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      2025年7月、米国の関税措置に関する日米協議の結果、日本への輸入に関して非関税措置の見直しが実施されることとなりました。これらの制度改定は、世界第4位の新車販売市場である日本での米国メーカーの販売障壁を緩和し、輸入拡大の可能性を高めることを目的としています。とはいえ、現状の新車販売シェアが1%未満にとどまる米国メーカーが、当該制度の改定のみで大幅に販売台数を伸ばせるかは疑わしく、乗り越えるべき課題が他にも多くあることは明らかです。

      第1回では、非関税措置の見直しを契機とする商機と課題を考察しました。

      今回の連載では、日本市場の特徴や海外メーカーが置かれている状況を踏まえ、日本での米国メーカーの課題について考察していきます。

      1.日本市場の独自性による障壁

      まず、日本の自動車市場の基本的な構造を整理します。

      (1)全需の概況

      日本の自動車市場は、独自の消費者志向と制度設計により、他国とは異なる特性を有しています。2024年の新車販売台数の内訳を見ると、登録車が全体の65%、軽自動車が35%を占めており、軽自動車の存在感の高さが際立っています。

      登録車市場は約300万台規模で、販売上位20車種のうち14車種がBセグメント・Cセグメント・ミニバンで構成されています。これに軽自動車を加味すると、日本市場では「小型車」と「ミニバン」の2軸が主流であることが明確に読み取れます。

      燃料タイプに関しては、登録車の約6割がハイブリッド車であり、そのなかでもストロングハイブリッド(モーター単独で走行できるハイブリッド車)が特に高い人気を誇っています。実際、登録車の販売上位20車種のうち18車種がストロングハイブリッドをラインアップしており、同タイプは販売シェアを獲得する上での“必須装備”と位置付けられる状況にあります(図表1)。

      Japanese alt text: 日本市場における米国メーカーの課題_図表1

      (2)日本の消費者の重視点

      日本では厳格な車検制度が存在し、車両の安全性や環境性能の維持に寄与していますが、同時に消費者の維持費への意識を高める要因にもなっています。ガソリン価格の高騰も相まって、維持費は新車購入時の重要な判断材料となっており、KPMGの調査では「価格」「安全性能」に次いで「維持費」が重視される項目として挙げられています。

      また、新車購入に際しては、できる限り自身のニーズに合った仕様の車両を選ぶことを優先し、生産・納車までの待機期間を許容する消費者が多いことも、日本市場の特徴です。そのため、顧客が選択できる車両仕様やアクセサリーの選択肢を豊富に揃えることが、競争力を高めるうえで重要な要素となっています。

      (3)今後の全需見通し

      日本の自動車市場は成熟しており、販売台数は緩やかな減少傾向にあります。また、人口減少などにより、今後もこの傾向は続いていくと考えられます。燃料タイプについては、販売トレンド、最近の消費者の意向、国策の「マルチパスウェイ」などを考慮すると、急速な電動化は想定できず、当面はハイブリッド車中心の販売が続くと予想されます。

      2.苦戦する米国メーカー車

      日本市場で海外メーカーが置かれている状況は以下のとおりです。

      (1)海外メーカーの販売概況

      日本の自動車市場において、海外メーカーは一定の存在感を保っているものの、依然として国内メーカーの牙城を崩すには至っていません。2024年の登録車新車販売において、海外ブランド車のシェアは8%にとどまり、そのうち約7%が欧州ブランド、残りの1%が米国ブランドおよびその他の地域のメーカーによるものです。

      販売上位20車種のうち15車種がSUV-CセグメントおよびSUV-Dセグメントに集中しており、国内ブランドの主力車種とは異なるセグメントで競争していることがわかります。燃料タイプに関しては、上位20車種のうち9車種がエンジン車のみのラインアップであり、残りの11車種もマイルドハイブリッド車(モーター単独では走行できないハイブリッド車)、PHEV(プラグインハイブリッド車)、BEV(バッテリー電気自動車)といった、いずれも日本市場で主流とは言えない燃料タイプを採用しており、品揃えの面でも限定的です。

      また、海外メーカーの販売地域は東京・大阪・名古屋の三大都市圏に集中しており、全体の約3分の2がこれらの地域で販売されています。このように、セグメント・燃料タイプ・地域分布のいずれにおいても、海外ブランドは日本市場の主流とは異なるポジションで展開していることがうかがえます(図表2)。

      Japanese alt text: 日本市場における米国メーカーの課題_図表2

      (2)海外ブランドに対する消費者の重視点

      KPMGの調査によると、海外ブランド車のユーザーも「価格」を最も重視していますが、次いで「走行性能」「デザイン」が重視されており、日本ブランド車のユーザーとは異なる傾向が見られます。また、海外ブランドのなかでも、どの国・地域のブランドかによって消費者が抱く期待は異なっており、各ブランドは限られた顧客層ながらも、それぞれ独自のポジションを確立していることが明らかになっています。

      (3)米国ブランドの状況

      台数を公表していないTeslaを除き、米国メーカーの日本での新車販売台数は縮小傾向にあり、2021年の約14千台から2024年には約11千台に減少しています。そのうち約9割をJeepブランドが占め、残りはGMのラグジュアリーSUVやスポーツカーなどです。また、KPMGの調査では、米国メーカーを検討する消費者は「デザイン」や「車両サイズ」を重視する傾向があることが示されています。
       

      米国ブランドは、現状ではニッチ戦略を取らざるを得ない状況にあり、シェア確保に苦戦しています。非関税措置の見直しは追い風となり得ますが、それだけでは十分ではありません。

      次回の寄稿では、米国メーカーが日本市場における構造的な課題をどのように克服し、競争力を強化していけるのか、複数のシナリオで考察していきます。
       

      ※本文中の数値は、一般社団法人 日本自動車販売協会連合会や日本自動車輸入組合の情報を参照し、KPMGにて算出しています。

      執筆者

      KPMGコンサルティング
      シニアマネジャー 大熊 恒平

      「日本における米国自動車メーカーの新たな機会」第1回。非関税措置の見直しを契機とする商機と課題を考察します。

      欧州と米国における充電インフラ整備のアプローチの違いとその背景を解説し、今後の動向を考察します。

      CASE、脱炭素化、法規制対応など、自動車業界のあらゆる変革を支援します。

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      KPMGコンサルティング

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