2020年3月期決算の留意事項(会計)

2020年3月期決算においては、改正「企業結合に関する会計基準」等及び改正「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い」等が適用されます。

2020年3月期決算においては、改正「企業結合に関する会計基準」等及び改正「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い」等が適用されます。

ハイライト

2020年3月期決算においては、改正「企業結合に関する会計基準」等及び改正「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い」等が適用されます。また、執筆時点(2020年1月14日)で公開草案が公表されている会計基準等のいくつかは2020年3月期決算からの早期適用が予定されています。
執筆時点で最終化されていない会計基準等については、公開草案の概要を紹介していますが、最終基準等で変更される可能性があるため、ご留意ください。
なお、本文中の意見に関する部分については、筆者の私見であることをあらかじめお断りいたします。

Point1 2020年3月期決算において原則適用となる会計基準等
2020年3月期決算において、原則適用となる会計基準等は次のとおりである。

  1. 改正「企業結合に関する会計基準」等
  2. 2018年改正・2019年改正「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い」


Point2 2020年3月期決算において早期適用可能な会計基準等

2020年3月期決算において、早期適用が可能な、又は可能となる予定の会計基準等は次のとおりである。

  1. 「収益認識に関する会計基準」及び「収益認識に関する会計基準の適用指針」
  2. 「時価の算定に関する会計基準」等
  3. 公開草案 「会計上の見積りの開示に関する会計基準(案)」
  4. 公開草案 「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準(案)」

I.改正「企業結合に関する会計基準」等の概要

1.改正の概要

2019年1月16日に、ASBJより、改正企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」(以下「改正企業結合会計基準」という)等が公表されました。
改正企業結合会計基準では、企業結合契約締結後の将来の特定の事象又は取引の結果に依存して、対価の一部の返還を受ける場合も条件付取得対価に含まれることが明確化されています。また、将来の業績に依存する条件付取得対価であって、対価の一部の返還を受ける場合の会計処理について、追加的に交付又は引渡しを行う場合の条件付取得対価と同様に会計処理することを明確化しています。

2.適用時期等

2019年4月1日以後開始する事業年度の期首以後実施される組織再編から適用されます。
なお、改正企業結合会計基準等の適用前に行われた企業結合及び事業分離等の会計処理の従前の取扱いについては、改正企業結合会計基準等の適用後においても継続することとし、改正企業結合会計基準等の適用日における会計処理の見直し及び遡及的な処理は行わないこととされています。

II.2018年改正実務対応報告第18号の概要

1.改正の概要

2018年9月14日に、ASBJより、改正実務対応報告第18号「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い」(以下「2018年改正実務対応報告第18号」という)等が公表されました。
2018年改正実務対応報告第18号は、在外子会社等において、IFRS第9号「金融商品」を適用し、資本性金融商品の公正価値の事後的な変動をその他の包括利益に表示する選択をしている場合に、連結決算手続上、当該資本性金融商品の売却損益相当額及び減損損失相当額を当期の損益として組替調整することを当面の取扱いに定める修正項目として追加しています。

2.適用時期

区分 内容
原則
  • 2019年4月1日以後開始する連結会計年度の期首から適用。
容認
  • 公表日(2018年9月14日)以後最初に終了する連結会計年度において早期適用可。
  • 2020年4月1日以後開始する連結会計年度の期首又は在外子会社等が初めてIFRS第9号「金融商品」を適用する連結会計年度の翌連結会計年度の期首から適用可。

III.2019年改正実務対応報告第18号の概要

1.改正の概要

2019年6月28日に、ASBJより、改正実務対応報告第18号「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い」(以下「2019年改正実務対応報告第18号」という)が公表されました。
2019年改正実務対応報告第18号では、国際財務報告基準第16号「リース」及び米国会計基準会計基準更新書第2016 - 02号「リース(Topic 842)」を対象に修正項目として追加する項目の有無について検討を行い、その結果、新たな修正項目の追加は行わないこととされています。なお、2019年改正実務対応報告第18号は公表日(2019年6月28日)以後、既に適用されています。

IV.収益認識に関する会計基準等の概要

2018年3月30日に、ASBJより、企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針」(以下合わせて「収益認識基準等」という)等が公表されています。適用時期は原則として2021年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首からとされていますが、別途早期適用の定めが設けられていますので、2020年3月期においても早期適用が可能となっています。

収益認識基準等では、IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」と同様に、基本となる原則に従って収益を認識するために5つのステップを適用し、約束した財又はサービスの顧客への移転を当該財又はサービスと交換に企業が権利を得ると見込む対価の額で描写するように、収益の認識を行うこととされています。

1.基本的な収益認識の流れ

(1)契約の識別(ステップ1)
収益認識基準等は顧客との個々の契約を対象として適用されるため、ステップ1では契約の識別を行います。そのほか、契約の結合、契約変更に係る会計処理を定めています。

(2)履行義務の識別(ステップ2)
収益の認識は原則として各履行義務単位で行うため、ステップ2では履行義務の識別を行います。ここで履行義務とは、顧客との契約において、別個の財又はサービス(又は、一連の別個の財又はサービス)を顧客に移転する約束であるとされています。企業は契約における取引開始日に、顧客との契約において約束した財又はサービスを評価し、別個の財又はサービス(又は、一連の別個の財又はサービス)のいずれかを顧客に移転する約束のそれぞれについて履行義務として識別します。

(3)取引価格の算定(ステップ3)
ステップ3では、取引価格を算定します。取引価格とは、財又はサービスの顧客への移転と交換に企業が権利を得ると見込む対価の額であるとされています。
取引価格の算定にあたり、ステップ3では変動対価、重要な金融要素、現金以外の対価、顧客に支払われる対価に係る会計処理を定めています。

(4)履行義務への取引価格の配分(ステップ4)
ステップ4では、取引価格の各履行義務への配分を検討します。契約が複数の履行義務から構成されている場合、履行義務の基礎となる財又はサービスの独立販売価格の比率に基づき、契約において識別された履行義務のそれぞれに取引価格を配分します。

(5)履行義務の充足による収益の認識(ステップ5)
ステップ5では、収益の認識時点と認識方法を検討します。収益認識基準等では、約束した財又はサービスの顧客への移転により、各履行義務を充足したときに、又は充足するにつれて収益を認識するとされているため、履行義務の充足が「一時点」又は、「一定の期間にわたる」のいずれに該当するかについて検討します。
履行義務が一時点で充足される場合、収益は履行義務が充足された時点で認識されます。一方、履行義務が一定の期間にわたり充足される場合、収益は一定の期間にわたって認識されます。
一定の期間にわたり充足される履行義務については、履行義務の充足に係る進捗度を見積り、当該進捗度に基づき収益を一定の期間にわたり認識します。

2.代替的な取扱い

以下の項目については従来の実務等を考慮した代替的な取扱いが定められています。

  • 契約変更における重要性が乏しい場合の取扱い
  • 履行義務の識別について顧客との契約の観点で重要性が乏しい場合の取扱い
  • 出荷及び配送活動に関する会計処理の選択
  • 期間がごく短い工事契約及び受注制作のソフトウェア
  • 船舶による運送サービス
  • 出荷基準等の取扱い
  • 契約の初期段階における原価回収基準の取扱い
  • 重要性が乏しい財又はサービスに対する残余アプローチの使用
  • 契約に基づく収益認識の単位及び取引価格の配分
  • 工事契約及び受注制作のソフトウェアの収益認識の単位
  • 有償支給取引

3.表示及び注記事項

収益認識基準等では当面(収益認識基準等を早期適用した場合を含む)は、必要最低限の定めを除き基本的に注記事項を定めないこととし、収益認識基準等が強制適用されるときまでに、表示及び注記事項の定めを検討することとなっています。主な表示及び注記事項に関する必要最低限の定めは以下の通りです。

  • 契約資産、契約負債又は債権は、適切な科目をもって貸借対照表に表示。ただし早期適用時の経過措置として、契約資産と債権を貸借対照表において区分表示せず、かつ、それぞれの残高を注記しないことが可能
  • 主要な事業における主な履行義務の内容及び当該履行義務を充足する通常の時点(収益を認識する通常の時点)を注記

なお、表示及び注記事項の取扱いに関して、2019年10月30日に、企業会計基準公開草案第66号(企業会計基準第29号の改正案)「収益認識に関する会計基準(案)」等が公表されています。当該公開草案は、2021年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用すること等が提案されていることから、2020年3月期には早期適用を含め適用されませんが、今後の動向に留意する必要があると思われます。

V.「時価の算定に関する会計基準」等の概要

2019年7月4日に、ASBJより、企業会計基準第30号「時価の算定に関する会計基準」(以下「時価算定会計基準」という)等が公表されています。時価算定会計基準では、IFRS第13号「公正価値測定」の定めを基本的にすべて取り入れていますが、これまで我が国で行われてきた実務等に配慮し、財務諸表間の比較可能性を大きく損なわせない範囲で個別項目に対するその他の取扱いを定めることを基本的な方針としています。

1.範囲

時価算定会計基準は、企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」(以下「金融商品会計基準」という)における金融商品、及び企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」(以下「棚卸資産会計基準」という)におけるトレーディング目的で保有する棚卸資産の時価に適用するとされています。

2.時価の定義

「時価」とは、算定日において市場参加者間で秩序ある取引が行われると想定した場合の、当該取引における資産の売却によって受け取る価格又は負債の移転のために支払う価格をいうと定義されています。
時価の定義の変更に伴い、改正前の金融商品会計基準において定められていた、その他有価証券の期末の貸借対照表価額に期末前1ヵ月の市場価格の平均に基づいて算定された価額を用いることができる定めについては、その平均価額が改正された時価の定義を満たさないことから削除されています。ただし、その他有価証券の減損を行うか否かの判断については、「期末前1ヵ月の市場価格の平均に基づいて算定された価額」を用いることができる取扱いを踏襲しています。なお、この場合であっても、評価差額の算定には期末日の時価を用いることとなります。

3.時価の算定方法

時価の算定にあたっては、状況に応じて、十分なデータが利用できる評価技法を用いるとされています。時価の算定に用いるインプットは、次の順に優先的に使用します。

インプット 内容
レベル1のインプット 時価の算定日において、企業が入手できる活発な市場における同一の資産又は負債に関する相場価格であり調整されていないもの。
レベル2のインプット 資産又は負債について直接又は間接的に観察可能なインプットのうち、レベル1のインプット以外のインプット。
レベル3のインプット 資産又は負債について観察できないインプット。当該インプットは、関連性のある観察可能なインプットが入手できない場合に用いる。


時価は、その算定に重要な影響を与えるインプットのレベルに応じて、レベル1の時価、レベル2の時価又はレベル3の時価に分類されます。

4.第三者から入手した相場価格の利用

取引相手の金融機関、ブローカー、情報ベンダー等、第三者から入手した相場価格が時価算定会計基準に従って算定されたものであると判断する場合には、当該価格を時価の算定に用いることができるとされています。
上記の定めにかかわらず、一定の条件に該当する企業集団等以外の企業集団等においては、第三者が客観的に信頼性のある者で企業集団等から独立した者であり、公表されているインプットの契約時からの推移と入手した相場価格との間に明らかな不整合はないと認められる場合で、かつ、レベル2の時価に属すると判断される場合には、次のデリバティブ取引については、当該第三者から入手した相場価格を時価とみなすことができるとされています。

  • インプットである金利がその全期間にわたって一般に公表されており観察可能である同一通貨の固定金利と変動金利を交換する金利スワップ(いわゆるプレイン・バニラ・スワップ)
  • インプットである所定の通貨の先物為替相場がその全期間にわたって一般に公表されており観察可能である為替予約又は通貨スワップ

5.市場価格のない株式等の取扱い

市場価格のない株式等に関しては、たとえ何らかの方式により価額の算定が可能としても、それを時価とはしないとする従来の考え方を踏襲し、引き続き取得原価をもって貸借対照表価額とするとされています。また、市場価格のない株式等については、時価に関する注記が不要とされています。
一方、これまで時価を把握することが極めて困難であるとして、取得原価又は償却原価法に基づいて算定された価額をもって貸借対照表価額としていたもののうち、市場価格のない株式等に含まれないものについては、時価をもって貸借対照表価額とすることになります。

6.開示

時価算定会計基準と同時に公表された改正企業会計基準適用指針第19号「金融商品の時価等の開示に関する適用指針」(以下「金融商品時価開示適用指針」という)では、金融商品の時価のレベルごとの内訳等に関する事項として次の開示項目の注記が求められています。

区分 開示項目
貸借対照表において又は注記のみで時価評価する金融商品
  • 時価のレベルごとの残高
貸借対照表において又は注記のみで時価評価するレベル2の時価又はレベル3の時価の金融商品
  • 時価の算定に用いた評価技法及びインプットの説明
  • 時価の算定に用いる評価技法又はその適用の変更の旨及びその理由
貸借対照表において時価評価するレベル3の時価の金融商品
  • 時価の算定に用いた重要な観察できないインプットに関する定量的情報
  • 期首残高から期末残高への調整表(当期の損益に計上した未実現の評価損益を含む)
  • 企業の評価プロセスの説明
  • 重要な観察できないインプットを変化させた場合の時価に対する影響に関する説明


なお、時価算定会計基準等に関連して、2019年12月12日に「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令(案)」が公表され、パブリック・コメント募集が行われています(コメント期限2020年1月14日)。

7.適用時期及び経過措置

時価算定会計基準等は、2021年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用するとされています。ただし、2020年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から早期適用することができます。また、2020年3月31日以後終了する連結会計年度及び事業年度における年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から早期適用することができます。
時価算定会計基準等では、次の経過措置を定めています。

会計基準等 内容
時価算定
会計基準等
  1. 適用初年度においては、新たな会計方針を将来にわたって適用する。この場合、その変更の内容について注記する。
    1の定めにかかわらず、時価を算定するために用いた方法を変更することとなった場合で、当該変更による影響額を分離することができるときは、会計方針の変更に該当するものとし、当該会計方針の変更を過去の期間のすべてに遡及適用することができる。
  2. また、適用初年度の期首より前に新たな会計方針を遡及適用した場合の累積的影響額を、適用初年度の期首の利益剰余金及びその他の包括利益累計額又は評価・換算差額等に加減し、当該期首残高から新たな会計方針を適用することもできる。これらの場合、企業会計基準第24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」第10項に定める事項を注記する。
  3. 投資信託の時価の算定に関しては、改正前の取扱いを踏襲することができる(注)。この場合、時価のレベルごとの内訳等に関する事項の注記は要しない。
  4. 貸借対照表に持分相当額を純額で計上する組合等への出資の時価の注記については、投資信託の取扱いの改正までの間は金融商品時価開示適用指針第4項(1)の注記は要しない。
金融商品
時価開示
適用指針
金融商品の時価のレベルごとの内訳等に関する開示項目について、適用初年度の比較情報は不要とする。また、期首残高から期末残高への調整表について、金融商品会計基準を年度末の財務諸表から適用する場合には、適用初年度は省略することができる。
棚卸資産
会計基準
トレーディング目的で保有する棚卸資産の時価の定義の見直しにより生じる会計方針の変更については、時価算定会計基準の適用初年度における原則的な取扱いと同様に将来にわたって適用する。この場合、その変更の内容について注記する。
金融商品
会計基準
時価の定義の見直しに伴う金融商品会計基準の2019年改正により生じる会計方針の変更は、時価算定会計基準の適用初年度における原則的な取扱いと同様に将来にわたって適用する。この場合、その変更の内容について注記する。


(注)投資信託の時価の算定に関する検討には、関係者との協議等に一定の期間が必要と考えられるため、時価算定会計基準の公表後概ね1年をかけて検討を行うこととされています。

VI.公開草案 「会計上の見積りの開示に関する会計基準(案)」の概要

1.概要

2019年10月30日に、ASBJより、企業会計基準公開草案第68号「会計上の見積りの開示に関する会計基準(案)」(以下「見積り開示会計基準案」という)が公表されています。

(1)範囲
見積り開示会計基準案は、会計上の見積りの開示に適用することが提案されています。

(2)開示目的
見積り開示会計基準案の開発にあたっての基本的な方針として、個々の注記を拡充するのではなく、原則(開示目的)を示したうえで、具体的な開示内容は企業が開示目的に照らして判断することとされています。
見積り開示会計基準案においては、当年度の財務諸表に計上した金額が会計上の見積りによるもののうち、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性が高い項目における会計上の見積りの内容について、財務諸表利用者の理解に資する情報を開示することを目的とするとされています。

(3)開示する項目の識別
会計上の見積りの開示を行うにあたり、識別する項目は、通常、当年度の財務諸表に計上した資産及び負債とすることが提案されています。開示する項目の識別にあたっては、翌年度の財務諸表に及ぼす影響の金額的な大きさとその発生可能性を総合的に勘案して企業が判断することが考えられるとされています。

(4)注記事項
識別した項目について、会計上の見積りについて独立の注記項目とすることが提案されています。
また、識別した項目のそれぞれについて、会計上の見積りの内容を表す項目名とともに、次の事項を注記することが提案されています。

  • 当年度の財務諸表に計上した金額
  • 会計上の見積りの内容について財務諸表利用者の理解に資するその他の情報

2.適用時期及び経過措置

2021年3月31日以後終了する連結会計年度及び事業年度の年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から適用することが提案されています。ただし、公表日以後終了する連結会計年度及び事業年度の年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から適用することができるとされています。したがって、仮に公開草案の提案内容で2020年3月31日までに最終基準化された場合には、本3月期決算において早期適用が可能です。
また、見積り開示会計基準の適用初年度において、表示方法の変更として取り扱うものの、適用初年度の連結財務諸表及び個別財務諸表に併せて表示される前連結会計年度における連結財務諸表に関する注記及び前事業年度における個別財務諸表に関する注記(比較情報)に記載しないことができると提案されています。

VII.公開草案 「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準(案)」の概要

1.概要

2019年10月30日に、ASBJより、企業会計基準公開草案第69号(企業会計基準第24号の改正案)「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準(案)」(以下「改正過年度遡及会計基準案」という)が公表されています。
改正過年度遡及会計基準案では、関連する会計基準等の定めが明らかでない場合に採用した会計処理の原則及び手続に係る注記情報の充実を図ることが提案されています。ここで「関連する会計基準等の定めが明らかでない場合」とは、特定の会計事象等に対して適用し得る具体的な会計基準等の定めが存在しないため、会計処理の原則及び手続を策定して適用する場合とされています。
重要な会計方針に関する注記の開示目的は、財務諸表を作成するための基礎となる事項を財務諸表利用者が理解するために、採用した会計処理の原則及び手続の概要を示すことにあるとし、この開示目的は、関連する会計基準等の定めが明らかでない場合も同じであるとされています。

2.適用時期及び経過措置

2021年3月31日以後終了する事業年度の年度末に係る財務諸表から適用することが提案されています。ただし、公表日以後終了する事業年度の年度末に係る財務諸表から適用することができるとされています。したがって、仮に公開草案の提案内容で2020年3月31日までに最終基準化された場合には、本3月期決算において早期適用が可能です。
改正過年度遡及会計基準を適用したことにより関連する会計基準等の定めが明らかでない場合に採用した会計処理の原則及び手続を新たに開示するときには、追加情報としてその旨を注記することが提案されています。

執筆者

有限責任 あずさ監査法人
会計プラクティス部
シニアマネジャー 三宮 朋広

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