国際会計基準審議会、「2021年6月30日を超えるCOVID-19関連レント・コンセッション(IFRS第16号の改訂)」を公表
ポイント解説速報 - 国際会計基準審議会(以下「IASB審議会」という。)は、2021年3月31日、「2021年6月30日を超えるCOVID-19関連レント・コンセッション(IFRS第16号の改訂)」(以下「本改訂」という。)を公表しました。
国際会計基準審議会は、2021年3月31日、「2021年6月30日を超えるCOVID-19関連レント・コンセッション(IFRS第16号の改訂)」を公表しました。
ハイライト
本改訂により、2020年5月28日に公表された「COVID-19関連レント・コンセッション」における、実務上の便法の適用対象期間が1年間延長されます。
本改訂の背景
IASB審議会は2020年5月に、IFRS第16号「リース」を改訂する「COVID-19関連レント・コンセッション」を公表しました。同改訂(以下「2020年改訂」という。)は2020年6月1日以降開始する事業年度から適用が開始されました(早期適用も認められていました)。
2020年改訂では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染拡大の直接的な結果としてレント・コンセッション(賃料の免除・支払い猶予等)を受けたリースの借手に対して、簡便的な会計処理を可能とする実務上の便法が設けられました。実務上の便法を選択した借手は、一定の要件を満たすレント・コンセッションにつき、検討を行わずとも会計基準上の「リースの条件変更」に該当しないものとみなして会計処理することが認められました。
しかしながら、2020年改訂では、「従来の支払期日が2021年6月30日までに到来するリース料の減額」であることが適用要件の1つとされていました。そこで、IASB審議会は、新型コロナウイルス感染症による経済的な混乱が予想以上に長期化しており、従来の支払期日が2021年6月30日を超えるレント・コンセッションが既に存在するという現状を踏まえ、実務上の便法の適用対象期間を延長することとしました。
本改訂の主な内容
本改訂では、実務上の便法の適用対象期間に関する要件を「従来の支払期日が2022年6月30日までに到来するリース料の減額」に拡張しています。適用要件の変更であるため、2020年改訂で実務上の便法を適用することを既に選択している借手は、本改訂により適用対象期間に含められることとなったレント・コンセッションについても実務上の便法を適用しなければならないこととされています。2020年改訂で実務上の便法の適用対象外と判断され、会計基準上の「リースの条件変更」の会計処理をしていたレント・コンセッションが本改訂により適用対象となる場合、下記の通り、借手は「リースの条件変更」の会計処理を遡及的に修正することになります。
逆に、2020年改訂で実務上の便法を適用しないことを既に選択した借手は、本改訂が公表されたことを理由に実務上の便法を新たに適用することはできません。
発効日及び経過措置
本改訂は、2021年4月1日以降開始する事業年度から遡及的に適用されます。本改訂が最終化された2021年3月31日時点でまだ発行が承認されていない財務諸表を含め、早期適用が認められています。
本改訂の遡及適用によって生じた累積的影響は、本改訂を初めて適用した事業年度の期首利益剰余金(もしくはその他適切な資本の構成要素)に認識することが要求されています。なお、会計方針の変更の場合に要求される、各期間の財務諸表の表示項目や基本的及び希薄化後1株当たり利益に与える影響額の開示は不要である旨が明記されました。
公開草案からの見直しの概要
本改訂は概ね公開草案の提案を踏襲するものとなっていますが、公開草案に加え、借手は類似の特性を有し類似の状況にある契約に対して、既に実務上の便法の適用対象であったか、本改訂により適用対象になったかに関わらず、本便法を適用するか否かの選択を一貫して行う必要があることが明記されました。
参考情報へのリンク(外部サイト)
執筆者
有限責任 あずさ監査法人
会計プラクティス部
アシスタントマネジャー 鶴谷 香穂