はじめに
金利は2025年度に入ってからも上昇傾向が続き、この記事を作成している2025年12月中旬の段階においては2025年度における比較的大きな金利上昇が確認されています。そのため、今期末の割引率については10%重要性基準抵触に伴う見直しや、前期末に比べて大きく上昇する可能性に注意が必要です。
外部委託計算を行っている企業では期末の割引率補正の際に外分補正にならないよう、事前に設定する2つの割引率に注意が必要です。加えて、割引率の設定方法としてデュレーション法を採用している場合、デュレーション計算で使用する割引率の選定にも留意が必要となります。
本稿のポイント
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1.2025年度の金利上昇と割引率の変動可能性
近年の国債金利(10年、20年、40年)の推移を示したグラフを見ると、金利は2021年度あたりから上昇してきており、2025年に入ってからも上昇傾向が続いています。
※財務省公表の「国債金利情報」を基に筆者作成
2025年12月15日時点における2025年3月31日以降の年限別上昇幅は以下のとおりです。
- 10年:+0.46%
- 20年:+0.70%
- 40年:+0.86%
これらの上昇幅は、10%重要性基準を採用している企業の多くで割引率の検討が必要となり得る水準であり、10%重要性基準を採用していない企業でも、今期末割引率が前期末と比べて大きく上昇する可能性に注意が必要です。
2.外部委託計算の場合に依頼する2つの割引率
退職給付債務の計算を外部委託する場合、多くの企業では事前に2つの割引率を指定して計算を依頼します。このとき、期末割引率への補正の際に外分補正にならないよう注意が必要です。
外分補正に関する留意点としては以下のとおりです。
- 外分補正は補正の精度が低いとされている(退職給付会計に関する数理実務ガイダンス)
- 依頼した割引率と実際の期末割引率が大きく乖離するほど、外分補正の精度が低下する
- とはいえ、2つの割引率の幅を広く取りすぎると内分補正でも精度が低くなるため、バランスが重要
ご参考 退職給付会計に関する数理実務ガイダンス「割引率等に関する合理的な補正」より抜粋 補正計算に用いるために複数の割引率に基づく退職給付債務の計算を行うにあたっては、本来の計算と補正計算で得られる結果の間に大きな差異が生じないように、割引率の幅のとり方に注意する。また、外分補正については、補正値が本来の値を下回ること、及び、内分補正に比較して精度が低いことに留意する。(付録3を参照) |
※出典元:公益社団法人日本年金数理人会
したがって、依頼する割引率は、外分補正にならないよう、
- 足元の金利水準
- 今後の金利動向
- 10%重要性基準の抵触の可能性と抵触時の割引率
を勘案して選定することが望まれます。
3.デュレーションアプローチ採用時の留意点
デュレーションアプローチでは、2つの割引率に基づいて退職給付債務を計算し、その差分からデュレーションを算出するケースがよくあります。そのため、どの割引率を採用するかによってデュレーション値が変動する点に注意が必要です。実務上は、割引率の取り方によってデュレーションが1年程度変動するケースもあるため、最終的な期末割引率が2つの割引率の間に収まるよう設定するのが望ましいといえます。特に、10%重要性基準による現行割引率の適用可否がぎりぎりの企業では、デュレーション算定に用いた割引率の選定次第で、基準の抵触判断が変わる可能性もあり、より慎重な設定が必要です。
執筆者
有限責任 あずさ監査法人
金融アドバイザリー事業部
ディレクター 普照 岳