本稿は、KPMGコンサルティングの「Automotive Intelligence」チームによるリレー連載です。
今回は、KPMGが毎年行っている調査レポートである「グローバル・オートモーティブ・エグゼクティブ・サーベイ2023」から、各国のエグゼクティブやOEM・部品サプライヤーのエグゼクティブの、自動運転サービス実現に関する期待値について、地域ごとに傾向を解説します。
自動運転サービス実現への期待
前回も述べたように、同調査での「いつ頃自動運転車による配車サービスやデリバリーが商業利用可能になると思いますか?」という質問に対して、自動車産業のエグゼクティブは中国に次いで日本・アメリカ市場に高い期待を示しました。中国と日本、アメリカ市場については、自動車産業のエグゼクティブの半数以上が2030年までに自動運転車による商業サービスが実現すると考えています。
【自動運転車による商業サービスの開始時期】
各国エグゼクティブの考え
自動運転車による商業サービス開始時期の質問について、「2030年までに導入が進む」と回答した中国のエグゼクティブの回答を見てみると、市場別に中国65%、アメリカ52%となり、中国とアメリカでの自動運転車サービスに期待を寄せていることがわかります。
【中国のエグゼクティブ:自動運転車による商業サービスの開始時期】
同様の質問に対し、日本のエグゼクティブは中国とアメリカ市場に期待を寄せていますが、「2030年までに導入が進む」との回答は、中国市場43%、アメリカ市場33%と半数を超えていません。一方、アメリカのエグゼクティブは、市場別に中国61%、日本66%、アメリカ65%と回答しています。日本のエグゼクティブは中国およびアメリカのエグゼクティブに比べて、自動運転車による商業サービスに、より慎重な見方をしていると言えます。
【日本のエグゼクティブ:自動運転車による商業サービスの開始時期】
【アメリカのエグゼクティブ:自動運転車による商業サービスの開始時期】
OEM・部品サプライヤーのエグゼクティブの考え
OEM、Tier1部品サプライヤーおよびTier2/3部品サプライヤーのエグゼクティブにおいても同様の比較を行ったところ、中国、日本およびアメリカ市場における自動運転車による商業サービスに期待しつつも、Tier1部品サプライヤーは「2030年までに導入が進む」との回答において、どの地域も半数を超えることはなく、OEMおよびTier2/3部品サプライヤーよりも自動運転車による商業サービスにより慎重な見方をしています。
【OEMのエグゼクティブ:自動運転車による商業サービスの開始時期】
【Tier1部品サプライヤーのエグゼクティブ:自動運転車による商業サービスの開始時期】
【Tier2/3部品サプライヤーのエグゼクティブ:自動運転車による商業サービスの開始時期】
情報通信技術会社のエグゼクティブの考え
情報通信技術会社のエグゼクティブの回答を見ると、同様の質問に対する回答結果は市場別に中国65%、日本60%、アメリカ57%そして西欧52%と、アメリカのエグゼクティブの回答に近い結果となりました。各国の自動車産業エグゼクティブは、中国やアメリカといった自動運転実証実験の進む地域と同様に、公共交通機関の存続問題が深刻になり、ライドシェアへの期待が高まる日本市場に期待を高めていることを、今回の調査結果は示していると言えます。
【情報通信技術会社のエグゼクティブ:自動運転車による商業サービスの開始時期】
第24回KPMGグローバル自動車業界調査では、30ヵ国1,041人の自動車業界および周辺業界のエグゼクティブに対して、「BEVへの移行に現実的な解を市場は求めている」として、グローバルの展望、パワートレイン、デジタル消費者、サプライチェーン、テクノロジーに関する調査を行いました。詳しくはページ下のリンクからレポートを参照ください。
また、英語版はこちらよりご確認いただけます。
※各種グラフの表記数値は、小数点以下を四捨五入しているためパーセンテージ合計は100%とならない場合があります。
※本稿では、「グローバル・オートモーティブ・エグゼクティブ・サーベイ2023」に掲載した以外のデータについても触れており、一部の記述や図表についてはレポートに未掲載のものがあることをお断りします。
執筆者
KPMGコンサルティング
マネジャー 小谷野 幸恵