企業は、調達データをどうすれば意思決定へつなげていくことができるでしょうか。多くの企業で調達システムの導入やダッシュボードの整備が進む一方、データの活用が「見える化」にとどまり、調達戦略や改善施策の意思決定に十分生かされていないケースも少なくありません。データドリブン調達を実現するには、目的から逆算したデータ基盤の整備に加え、分析から実行・改善までのプロセスと、それを支える体制を一体で設計することが重要です。
本稿では、データを「見る」から「使う」に変えるための、「データ」「プロセス」「体制」の設計ポイントを解説します。
1.データドリブン調達を実現する「データ」「プロセス」「体制」
多くの企業が調達システム導入の目的として「データドリブン調達」を掲げています。しかし実際には、ダッシュボードやレポートが整備されても「見える化」にとどまり、意思決定にまで活用しきれていないケースが少なくありません。こうした背景には、システムだけが整備され、データを意思決定に組み込む仕組みが設計されていないという課題があります。
調達システムの活用で真にデータドリブン調達を実現するためのポイントは、「データ」「プロセス」「体制」の3つです。この3つを一体で設計してはじめて、データは「見る」ものから「使う」ものへと変わります。
【「データ×プロセス×体制」の三位一体による意思決定への活用】
(1)データ
まず「データ」については、目的から逆算したデータ基盤の設計と、移行時のデータクレンジングの徹底が重要です。システム導入時には、ほかの要件定義タスクに追われ、KPIやレポートの設計が後回しになりがちです。しかし、導入目的に立ち返ると、どのようなデータを分析し、そこからどのような示唆を得たいのかを事前に設計したうえで、システム導入を進めることが大切です。
また、データ移行では、時間に追われて拙速に進めてしまうケースも多くありますが、社名の表記ゆれのような名寄せや、使われていないデータの削除まで丁寧に行うことが、分析の土台になります。
(2)プロセス
次に「プロセス」については、データ蓄積・可視化、分析、意思決定、実行、モニタリング・改善というサイクルを確実に回せる設計が重要です。たとえば、特定地域の情勢変化によって原材料の供給が滞るようなケースでは、分析結果を経営層まで迅速に引き上げるプロセスがあるかどうかが、対応スピードを左右します。
案件によっては、調達部門だけでは解決できず、生産部門や物流部門との調整が必要になることもあります。そのため、トピックごとにどこまでエスカレーションするかをあらかじめ定め、必要に応じて経営層を巻き込んでいくことが、意思決定をスムーズにするポイントです。
(3)体制
「体制」については、調達部門だけでは完結しないテーマも多いため、関係部門をしっかり巻き込む組織設計が重要です。たとえばコスト削減の取組みでは、カテゴリーマネジャーが各カテゴリーの施策を推進するだけでなく、各事業部門にも責任者を置き、カテゴリー軸(縦軸)と部門軸(横軸)の両方で見ていく体制を構築することがポイントになります。
2.データドリブン調達の達成で見えてくる、さらなる課題
まとめになりますが、データ、プロセス、体制の仕組みを整備してはじめて、データドリブン調達は実現できます。そして、データドリブン調達ができてくると、調達として対処しなければいけない“さらなる”課題が見えてきます。
【KPMGコンサルティングが掲げる調達価値創出のためのフレームワーク】
こうして明らかになった課題に対し、KPMGコンサルティングでは、調達ミッション・戦略の策定から業務・システムの構築まで、ワンストップで支援しています。また調達の各領域における強み・弱みについて、簡易成熟度診断を実施することも可能です。
※本稿は、2026年7月24日に開催された「Coupa Inspire World Tour Tokyo 2026」におけるKPMGコンサルティングのミニセッションの内容を基に編集したものです。
執筆者
KPMGコンサルティング
シニアマネジャー 高橋 優太