特に、量子コンピュータは物流の最適化や創薬、金融商品の価格予測など、さまざまな分野で革新的なソリューションを生み出すことが期待されています。その一方で、量子ビット数の制約や量子エラー訂正技術の必要性など数多くの課題も抱えています。技術の本質を捉え、技術が保有する機能や性能を最大限に導き出し、活用することは大きなチャレンジといえます。

今回は、量子コンピュータと独自データベース技術で複雑な社会課題を解決する株式会社エー・スター・クォンタム代表取締役社長兼CEOの船橋弘路様をお迎えし、ビジネスの未来を大きく変える可能性を秘めている量子コンピュータについて、KPMGコンサルティング株式会社の馬場功一、海保忠勝、KPMGアドバイザリーライトハウスの松尾英胤がお話を伺いました。

セキュアなIoTインフラが生み出す新たなビジネスチャンス(前編)-1

登壇者

船橋 弘路 様:株式会社エー・スター・クォンタム 代表取締役社長兼CEO

馬場 功一:KPMGコンサルティング株式会社 執行役員 パートナー

海保 忠勝:KPMGコンサルティング株式会社 シニアマネジャー

松尾 英胤:株式会社 KPMGアドバイザリーライトハウス 執行役員 パートナー

(以下、敬称略) 

お問合せ

1.量子コンピュータ業界における2つの方向性

松尾:まず、量子コンピュータ1と最適化計算を活用したソリューションのトレンドについてお伺いしたいと思います。昨今、注目されている量子コンピュータ業界はどのような状況であるとお考えでしょうか。

船橋:量子コンピュータ業界には、大きく2つの方向性があります。1つは量子超越(従来の古典コンピュータでは実現不可能な計算能力を量子コンピュータが達成すること)を目指す王道路線。すなわち、量子超越を達成できないならば意味がないという立場です。もう1つは、発展途上でも例えば量子シミュレータを使ってでもアプリケーションソフトを先行して作っていこうとチャレンジする、私たちのようなベンチャー路線。こちらは、お客様の課題が解決できるのであれば現時点では量子超越性がなくてもよしとする立場です。

王道路線とベンチャー路線には、ハードウェア的な量子超越性を求めるかという点で大きな違いがあります。たとえば、私たちが量子コンピュータのあるシステムを作り、発表するとします。これを受けて、量子超越性の実証を目指されている方たちからは「まだ量子超越が起きていないのに、そんなことできるわけがない」という批判が寄せられます。アカデミアからは「完全な量子コンピュータの実現は20年後」という慎重な見方も示されています。このような状況においては、量子超越は起きていないが、量子技術を応用したソフトウェアの実用化に成功しているという私たちの主張は、十分な理解を得られづらい点もあります。

松尾:そのような環境でソフトウェアの開発に着手されるのはかなりチャレンジングだと思います。そもそも、どうしてチャレンジしようとお考えになったのでしょうか。

船橋:量子超越が起きた量子コンピュータの登場を待っていては、競争に負けてしまうからです。ですから、理想的な量子コンピュータが出てくる前に、量子アルゴリズムを用いた処理をシステムの系の中に取り込んでいくことから始めようと考えました。

誤解を招くことを恐れず言いますと、私たちは量子超越性にこだわっていません。ハードウェアが進化した先で私たちのソフトウェアが動いて、良いパフォーマンスが出せればいいというスタンスです。ですが、「なら古典コンピュータだけでもできるだろう」と思われてしまい、このスタンスはなかなか理解されません。確かに、古典コンピュータでアルゴリズムを発明して、超高速に動くプログラムを作ればできるでしょう。何しろ、量子超越は起きていないのですから。でも、そこでの戦いを続けていては、いつまで経っても量子コンピュータによる社会実装は始まらないでしょう。システムの系の中に量子コンピューティングを取り入れて、少しずつ少しずつ、ハードウェアの進歩と歩調を合わせ、新たに発見されたアルゴリズムを取り入れていくという、なだらかなグラデーションで発展していこうというアプローチです。 

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株式会社エー・スター・クォンタム
代表取締役社長兼CEO 
船橋 弘路 様

松尾:見えないところに対する不安感もあり、発展途上の技術を活用するというのは難しいものがあります。船橋様はなぜ、課題解決に量子コンピュータを活用しようと思われたのでしょうか。

船橋:最先端技術の活用でよくあるのは、その技術を何に応用できるかを考えるというアプローチです。ですが、それではいつまでたっても「古典コンピュータのほうが速い」となってしまいます。ですから、私たちはシーズから入るのではなく、「お客様はどのような課題を解決したいのか」というニーズから入るようにしています。その手段として量子コンピュータが活用できる部分を見つけて応用します。量子コンピュータはまだまだ発展途上で、望むような結果が得られないことも多いですが、活用できるところには積極的に活用するようにしています。

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株式会社 KPMGアドバイザリーライトハウス
執行役員 パートナー
松尾 英胤

2.AIだけで対応できないケースの解決策としての 量子コンピュータ

松尾:エー・スター・クォンタムを設立した背景、そして船橋様の量子コンピュータへの関わりについて教えていただけますか。

船橋:私は幼少期からプログラムに熱中しまして、それが高じてIT業界に入りました。誰もがご存じのさまざまな大規模なサービス群を手掛けてきました。それらの開発がひと段落ついた頃、当時、通信大手の取締役で、現在弊社の取締役から「一緒にAIをやろう」と誘われたことをきっかけに、AIの研究にどっぷりと浸かりました。ちょうど第三次AIブームが到来した頃です。さまざまなユースケースに触れましたが、学習データがなくても直面する現実にすぐに応えて意思決定しなければならないといった、AIだけでは解決できないケースが多々あることに気づきました。もちろん、if文を実行し続ければ実現不可能ではありません。しかし、それでは望まれる時間内に処理が終わらず、リアルタイム性が失われます。

他に方法はないかと考えた際、多くの場合は数理最適化というオペレーションズリサーチのほうに傾倒することが多いでしょう。しかし、私は当時話題になった量子アニーリング2マシンを使うことを思いつきました。実は昔、量子力学の書籍3の共同制作に参加したことがあり、私はシュレディンガー方程式の章を担当しました。この本はノーベル物理学賞を授与された南部陽一郎先生に推薦文をいただきました。取組みの方向性に対しては、当時ご存命だったファインマン先生(量子コンピュータの出現を予言したアメリカの物理学者)にも絶賛していただきました。そのようなわけで、もともと量子には関わりがあり、馴染みがあったのが大きいです。この本は数万部という規模で発行されたので、広く一般に知られることになりました。恐らく、「量子力学」という言葉が広まった1つのきっかけとなったのではないでしょうか。当時、小学生や中学生だった方がこの本を読んで量子力学の面白さを知り、いま物理学者になられているという先生も少なくありません。

馬場:なるほど。しかし、未完成のものにチャレンジするというのは、なかなかできることではないと思います。

船橋:当時、クラウドベースの量子アニーリングマシンのサービスが登場しました。量子ビット数(量子情報を扱う基本単位)も少なく、量子トンネル効果(量子力学的な現象の1つで、量子計算の重要な基礎となる効果)も十分な性能には達していません。ですが、私たちが今使っているパソコンも、登場当初は“おもちゃ”と揶揄されるも、現在では生活に不可欠な存在となっています。ですから、量子コンピュータでも同様のことが起こり得ると考えています。多くの開発者の知恵と努力で困難を乗り越えて、進化していくはずだと。

私たちには、ハードウェアを開発する力はありません。しかし、ソフトウェアなら開発できますし、量子力学も理解しています。であれば、ビジネスの実課題を解くようなシステムに量子コンピュータを組み合わせてはどうかと考え、この会社を立ち上げました。

海保:その発想の跳躍に、私は非常に感銘を受けました。たとえ今はハードウェアに誤り耐性がなくても、将来的には実現するでしょう。ソフトウェアも今の段階ではよちよち歩きかもしれませんが、誤り耐性がついたハードウェアで使えるようになったら、もしかしたら10倍~1万倍のパフォーマンスを引き出せるかもしれません。

新しい技術が社会に浸透する時というのは、ハードウェアの成長とソフトウェアの成長、その上のインターフェースが全部揃ってようやくみんなが使えるようになると、私は考えています。画像認識AIがソフトウェアレイヤーの、生成AIがインターフェースの進化でブレークスルーにつながったようにです。

船橋:先進テクノロジーの浸透具合を示すハイプ・サイクルにおいて、AIも典型的な軌跡をたどっており、少し前は一時的な幻滅期にあったように思います。世間的に冷めた見方が広まっていました。AIといっても画像認識や基本的な予測分析といった限定的な機能にとどまり、データの収集や前処理の課題も解決されていませんでしたから。しかし、その裏ではたゆまぬ改善が続けられており、その結果、生成AIが出てきたわけです。

量子コンピュータも、まさに今が幻滅期だと感じます。量子コンピュータの冬の時代です。実用化は10~20年後だろうと推測され、短期的な期待は低下しています。しかし、そうしたなか、2024年11月にMicrosoftとAtom Computingが、エラー訂正がされた量子コンピュータを2025年に市販すると発表しました。今年ですよ。もし2025年の今年、100量子ビット規模の実用的な量子コンピュータが登場し、2~3年後に300量子ビット規模へと進化を遂げれば、存在する多くの問題に対処できるようになります。そうなると、おそらく景色ががらりと変わるでしょう。生成AIで一気に変わったように、2025年が「量子コンピュータ元年」と呼ばれる可能性すらあります。

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KPMGコンサルティング株式会社
執行役員 パートナー
馬場 功一

3.古典コンピュータ+量子コンピュータで 現場の課題を解決する

馬場:ビジネスの課題解決に、量子コンピュータはどのように活用されているのでしょうか。

船橋:現時点では、量子コンピュータは発展途上にありますが、ソフトウェアは作らなくてはなりません。そのため、私たちは古典コンピュータ上で動く量子コンピュータシミュレータを使って補うという方法論を採ることがあります。このシミュレータは非常に性能が高く、量子ビット換算で40量子ビットくらいまではエラーがない状態をシミュレーションできます。私たちはその中で動くソフトウェアを研究開発し、良いものはビジネスの課題解決に取り入れていくようにしています。

海保:30量子ビットでおよそ10億通りの組合せの計算ができると記憶しています。40量子ビットあれば、現代の社会課題を解決できるのでしょうか。

船橋:社会問題を解決しようとするならば、200~300量子ビットが必要です。私たちは今、数理最適化のアルゴリズムと量子アルゴリズムを組み合わせて問題を解いていますが、やはり限界があり、限られた範囲での最適化に留まっています。しかし、エラーのない量子コンピュータが出てくれば、可能性は一気に広がります。たとえば、1つの都道府県の中での配送問題を全国規模で全体最適化できるというように、より大規模な課題にも対応できるようになるでしょう。

馬場:配送といっても、航空貨物や船のコンテナのようなグローバル規模のものから、病院内の医薬品の配達など多種多様です。それらの最適化は、量子コンピュータの性能に依存するのでしょうか。

船橋:そこまで依存するわけではありません。大部分を古典コンピュータ上で解くことができますから。よく知られている方法論は、制約を満たすパターンなどを古典コンピュータで列挙し、その中から最適な組合せを量子コンピュータで見つけるというものです。

あるプロジェクトで量子アニーリングマシンと量子コンピュータ技術を疑似的に応用したコンピュータを用いて、郵便トラックの台数を削減するための最適経路計算の実証実験を行いました。この実験では、量子アニーリングマシンのQPU上では70ミリセカンド(0.07秒)という結果が出ています。パソコンで非常に効率的なアルゴリズムでも、おそらくこの数値は出せないでしょう。しかも量子アニーリングの場合、数理モデルを定式化するだけで、特別なアルゴリズムを発明する必要がありません。これを使わない手はありません。要は適材適所です。

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KPMGコンサルティング株式会社
シニアマネジャー
海保 忠勝

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松尾:量子コンピュータが一番得意とする領域はどこでしょうか。よく言われる巡回セールスマン問題のようなものが得意でしょうか。

船橋:実は「得意である場合がある」としか言えません。初期に「巡回セールスマン問題が得意」という文言が独り歩きしてしまったために、そのようなイメージを持たれがちですが、実際は必ずしも得意とはいえません。むしろ古典コンピュータのほうが圧倒的に速いくらいです。

馬場:日本には「完璧ではないもので商売をするな」というような無言の圧力を感じる傾向があります。そうなると、得意なことがはっきりと言えないということが、量子コンピュータをビジネスで活用する際の課題となるように感じます。

船橋:そうですね。お客様からは、常に同じ答えが出るわけではないという量子計算の特性に対して懸念が示されることがあります。しかし、この特性は量子コンピュータの本質的な性質であり、むしろこれを活用することで効果的なソリューションを提供できることを説明しています。量子コンピュータをどうやって実際に実務で動くシステムに取り入れるのか。私たちは、その周りに制約をきちんと満たしているかを判定するプログラムを載せています。例えば量子アニーリングマシンを1回実行しただけでは良い解は返ってきません。しかし、きわめて高速に動くチップですから、1,000回でもそれ以上でも繰り返すことができます。そして、たくさん回すと実務において有用な高品質の解も出てきます。一見、乱暴なやり方に見えますが、過去にはそういう方法を使って、良い結果を出しました。結果さえ出れば良いわけですから。

海保:量子コンピュータを1,000回実行して、その結果を古典コンピュータで解釈するということですね。そうすると、実際の問題を解くには、どれほど量子コンピュータが進化しても、古典コンピュータで補完することになるのでしょうか。

船橋:そう考えます。量子コンピュータはあくまでも計算エンジンでしかありませんからね。マウスドライバを量子プログラミングで書いたり、画面描画を量子コンピュータで行ったりするようなことはないですから、常に古典コンピュータと併用することを前提としています。

4.「スピード」が強み ビジネスにおける量子コンピュータの可能性

松尾:コンサルティングの観点で、量子コンピュータに関して、お客様からどのような相談が多いでしょうか。

海保:2つのパターンがあります。1つは「量子コンピュータで何かできないか」というもの。もう1つはニーズ起点のものです。ニーズ起点の相談ではお客様から量子コンピュータという単語自体が出てくることはあまりありません。たとえば、配置を最適化したいというニーズがあり、数理最適化ソリューションで課題を解決しようとしてもできない場合に、我々から量子コンピュータの活用を提案するといった感じです。

馬場:量子コンピューティングに興味はあるというお話はたくさんありますが、今のところ、直接的なご相談は多くはありません。

海保:意思決定者が現場の取組みの重要性を理解しておらず、大きな取組みにならないこともあります。たとえば、CAE4シミュレーションに量子コンピュータを使うという事例があったのですが、小規模な実証実験で終わってしまいました。最近では、そうした重要性の認識や量子コンピュータを利用するための事前準備のような相談もあります。

松尾:量子ベンチャーである御社の場合、お客様からの相談も量子技術の利用が多いのでしょうか。

船橋:そうですね。「量子計算だけで成果を出したい」という意欲的な要望をいただくこともありますが、期待通りの成果を得られないケースが少なくありません。というのも、現時点では量子超越が起きておらず、実用的な量子コンピュータも限られていますから、望ましい結果も出ません。小規模な実験で終わってしまう。

一方で、「量子と古典計算の組合せを用いて、必ずしも量子のみでなくてもいい」とおっしゃるお客様の場合は、ほとんどのケースがうまくいっています。さまざまな方法を試して、最善のソリューションを提案します。私たちは量子ベンチャーですが、お客様が望むものを提供することを第一に考え、極端な例では量子コンピュータをまったく使わないシステムを作ることもあります。もちろん、活用できる量子技術があれば取り入れるようにしています。

このアプローチをたゆまず進めていけば、常に新しいトレンドを取り入れていけます。自立し、投資を繰り返して、最新の研究成果を取り込んでいくことが重要なのです。ですから、わが社は「量子技術で革新的な提案を目指す会社」というよりは、「価値を提供しながら量子技術にコミットし続ける会社」といえます。

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海保:超高速データベース探索なども、量子というよりも完全にアルゴリズムですよね。つまり、世の中の課題に対して「高速化」という価値を届けているということでしょうか。

船橋:そのとおりです。スピードこそ価値だと思っています。これまで1週間かけて計算していたものが数時間で終わる、数時間かけていたものが数秒で終わるという価値です。良い解が出ることは当たり前として、それをできるだけ速く提供する。将来、量子コンピュータはその部分に関してかなり重要な部分を担うことになるでしょう。また、話題に出していただいた弊社の超高速データベースは、兆単位のレコード数であっても1秒以下でソートや検索ができるという優れた性能を持っています。今はハードウェアのビット数が足りないため、一部にしか量子アルゴリズムを使えませんが、ここがハードウェアの進化によってさらに多くのことを量子で処理できるようになり、もっと大規模なものも高速に処理できるようになっていくはずです。

海保:たしかに、ある閾値を超えたら非常に大きな価値を生み出せる、ROIに貢献できそうですね。

馬場:処理の高速化とは別に、時間の問題もありますよね。配送計画が典型ですが、たとえばコンピュータで1週間かけて配送計画をつくっても、1週間後にはがらりと状況が変わっていることもあります。そうなると、結局、熟練者が名札を掛け替えて配送車とドライバーのパターンを作ったほうが速いとなる。

船橋:やはり、どんなシステムでも、現場のベテランからの評価はきわめて重要な意味を持ちます。私たちのシステムは9割の最適解を出し、残りの1割は人間がパラメータを変えて計算できる余地を残す設計をしています。それは、数理モデルに「最近、このドライバーには苦労をかけているから、今日は楽をさせてあげたい」といった人間的な配慮を入れられないからです。数式上に変数としては入れられたとしても、その値を誰が入力するのかという問題がありますから、非現実的なのです。そういった、人の意志を介在して最終的な意志決定を行うヒューマン・イン・ザ・ループを大切にしています。適度な“遊び”をもたせて、人間の判断を組み込めるようにする。これは1回1回の処理実行が超高速だからできることですが、非常に喜ばれています。

馬場:人材の配置にも同じことが言えます。たとえば、従業員の勤務スケジュールを調整する仕組みはたくさんありますが、運用が難しい理由の1つは、家庭の事情による早退といった個人的な事情による勤務時間の制約や相性などの人間関係に基づく配置の考慮といったデータ化されていない情報があるからです。

船橋:ベテランに任せて属人化していたような業務の、采配の部分をうまく学習させられればいいですよね。私たちの提供するシステムは、機械が出してきた答えを人間がどう変えたのかを学習させることも可能です。

松尾:最後に、今後の展望をお聞かせください。

船橋:量子コンピュータは、コンピューティングの未来そのものです。ですから、どんな業種、職業でも、どの段階でどれだけのことができるのかを見極めて取り入れることが重要だと思います。今は皆様、基本的には現状のシステムのIT化、DXを目指していると思いますが、私たちは量子技術という手段で、その目標達成を後押しします。今後もスピードを追求し、ユーザーオリエンテッドなヒューマン・イン・ザ・ループのシステムを広め、成長していきたいと考えています。

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 1 量子コンピュータ:0と1の両方の状態を同時に重ね合わせることができるという原理で動作するコンピュータのこと。従来のコンピュータ(量子コンピュータに対して「古典コンピュータ」と呼ばれる)が0と1のどちらかの状態しか取れないビットを基本単位としているのに対し、量子コンピュータは0と1の両方の状態を同時に取ることができる量子ビットを基本単位とする。

組合せ最適化問題を解くために量子の重ね合わせ(量子ビットが複数の状態を同時に持つ性質)やトンネル効果(量子力学的な現象の1つで、量子計算の重要な基礎となる効果)を利用する計算手法。

トランスナショナル カレッジ オブ レックス編(1991)『量子力学の冒険』

製品の性能や耐久性をコンピュータ上でテスト・評価するツールのこと。

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