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      本稿は、KPMGコンサルティングの「Automotive Intelligence」チームによるリレー連載です。

      タイでは急成長する電気自動車市場に伴い、充電インフラの整備も加速しています。四輪・二輪それぞれの市場動向を踏まえながら、充電インフラの現状と課題を解説し、タイにおけるBEV普及の鍵を探ります。

      転換期を迎えるタイの自動車市場

      タイの自動車市場では、長らくピックアップトラックが主力でした。しかし近年、家計債務の増加と自動車ローン審査の厳格化が重なり、2024年の四輪車販売は大きく落ち込みました。

      一方で、電気自動車(以下、BEV)は2022年の補助金導入をきっかけに急成長しています。四輪車に占めるBEVの割合は、2023年に9.4%、2024年には12.6%まで上昇しました。

      2025年上半期のパワートレイン構成を見ると、内燃機関(以下、ICE)車は53.6%まで低下。ハイブリッド車(HEV)が23.7%、BEVが19.0%、プラグインハイブリッド車(PHEV)が3.7%を占め、ICEを搭載する車両の割合は合計で81.0%にまで縮小しています。

      市場全体の販売台数は減少傾向にありますが、パワートレイン構成の変化は電動化の加速を明確に示しています。

      この背景には、中国系OEMの積極的な拡販があり、日系OEMのシェアは四輪車全体、特に乗用車分野で低下しています。モデルの供給力と価格競争力が、消費者の需要の重心を確実に変えつつあるのです。

      【図表1】
      Japanese alt text: タイのBEV充電網、量から”使える網”へ_図表1 出所:ページ末尾の公表資料を基にKPMG作成
      【図表2】
      Japanese alt text: タイのBEV充電網、量から”使える網”へ_図表2 出所:ページ末尾の公表資料を基にKPMG作成

      こうした需要の変化に対応する形で、充電インフラも量・質の両面で整備が進んでいます。2024年時点で、公共系を中心とした充電器の設置数は、低速(主にAC)が5,782基、高速(主にDC)が5,685基と、ほぼ同数となっています。新興市場では急速充電(DC)に偏りがちですが、タイではACとDCのバランスが取れている点が特徴的です。

      車両側では、BEVやPHEVの選択肢が広がっており、充電プラグの方式や充電性能に違いがあるため、それらを吸収できる多様な種類・出力帯の充電ネットワークが求められています。

      【図表3】
      Japanese alt text: タイのBEV充電網、量から”使える網”へ_図表3 出所:ページ末尾の公表資料を基にKPMG作成

      二輪市場は四輪とは異なる様相を呈しています。市場全体はすでに成熟しており、2024年の新車販売台数は168万台と、前年比で約10%の減少となりました。二輪BEVの新車販売は2.5万台にとどまり、全体に占める割合はわずか1.3%です。

      電動化が進まない最大の要因は、航続距離の短さです。ICEが約300kmの航続距離を持つのに対し、BEVは100km程度とされ、ユーザーにとって十分な魅力とは言えません。

      さらに、普及が期待されていたバッテリースワップ型の充電拠点の整備が進んでいないことも、電動化の足かせとなっています。

      【図表4】
      Japanese alt text: タイのBEV充電網、量から”使える網”へ_図表4 出所:ページ末尾の公表資料を基にKPMG作成

      タイのBEV充電器の動向は、四輪と二輪で異なる「二層構造」として捉えるべきです。

      四輪では、市場全体が縮小傾向にあるなかでもBEVの構成比は着実に上昇しており、ACとDCが拮抗する公共充電網がその受け皿となっています。今後の課題は、郊外や幹線道路での実効出力の確保、そして決済方法や料金体系の統一です。

      一方、二輪では政府による購入補助があるにもかかわらず、車両の選択肢とインフラの密度が噛み合わず、BEVの普及は進みにくい状況です。また期待されていたバッテリースワップ型の充電拠点整備が遅れていることが障壁となっています。スワップ型の普及には、業者間で電池規格と運用スキームを共通化し、まず都市部で「使い切れる密度」を確保することが重要です。

      現在実施されている政府のBEV産業振興政策「EV3.0/3.5」が着実に遂行されれば、タイ国内でのBEV生産が増加し、自動車メーカーによる地産地消が進む可能性があります。そうなれば、充電器の「点的な設置」から「面的な運用最適化」へと軸足が移るでしょう。

      タイにおけるBEV普及の鍵は、充電器の絶対数ではなく、「使う場所・時間・車種に対して、どれだけ確実に機能するか」を示せるかどうかにかかっているのではないでしょうか。

      【図表5】
      Japanese alt text: タイのBEV充電網、量から”使える網”へ_図表5 出所:ページ末尾の公表資料を基にKPMG作成

      執筆者

      KPMGコンサルティング
      プリンシパル 轟木 光

      轟木 光

      プリンシパル

      KPMGコンサルティング

      欧州と米国における充電インフラ整備のアプローチの違いとその背景を解説し、今後の動向を考察します。

      自動車産業が持続可能な成長と競争力の向上を目指すために必要な情報を提供します。

      CASE、脱炭素化、法規制対応など、自動車業界のあらゆる変革を支援します。

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      KPMGコンサルティング

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