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      目次

      はじめに

      早期事業再生法については、2026年3月に早期事業再生検討ワーキンググループの取りまとめが公表された後、同年6月には、パブリックコメントを経て、制度の詳細を定める施行規則及び資産評定基準が公布されるとともに、法令の解釈・運用を示すQ&Aが公表された。
      これにより、対象となる債権者・債権の範囲や手続の進め方、指定確認調査機関による確認・調査等、制度の具体的な運用の枠組みが明らかになっている。同法は2026年12月11日の施行が予定されており、制度の具体化を踏まえ、今後は実際の利用を見据えた実務対応を検討する段階に移りつつある。
      筆者は、同ワーキンググループの委員として議論に参画しているが、本稿では、経済産業省から公表された施行規則、告示、Q&A等の最新の資料及び早期事業再生法の特徴を踏まえ、私見も交えつつ、「早期事業再生法の利用が期待される局面」について考察する。

      なお、前回掲載の「早期事業再生法の概要と実務への影響」も参照されたい。


      期待される利用局面

      早期事業再生法の制度上・実務上の特徴を踏まえると、早期事業再生法は、従来の準則型私的整理では全員同意による合意形成が困難である一方、法的整理による事業価値の毀損は回避したい事案において、利用が検討される手続である。もっとも、制度施行当初は、実務運用や裁判所認可の判断枠組みが蓄積されるまで、全員同意を得られる見込みが高い事案では従来の準則型私的整理が選択され、早期事業再生法は、多数決による権利変更の必要性が高い事案を中心に利用されていくことも想定される。
      具体的には、主に以下のような事案において、早期事業再生法の利用が検討され得ると考えられる。

      1. 外国金融機関・海外ファンド等を含み、全員同意の取得が難しい事案

      特に、国内主要金融機関の支援方針はおおむね一致している一方で、一部債権者の同意取得に時間を要し、事業価値の毀損が進行するおそれがある場合には、多数決による権利変更を可能とする早期事業再生法の活用意義がある。

      2. 対象債権者が多数または多様で、全員同意による合意形成に時間を要する事案

      例えば、多数の金融機関に加え、リース会社や信用保証協会等が関係するなど、対象債権者間の調整が複雑となる場合には、従来の準則型私的整理では全員同意を前提とするため一時停止や再生計画の成立に時間を要することがある。このような場合には、指定確認調査機関の関与のもと手続を進め、多数決による権利変更を可能とする早期事業再生法の利用が検討され得る。

      3. 多額・多数のファイナンスリース債権の取扱いを整理する必要がある事案

      早期事業再生法では、一定のファイナンスリース(ノンキャンセラブルかつフルペイアウトのもの)が対象債権となる。そのため、リース物件の事業上の必要性に加え、保全部分の評価や弁済方法、非保全部分の少額債権該当性や弁済方法等について整理が必要となる。多額又は多数のファイナンスリース債権が存在する事案では、これらを対象債権として手続内で一体的に整理できる点に、早期事業再生法の活用意義があると考えられる。

      4. 速やかな一時停止が必要だが、対象債権者全員の同意取得が困難な事案

      早期事業再生法では、対象債権者全員の同意を得る前に、法第3条第1項の確認後、指定確認調査機関が全ての対象債権者に対して一時停止の要請を行うこととされており、当該要請を行うに当たって対象債権者全員の同意を得ることを要しない。そのため、資金繰りや事業価値の毀損を防ぐために、早期に債権回収等の停止を要請する必要がある事案では、利用が検討され得る。

      ※指定確認調査機関が、事業再生の方向性等を記載した書面その他の資料に基づき、債務調整の必要性、権利変更議案の可決の見込み、対象債権者の一般の利益、すなわち清算価値保障に適合する見込み等を確認する。なお、権利変更議案の可決の見込みについては、法第3条第1項の確認段階では、当該確認に異議を述べていない金融機関等の貸付債権等の金額が、貸付債権等の総額(担保による保全部分を含む)の5分の1以上であれば足りる。

      5. 事業再生ADRやその他の準則型私的整理で全員同意の見込みが低下し、早期事業再生手続への移行を検討する事案

      先行する準則型私的整理において、一定の手続が実施されている場合には、第1回および第2回対象債権者会議の開催が不要とされるなど、先行手続との接続にも一定の配慮がなされている。他方、早期事業再生法に移行する場合には、対象債権者・対象債権の範囲、議決権額、保全部分・非保全部分、担保評価等を、早期事業再生法に基づいて改めて整理する必要がある。また、先行する私的整理手続で実行されたプレDIPファイナンスの優先的取扱いについては、法令およびQ&A上の要件を確認する必要がある。


      おわりに

      以上のとおり、早期事業再生法は、従来の準則型私的整理では対応が難しかった事案に対し、新たな選択肢を提供する制度である。一方で、その実効性は、対象債権の特定、担保評価、既存の私的整理手続との接続等、実務上の運用を今後どのように確立していくかにも左右される。2026年12月11日の施行に向け、引き続きこれらの実務上の論点について検討を深め、本制度が、早期着手・迅速再生を可能とする事業再生の選択肢として定着するよう、筆者も実務面から貢献していきたい。

      執筆者

      中村 吉伸

      KPMG FAS 執行役員パートナー/KPMGジャパン ターンアラウンド&リストラクチャリング(事業再生・事業変革)サービス統括

      KPMG FAS

      KPMGにて25年以上にわたり、ディールアドバイザリーの専門家として、事業再生、ターンアラウンド、事業・組織再編・再構築、事業変革、事業撤退、M&A(買収・統合・売却)、JV (設立・解消)、新規事業投資等、様々なプロジェクトでアドバイスを提供。事業再生サービスの日本代表を務めており、政府系機関による再編・再生、私的整理、会社更生・民事再生事件等に財務アドバイザーとして関与し、多数の案件・事件を成功に導いている。2007 年から 2009まで KPMG ロンドン事務所に駐在し、日系企業の欧州地域での M&A、事業・組織再編に係るアドバイスを提供。1999年以前は、監査業務に従事し、IPO支援や幅広い業種の会計監査を担当。経済産業省「早期事業再生検討ワーキンググループ」委員(2025年、2026年)

      関連リンク

      早期事業再生法を実務面から読み解く 第1回

      コロナ後の債務増加や金利上昇、原材料価格の高騰を背景に創設された早期事業再生法について、2026年3月の報告書で示された制度の方向性と同年12月施行予定を踏まえ、実務への影響を整理する。

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