本稿は、KPMGコンサルティングの「Automotive Intelligence」チームによるリレー連載です。
今回は、KPMGが毎年行っている調査レポートである「グローバル・オートモーティブ・エグゼクティブ・サーベイ2023」から、主要4ヵ国におけるADAS(先進運転支援システム)、パワートレイン技術、半導体や量子コンピューティング等といった新たな開発分野の投資傾向を解説します。
投資配分の優先順位
先進運転支援システム(以下、ADAS)の標準装備化、急速なバッテリー電気自動車(以下、BEV)の拡大に伴うパワートレインや電装部品といった新しい分野の研究開発に、エグゼクティブは多額の投資を求められています。「既存の研究開発投資を倍増させる承認が得られた場合、増えた資金を以下の技術にどのように配分しますか? 」という質問に対して、エグゼクティブは優先順位はありつつも、重要項目のなかでは均等に投資を分散させる意向を示しています。
【研究開発投資の配分:技術の優先順位】
幅広い技術領域にわたる課題が重要視されているものの、アメリカ、日本、ドイツ、中国といった主要国の投資先上位4位を並べてみると優先順位に差異がみられます。
【主要国の投資選好】
アメリカは、ドイツや中国と比較すると、半導体や量子コンピューティングといった先進コンピューティングに関心があるようです。アメリカの調査対象のプロファイルは情報通信技術企業が35%、テクノロジースタートアップ企業が24%であり、両者を合わせると過半数を超えることに関係がある可能性が高いと予測されます。アメリカでは、車を移動体という以上に先進コンピューティングシステムとして捉えていると考えられます。
日本はADASが重要視されており、次点の先進コンピューティングよりも5%高い回答割合で25%となっています。ドイツと中国はアメリカに比較すると日本と同様にADASに関心が高いものの、パワートレイン技術への関心が1位となっています。EUにおける政策によるBEVへの誘導や、中国でのBEVを優先する政府方針の影響により、EUと中国ともにBEVおよびPHEV(プラグインハイブリットカー)といった電動化への投資に対する優先順位が高いと考えられます。
第24回KPMGグローバル自動車業界調査では、30ヵ国1,041人の自動車業界および周辺業界のエグゼクティブに対して、「BEVへの移行に現実的な解を市場は求めている」として、グローバルの展望、パワートレイン、デジタル消費者、サプライチェーン、テクノロジーに関する調査を行いました。詳しくはページ下のリンクからレポートを参照ください。
また、英語版はこちらよりご確認いただけます。
※本稿では、「グローバル・オートモーティブ・エグゼクティブ・サーベイ2023」に掲載した以外のデータについても触れており、一部の記述や図表についてはレポートに未掲載のものがあることをお断りします。
執筆者
KPMGコンサルティング
マネジャー 小谷野 幸恵