本稿は、KPMGコンサルティングの「Automotive Intelligence」チームによるリレー連載です。
今回は、KPMGが毎年行っている調査レポートである「グローバル・オートモーティブ・エグゼクティブ・サーベイ2023」から、自動車のデジタル化による顧客満足度向上のカギを探り、今後の展望を解説します。
自動車購入時に重視する項目とは
Q:顧客が今後5年以内に車両購入をする際、下記の要素はどのくらい重要だと思いますか?(5段階評価中で4段階以上と評価した割合)
自動車購入のオンライン化
このシームレス&ストレスフリーな顧客体験を実現するために、自動車のデジタル化すなわちSDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル)が進んでいます。ディーラーはオンライン販売に重点を置き、自動車業界を対象にした最新のグローバル調査の結果からも、デジタル体験が重要であると考えるエグゼクティブの意思が結果として表れています。
Q:2030年までに新車販売の大半はオンラインで行われるようになると思いますか?
Q:あなたはオンラインで自動車を購入したいと思いますか。
デジタル時代の新しい顧客体験
KPMGが実施した「生活者に支持される顧客体験に関する調査2023-2024」によると、優れた顧客体験は、顧客一人ひとりのニーズや状況に応じたサービスや体験を提供する「パーソナライズ」、企業に求められる責任を全うし顧客に信頼される「誠実性」、顧客と感情的につながり親密な関係性を築く「親密性」、顧客の期待に応えさらにはそれを超えるサービスを提供する「期待の充足」、使いやすくストレスや労力を感じさせないサービスを提供する「利便性」、サービス利用で生じた問題や不満を解消し、顧客のマイナス感情をプラスに変える「問題解決能力」の6つの要素で構成されていると定義しています。この6つの要素であるSix Pillarsの包括的な向上によって顧客からの支持・ロイヤルティが高まり、それが企業・ブランドの持続的な成長につながることが確認されています。
この調査の自動車業界における結果は、全体平均を上回る「親密性」と「問題解決能力」の評価が得られました。特にメンテナンス・点検時における販売店や担当者の対応についてのコメントが多く見られ、自動車そのものだけでなく、購入後のアフターサービスを通じて顧客がブランドとのつながりを感じ、「問題解決能力」に対する評価と「親密性」の構築につながっているものと考えられます。
※上図の値については、Six Pillarsの各要素がどの程度ブランドに対する好感度や推奨度に影響しているのかを10点満点で評価しています。
今後、自動車業界が「シームレス&ストレスフリーな顧客体験」を提供していくためには、この「問題解決能力」と「親密性」を重視する必要があることが示されています。しかし、顧客はすでにスマートフォンというシームレス&ストレスフリーで、高い問題解決能力と親密性を兼ね備えたツールを持っています。今後、自動車がSDVへとして進化していくなかで、いずれスマートフォンとの比較も行われることになるでしょう。その時、自動車がスマートフォンに勝る存在になるのか。自動車産業がスマートフォンまでを手掛ける日が来るのかもしれません。
第24回KPMGグローバル自動車業界調査では、30ヵ国1,041人の自動車業界および周辺業界のエグゼクティブに対して、「BEVへの移行に現実的な解を市場は求めている」として、グローバルの展望、パワートレイン、デジタル消費者、サプライチェーン、テクノロジーに関する調査を行いました。詳しくはページ下のリンクからレポートを参照ください。
執筆者
KPMGコンサルティング
アソシエイトパートナー 轟木 光