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      不確実な時代の中だからこそ、市場やステークホルダーに対して企業の指針を示すうえで重要性を増す中期経営計画。ただ、実効性のある道筋を示さなければ、理想(計画)と現実(実績)が乖離し、ともすれば企業価値に影響を与えたり社員の士気を下げたりする要因となってしまいかねない。食品・油化企業のミヨシ油脂では、もともとは“自前主義”だった中期経営計画を抜本的に見直すべく、KPMGコンサルティングに策定支援を依頼した。実効性を高めるうえで実施した内容や期待される効果を、両社のキーパーソンたちに聞いた。

      Japanese alt text: ミヨシ油脂 志田氏、秋山氏、島津氏、津田氏 左からミヨシ油脂 志田氏、秋山氏、島津氏、津田氏

      【インタビュイー】

      ミヨシ油脂株式会社
      執行役員 食品本部 本部長 志田 政憲氏
      執行役員 油化本部 本部長 秋山 哲氏
      執行役員 経営企画部 部長 島津 啓輔氏
      戦略企画本部 本部長 津田 信治氏

      KPMGコンサルティング株式会社
      執行役員 パートナー 府中 善英
      アソシエイトパートナー 中嶋 功
      シニアマネジャー 山地 真矢

      中期経営計画の策定支援を依頼した理由

      ―ミヨシ油脂は、創立100年を超える老舗企業ですね。2025年2月に第2次中期経営計画が公表されました。

      島津氏:1921年に繊維工業石鹸と繊維油剤の製造からスタートし、2025年で創立104年目を迎えました。現在は、創立以来培ってきた油脂製造の技術を生かし、食品事業と油化事業の2つの柱を軸にビジネスを展開しています。

      私たちは「人によし、社会によし、未来によし」という経営理念のもと、2022年には、人々の生活に欠かせない食と油化製品のインフラ企業として「持続的成長と安定的高収益体質の確立」を目指すという、2030年までの経営構想を掲げました。

      Japanese alt text: ミヨシ油脂 島津氏 ミヨシ油脂 島津氏

      さらに、構想実現に向けた約10年間を3つの期間に分け、2022~2024年度を改革加速化と成長基盤づくりの「種まき」の期間、2025~2027年度は「育成」の期間、2028~2030年度は成長軌道に乗せる「結実」の期間と位置付けました。

      すでに第1次中期経営計画(2022~2024年度)の期間は終了しており、コロナ禍の影響や主要原材料価格の高騰を受けて収益の厳しい時期もありましたが、全社一丸となって収益力強化に取り組んだ結果、最終年度にあたる2024年度は好調な実績で締めくくることができました。

      ―これまでは自前で策定されていた中期経営計画ですが、2025~2027年度の第2次中期経営計画ではKPMGコンサルティングに策定支援を依頼されたそうですね。「種まき」期間でも一定の成果を得ていたなか、なぜ外部の協力を得ようと考えられたのでしょうか。

      島津氏:まず、外部要因として挙げられるのが、東京証券取引所から要請を受けた「資本コストや株価を意識した経営」への対応です。

      ミヨシ油脂は東証スタンダード市場に上場していますが、株価指標であるPBR(株価純資産倍率)やROIC(投下資本利益率)などへの対応と成長戦略の具体策についてステークホルダーからの開示要請が強まっており、こうしたニーズに応えるためにも、中期経営計画を刷新する必要性を感じていました。

      また、機関投資家や個人株主の皆様ときちんと対話し、当社の企業姿勢や方針を明確にお伝えするためにも、外部の知見やノウハウを吸収したいと考えました。

      背景には、ミヨシ油脂の内部要因も大きく影響しています。当社は2022年2月、東京都葛飾区にあった本社地区の土地売却を公表しました。年数が経過した同地区の再構築は長年の経営課題でしたが、土地を売却して得た資金を元に、同地区の本社機能、研究所、工場、倉庫の再編成を図ることにしました。

      「持続的成長と安定的高収益体質の確立」を目指すという経営構想実現のための戦略ですが、それをステークホルダーの皆様にご理解いただくためにも、きちんとした対話が欠かせないと考えたのです。

      ―そうしたミヨシ油脂の要望を受けて、KPMGコンサルティングはどのような支援を行ったのでしょうか。

      Japanese alt text: KPMG 中嶋 KPMG 中嶋

      中嶋:お話をうかがい大前提にしたのは、数値化を含めた明瞭な経営目標を設定し、それを達成するための実効性の高い中期経営計画を策定することでした。

      何を目指し、そのためにどのように収益を上げるか、という道筋を目標数値に基づいて示すことができれば、従業員の皆様の「やるべきこと」が明確になりますし、ステークホルダーの皆様にもご理解をいただきやすくなります。

      そのための仕組みとして、まず各部門の事業計画を横串で連携することから取り組みました。

      “実効性”の高い中計の策定に必要だったことは

      島津氏:ミヨシ油脂には、製菓・製パンなどの原料となるマーガリンや、粉末油脂を主力とし、新しい味やおいしさで暮らしへ貢献する製品を提供している食品本部、トイレタリー向け基材原料や家庭紙用柔軟保湿剤を主力とし、さまざまな産業分野へ提供している油化本部、そして戦略企画本部、生産本部、管理本部などがあります。

      従来の中期経営計画では、それぞれの部門が各々に事業計画を立て、独自の数値目標で管理していたため、部門を横断する全社的な数値目標の設定や施策づくりに課題がありました。

      今回の中期経営計画策定では、まずCxOと経営骨子を検討し、全社目標を設定したうえで、各部門や現場が目標を達成するために何をすればいいか、というアプローチで施策ごとに関連部門を一堂に集めた会議体を設け、具体的な取組みをつくり上げていく仕組みづくりに協力いただきました。

      一つひとつの施策については、収益試算を積み上げ、その因果関係を部門横断で繋ぎ合わせる検討をすることで、会社全体としての取組み、数値目標をつくり上げていくという非常に地道な作業となりました。

      中嶋:中期経営計画のつくり方を従来の方法から根本的に変える取組みでしたが、ミヨシ油脂の三木逸郎代表取締役社長兼CEOをはじめ、CxOの皆様と頻度高くミーティングを重ね、その意義をご理解いただき、仕組みを再構築していきました。

      経営層の皆様に“腹落ち”していただき、方向性をしっかりと定めてもらえたことは、従来とは異なる中期経営計画づくりを前進させる大きな力になったと思います。

      ―従来のやり方を変えて新しい計画づくりを行うためには、各部門や現場の理解も不可欠だったと思います。

      Japanese alt text: KPMG 山地 KPMG 山地

      山地:各部門の本部長、部門長の皆様とは毎週のようにミーティングを重ねさせていただきました。加えて、全国にある工場や支店も訪問して、お話を伺いました。

      現場の皆様からのご意見やご要望をしっかりと汲み取り中期経営計画に反映させることは、理想論だけにとどまらない、実効性の高い中期経営計画づくりには欠かせない要素でした。

      島津氏:計画策定に向け、KPMGコンサルティングと実施したミーティングの回数は1年間で約350回に上りました。複数の部門が関係する案件や全国の現場からの意見をきめ細かく整理いただいたことで、経営層と従業員や部門の垣根を越えて方向性を1つにする中期経営計画づくりを進められたと感じています。

      ―財務会計および収支管理の側面ではいかがですか。

      Japanese alt text: KPMG 府中 KPMG 府中

      府中:第2次中期経営計画は「持続的成長と安定的高収益体質の確立」という経営構想を実現するための「育成」期間という位置付けです。そのため、今後の成長に向けた設備投資が、計画づくりにおいて最も重要なアジェンダの1つとして対話を進めたことで、「その設備投資を実現するためにどれだけ収益を上げなければならないか」という達成すべき目標が明確になりました。

      経営目標を明瞭に数値化し、実現に向けた収支管理の仕組みを構築しました。その結果、従業員の皆様のベクトルが1つになり、株主をはじめとしたステークホルダーの皆様にも中期経営計画の意図をご理解いただけたと思います。

      実効性のある中計で100年企業はどう変革したか

      ―組織や立場の垣根を越えて力を結集させる中期経営計画が出来上がったわけですね。今回の施策をどのように評価されていますか。

      志田氏:従来の中期経営計画は、「何をすれば、収益がどのように変わる」という因果関係が見えにくい、定性的なもので実行可能性の面で不安がありました。今では、現場の取組みが経営にどのような効果をもたらすかが明瞭になり、目指すべき将来展望と実現可能な計画を同時に進めることができています。

      Japanese alt text: ミヨシ油脂 志田氏 ミヨシ油脂 志田氏

      食品本部はこれまで、売上数量に比例して売上も利益も拡大する構造でした。ところが、原材料価格の高騰が影響し、売上数量を追うことが利益増加に直結するわけではないという新たな視点に立つことができました。今回の施策によって、各部門に分散していたデータが一元的に見えるようになり、改善するべきポイントを定量的に考えやすくなりました。

      部員たちのモチベーションも格段に向上しました。思うように成果が上がらず、悩んでいる部員に対しても、「製品の適正な価値を維持・担保することで、これだけの利益を生み出せる」と具体的な数字に照らしながらアドバイスができるようになり、非常に実効性の高い計画が出来上がったと感じています。

      Japanese alt text: ミヨシ油脂 秋山氏 ミヨシ油脂 秋山氏

      秋山氏:私が本部長を務める油化本部は、天然油脂原料や石油化学原料に多様な技術を組み合わせ、時代のニーズに合わせてさまざまな素材や製品を生み出してきました。保湿ティッシュのしっとり感を出す保湿柔軟剤では国内シェアトップ(※1)を誇っています。

      そのうえで、KPMGコンサルティングとの対話や計画策定を通じ、油化事業は今後、グローバルな視点で戦っていくことを明確にすることができました。同業他社の取組みにより目を向けながら、グローバル戦略を強化することで、ミヨシ油脂の成長の一翼を担っていきたいと考えています。企業が描くべき成長戦略を学ぶことができたのは、2030年に向けて当社がやるべきことを考える大きなヒントになりました。

      (※1)出典:ミヨシ油脂自社調べ

      Japanese alt text: ミヨシ油脂 津田氏 ミヨシ油脂 津田氏

      津田氏:戦略企画本部は、食品と油化という当社の2本柱に続く次の収益の柱を生み出すため、2022年4月に発足しました。新しい市場の開拓や製品づくりによる事業の創出も視野に入れ、マーケティングや技術研究、ソリューション開発に取り組んでいます。KPMGコンサルティングが提供してくれた情報やヒントは戦略企画本部の事業計画策定においておおいに参考になりました。今後は、中期経営計画の策定からさらに踏み込んで、研究開発テーマの創出やその事業化に向けたご支援も期待しています。

      ―最後に、今後への期待についてお聞かせください。

      島津氏:部門を横断しての施策づくりや、定量的な目標策定は、経営企画部の力だけでは簡単にはできなかったと思います。加えて、KPMGコンサルティングならではのデータ分析の切り口や、それを簡明にまとめ、議論を進めるファシリテーターやプレゼンテーション技術、従業員やステークホルダーに骨子や施策の意図を汲み取ってもらうコミュニケーションスキルなど、高度なコンサルティングを受けたことで策定を完遂でき、非常に勉強になりました。すでに第2次中期経営計画はスタートしており、計画の内容について社内外から評価の声をいただいています。今後は従業員やステークホルダーからの期待に応えるためにも、計画を着実に遂行していくためのご支援を期待しています。

      中嶋:ミヨシ油脂の事業は、原材料価格の変動など外部環境の影響を受けやすく、計画を遂行するハードルが高いと認識しています。そのため、今後も経営層や各本部の皆様との対話を重ねながら、期中における内外環境の変化に合わせた継続的な経営計画のブラッシュアップ、会社の成長を着実に実現するための施策の推進、また新たな戦略の立案など、幅広く多面的なご支援をさせていただきます。

      Japanese alt text: ミヨシ油脂 志田氏、秋山氏、島津氏、津田氏、KPMG 中嶋、府中、山地 左から、ミヨシ油脂 志田氏、秋山氏、島津氏、津田氏、KPMG 中嶋、府中、山地

      ミヨシ油脂株式会社

      概要1921年の創立以来培ってきた油脂製造の技術を駆使し、食品事業と油化事業の2事業を柱に展開。
      「人によし、社会によし、未来によし。」を経営理念に掲げ、油脂の力を活かしたものづくりを通じて、人、社会、未来への貢献に取り組んでいる。
      URLhttps://www.miyoshi-yushi.co.jp/
      本社所在地〒130-0012 東京都墨田区太平四丁目1番3号
      オリナスタワー13階

      ※本稿は、2025年6月16日に掲載された『日経ビジネス電子版タイアップ』の記事を、株式会社 日経BPの許可を得て転載したものです(一部加筆・修正)。無断での複写・転載は禁じます。

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