開催概要
2026年3月12日、東京・虎ノ門にあるCIC Tokyoにて、「Tech × Business:企業成長を加速する先端技術とスタートアップ共創」と題したイベントを開催しました(KPMGコンサルティング主催)。
本イベントは、Venture Café Tokyoが開催するThursday Gathering内にて実施し、先端技術の社会実装、スタートアップとの共創、そして企業価値創造を軸とした3つのセッションを行いました。
本稿は、登壇者の発言内容を基に構成しています。
セッション1:先端技術×事業創出~KPMGが読み解くスタートアップの挑戦~
【講師】
KPMGコンサルティング
プリンシパル 渡邊 崇之
本セッションでは、生成AIをはじめとする先端テクノロジーの進展を踏まえ、企業が今後どのように技術と向き合い、成長創出や事業変革につなげていくべきかを解説しました。
近年の技術革新により、「技術的に可能なこと」は急速に拡張しています。その一方で、実際の事業化段階では、技術そのもの以上に設計や運用のあり方が成果を左右している点について言及しました。特に生成AIの活用においては、アウトプットの責任の所在、入力データの取扱い、利用時の説明責任といった観点を重要な論点として提示しました。
また、スタートアップとの協業による事業創出においては、技術の新規性や話題性にとどまらず、実装・運用までを見据えた検討と伴走体制の重要性を強調しました。
KPMGコンサルティングとして、事業会社とスタートアップ双方の視点を踏まえながら支援してきた取組みについても紹介しました。
KPMG 渡邊
セッション2: Edge Tech Dialogue~スタートアップとKPMGコンサルティングが語る未来の技術とビジネス~
【ピッチプレゼンター】
- 株式会社Acompany
代表取締役 CEO 高橋 亮祐氏
- 株式会社ラディウス・ファイブ
代表取締役 漆原 大介氏
- AironWorks株式会社
代表取締役 CEO(Co-Founder & CEO) 寺田 彼日氏
- コグニティ株式会社
代表取締役 河野 理愛氏
【モデレーター】
執行役員 パートナー 大谷 誠
本セッションでは、ロボティクス、量子コンピュータ、サイバーセキュリティ、エンターテインメントテクノロジーといった先端領域で活躍するスタートアップ企業4社が登壇し、それぞれの最新技術や事業の可能性について、ショートピッチを行いました。
- 株式会社Acompany
Acompany社は、機密情報や個人情報を含むデータを安全に取り扱いながら、AIを活用するための技術およびサービスについて紹介しました。
企業におけるAI活用が進む一方、現場レベルでは、個人利用の生成AIに業務データを入力してしまうといった課題も顕在化しています。そのような課題に対するアプローチとして、コンフィデンシャルコンピューティングを活用した仕組みを提示しました。
データを暗号化したまま処理することで、AI活用とセキュリティ要件の両立を目指したアプローチの説明があり、金融や公共分野など、実運用を前提とした領域での活用事例も紹介しました。
Acompany 高橋氏
- 株式会社ラディウス・ファイブ
ラディウス・ファイブ社は、画像生成AIを中心としたクリエイティブ領域における事業展開を紹介しました。
生成AIが注目を集める一方で、実際の制作現場では十分に活用されていない点に触れ、生成AIを制作工程のなかでどのように活用するか、既存の制作フローに配慮したツール開発の考え方や、実際のプロダクト事例を交えて説明しました。
また、これらはクリエイターの作業効率や創造性を意識した取組みであることを指摘しました。
ラディウス・ファイブ 漆原氏
- AironWorks株式会社
AironWorks社は、サイバーセキュリティ分野における人的リスクへの対応をテーマに発表を行いました。
フィッシングやディープフェイクなどの新たな脅威が拡大するなか、教育・訓練・検知・対応を組み合わせたプラットフォームの概要や、組織全体でのセキュリティ対策のあり方について説明しました。
あわせて、BCP(事業継続計画)領域への展開についても触れ、セキュリティ対策を組織全体で捉える必要性を示しました。
AironWorks 寺田氏
- コグニティ株式会社
コグニティ社は、人間の思考や判断の構造を可視化する知識表現AIについて取り上げました。
会話や記述データを基に思考パターンを分析し、営業や組織マネジメントなどの分野で活用されている事例を紹介しました。
具体的な活用事例を通じて、大量データを前提としないアプローチにおけるAI活用の一例として説明しました。
コグニティ 河野氏
セッション3:Executive Dialogue~先端技術時代の企業価値創造を再考する~
【パネリスト】
株式会社WiL
パートナー 大西 健史氏
KPMGコンサルティング
取締役会長 宮原 正弘
【モデレーター】
KPMGコンサルティング
シニアマネジャー 戸田 静香
本セッションでは、投資家および企業支援の視点から、先端技術が企業価値に与える影響について対談が行われました。
生成AIの普及により、従来のビジネスモデルやソフトウェアサービスのあり方が変化しつつあるなかで、企業価値がどのような観点で評価されていくのかについて議論が交わされました。
特に、SaaSビジネスを取り巻く環境の変化や、AIを前提としたプロダクトサービスの登場により、評価軸そのものが見直されつつある点が話題に上がりました。
WiL社の大西氏は、投資家の視点として、技術の新規性や成長スピードだけでなく、独自データの有無や業界理解の深さ、実装・運用までを見据えた事業構想が、企業価値を判断するうえで重要性を増しているとの見解を示しました。また、AIを活用すること自体を目的とするのではなく、どの業務や課題にどのように組み込まれているのかについて、より厳しく問われるようになっている点についても言及しました。
一方、KPMGコンサルティングの宮原は、企業支援の立場から、先端技術を活用した変革を進める際の難しさについて触れました。特に、大企業においては既存業務やシステムとの関係性、ガバナンス、説明責任といった制約条件が多く、技術的に可能であっても事業として前進しにくいケースが少なくない点を指摘しました。そのため、スタートアップとの共創においても、単発のPoCにとどめるのではなく、事業として継続・拡大させる視点が重要であると述べました。
左から KPMG 宮原、WiL 大西氏
左から KPMG 宮原、ラディウス・ファイブ 漆原氏、
コグニティ 河野氏、AironWorks 寺田氏、Acompany 高橋氏、
WiL 大西氏、KPMG 渡邊、戸田、大谷
さいごに
本イベントでは、先端技術を取り巻く最新動向や、スタートアップによる具体的な取組みを基に、技術を事業として展開する際の論点が共有されました。先端技術の導入にとどまらず、実装・運用・ガバナンスまでを含めた検討の必要性について複数の視点から意見交換が行われ、有意義な機会となりました。
KPMGは今後も、事業会社、スタートアップ、投資家との対話を通じて、先端技術の社会実装に関する知見の共有や、企業の取組みを支援します。