本稿は、KPMGコンサルティングの「Automotive Intelligence」チームによるリレー連載です。
国内で進む排ガス規制の厳格化が、50cc以下の原付に与える影響について詳しく解説します。二輪車市場の現況や低出力モビリティの多様化、世界市場のトレンドを取り上げながら、次世代モビリティの方向性を探ります。
1.排出ガス規制の厳格化
日本国内の二輪車市場では、排気量50cc以下のガソリンエンジンを搭載するモデルの販売が終了する可能性があります。2025年11月に第一種原動機付自転車(第一種原付、排気量50cc以下)の継続生産車に対してEuro 5と同等の新たな排出ガス規制が適用される予定ですが、現行の50cc以下の原付モデルでは排出ガス浄化技術とコストを両立しながらこの規制をクリアすることが困難なためです。
こうした状況を踏まえて、警察庁は排気量125cc以下で最高出力が現行原付と同等レベルの「新基準原付」に限って原付免許で運転することを認める方針です。現状では原付免許で総排気量50cc以下または定格出力0.6kW以下の原付しか運転できませんが、2025年4月からは最高出力を4.0kW以下に制御した125cc以下の二輪車を運転できるようになる見通しです。
【日本における二輪車(新車)の排ガス規制概要】
2.二輪車市場の現状
日本国内の二輪車の新車市場は直近10年において年間40万台前後で推移しています。排気量50cc以下の第一種原付に限ると、2014年以前に20万台を超えていましたが、2023年には9.3万台となりました。二輪車市場における第一種原付のシェアは2014年までは50%を超えていましたが、2023年には23%に低下しました。
原付需要は幅広い年代にわたるとされていますが、高齢化や少子化といった人口構成の変化や電動アシスト自転車の普及などの影響を受けて販売台数もシェアも低下しています。海外市場において50ccクラスの二輪車が非主流であることも踏まえると、50cc以下の第一種原付はビジネスの観点で魅力の乏しい領域になっていると言わざるを得ません。
【日本における排気量別二輪車販売台数】
3.世界では主流でない50ccの二輪車
4.低出力モビリティの多様化
※文中の数値は、下記の公表資料を参考にしています。
- 警察庁「二輪車車両区分見直しに関する有識者検討会 報告書概要」
- 環境省「自動車排出ガス規制について」
- 国土交通省「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示等の一部改正」
- 日本自動車工業会(JAMA)
- 全国軽自動車協会連合会(全軽自協)
- 自転車産業振興協会「電動アシスト車生産動態」
執筆者
KPMGコンサルティング
マネジャー 中田 徹
第24回KPMGグローバル自動車業界調査
本調査では、グローバルの展望、パワートレインの未来、デジタル消費者、脆弱なサプライチェーン、新たなテクノロジー、という自動車業界の5つの領域に対してエグゼクティブの考える将来展望を分析しました。
また、独自に日本の消費者約6,000名を対象にした調査を行い、BEV(バッテリー電気自動車)や自動運転の商用化、消費行動に関するデジタル化について、グローバルの経営者の見解と比較しました。
英語版はこちらよりご確認いただけます。