本稿は、KPMGコンサルティングの「Automotive Intelligence 」チームによるリレー連載です。
今回は、KPMGが毎年行っている調査レポートである「グローバル・オートモーティブ・エグゼクティブ・サーベイ2023」から、自動運転サービス実現に関するエグゼクティブの期待値について地域ごとに傾向を解説します。
エグゼクティブの自動運転サービス早期実現の期待
すでに中国やアメリカでは、自動運転タクシーによる商業サービスが開始されています。同調査での「中国・日本・アメリカ・西欧・インドの市場の大都市圏内では、いつ頃自動運転車による配車サービスやデリバリーが商業利用可能になると思いますか?」という質問に対して、エグゼクティブは中国に次いで日本・アメリカ市場に高い期待値を示しました。
【自動運転車による配車サービスやデリバリーの大都市での導入予測】
また、2030年までに「自動運転車サービスの商業利用」が開始されると予測した割合は、市場別に、中国60%、日本57%、アメリカ56%、西欧46%、インド34%となっています。上位国の内訳のうち、「2025年までに実現する」と回答したのは、中国23%、日本と並んでアメリカが18%でした。これに対し、「2025~2030年までに実現する」と回答したのは、中国37%、日本39%、アメリカ38%となり、3国でほぼ同じ結果となりました。すでに商業サービスを開始している中国・アメリカと並んで、実証実験段階の日本への期待値が高いことが注目されます。
この結果が示すように、エグゼクティブは中国・日本・アメリカの順に期待を寄せていることがわかります。中国の中央および地方政府が複数の都市で自動運転車による商業的運行を後押ししており※¹、2025年までに深圳(シンセン)政府は1,000台近くのサービス提供を目指しています※2。中国が政府主導で自動運転車サービスの導入を進める一方で、日本・アメリカでの導入は、下記5つの背景に基づき検討されるものと考えられます。
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中国のエグゼクティブの考え
「2030年までに自動運転車サービスの商業利用が開始される」と考える中国のエグゼクティブの回答割合は、市場別に、中国65%、日本40%、アメリカ52%、西欧42%、インド29%となりました。上位の内訳は、「2025年まで」とする回答割合が、中国25%、アメリカと西欧が8%、「2025~2030年まで」が、中国40%、アメリカ44%となっています。自動運転車ビジネスが最も進んでいる中国のエグゼクティブは、中国およびアメリカにおける自動運転ビジネスの成長に注目していることが興味深いと言えるでしょう。
【中国のエグゼクティブ:自動運転車による配車サービスやデリバリーの大都市での導入予測】
第24回KPMGグローバル自動車業界調査では、30ヵ国1,041人の自動車業界および周辺業界のエグゼクティブに対して、「BEVへの移行に現実的な解を市場は求めている」として、グローバルの展望、パワートレイン、デジタル消費者、サプライチェーン、テクノロジーに関する調査を行いました。詳しくはページ下のリンクからレポートを参照ください。
また、英語版はこちらよりご確認いただけます。
※1:The State Council of the People’s Republic of China「China to trial market access of intelligent connected vehicles 」
※2:Shenzhen Government Online「Shenzhen puts driverless vehicles in the fast lane 」
※各種グラフの表記数値は、小数点以下を四捨五入しているためパーセンテージ合計は100%とならない場合があります。
※本稿では、「グローバル・オートモーティブ・エグゼクティブ・サーベイ2023」に掲載した以外のデータについても触れており、一部の記述や図表についてはレポートに未掲載のものがあることをお断りします。
執筆者
KPMGコンサルティング
マネジャー 小谷野 幸恵