本稿は、KPMGコンサルティングの「Automotive Intelligence」チームによるリレー連載です。
今回は、KPMGが毎年行っている調査レポートである「グローバル・オートモーティブ・エグゼクティブ・サーベイ2023」から、BEV(バッテリー電気自動車)を取り上げ、市場におけるBEVの浸透率と今後の展望を探ります。
BEVへの理解
Q:2030年までに、各市場において新車販売台数の何パーセントがバッテリー駆動(ハイブリッドを除く)になると考えますか?(平均値)
地域ごとのエグゼクティブの回答を分析すると、2030年のBEVの浸透率について、異なる意見が見えてきます。
最もBEVが浸透している中国のエグゼクティブは、中国におけるBEVの割合を2023年42%と回答している一方で、日本を含めた他の地域では20%程度と考えています。
日本、米国および欧州のエグゼクティブは、日本、米国および欧州でのBEVの割合を30%程度と回答し、中国のエグゼクティブよりもさらに高いBEVの浸透を考えています。最もBEVが普及した地域である中国のエグゼクティブには、日本、米国および欧州のエグゼクティブとは異なるBEVビジネスの本質が見えている可能性があります。
【エグゼクティブによるBEVの市場シェア予測(地域エグゼクティブ)】
消費者はBEVを選びたいのか
日本の消費者に対して、「今後5年以内に車を購入するとしたらどのパワーユニットを選択するか?」と尋ねたところ、2023年の第1位はエンジン車で64%、第2位はHEV(ハイブリット車)で36%という結果になりました。
エンジン車を選択した比率は2021年、2022年より増え、2022年に比べて、8%増加しました。一方で、PHEV(プラグインハイブリッド車)、BEVを選択した比率は2021年以降ほとんど変わらず、2023年も13%でした。
Q:世界的に脱炭素化の流れが加速しています。その現状において、今後5年以内に車を購入するとしたら、どの車を選びますか?(複数選択)
エグゼクティブが予想する2030年のBEV市場シェアと、日本の消費者が今後5年以内に求めるパワーユニットには大きなギャップが見られます。政治主導で進んできたBEV拡大方策に対して、消費者のBEV選好はさほど高まっていない現状が考えられます。企業は、今後の着実なBEV市場拡大に向けた戦略というものを改めて見直すタイミングに差し掛かっているのではないでしょうか。
執筆者
KPMGコンサルティング
アソシエイトパートナー 轟木 光
第24回KPMGグローバル自動車業界調査
本調査では、グローバルの展望、パワートレインの未来、デジタル消費者、脆弱なサプライチェーン、新たなテクノロジー、という自動車業界の5つの領域に対してエグゼクティブの考える将来展望を分析しました。
また、独自に日本の消費者約6,000名を対象にした調査を行い、BEV(バッテリー電気自動車)や自動運転の商用化、消費行動に関するデジタル化について、グローバルの経営者の見解と比較しました。