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      KPMGは世界の主要企業のCEOを対象とした調査を毎年実施しています。
      第9回目となる「KPMGグローバルCEO調査2023」は、2023年8月15日から9月15日に、主要11ヵ国(オーストラリア、カナダ、中国、フランス、ドイツ、インド、イタリア、日本、スペイン、英国、米国)の11業界(資産運用、自動車、銀行、消費者・小売、エネルギー、インフラ、保険、ライフサイエンス、製造、技術、通信)の企業経営者1,325人に対して、経済およびビジネスの展望に関する今後3年間の見通しについて調査しました。グローバル企業のCEOが考える経営課題や過年度からの推移に関する分析結果を報告します。

      複雑さを乗り越えて進むべき道

      CEOは、世界経済の将来に対する自信を維持する一方で、何が事業にとってのリスクであるかについての見方を大きく変えています。国際政治、貿易動向、国際関係の絶え間ない変化により、CEOに新たなレベルのレジリエンスが要求されています。CEOは生成AI、人材管理、環境・社会・ガバナンス(ESG)問題への取組みにおけるステークホルダーの高い期待に焦点を当て、戦略的優先課題を見直しています。

      ビジネスリーダーは、地政学的な不確実性や政治問題化から、ESG領域におけるステークホルダーの期待の高まり、そして生成AIの導入に至るまで、さまざまな面で成長への課題や障害に直面しています。 私が心強いと思うのは、現在マクロ経済や地政学的な課題が山積みとなっているにもかかわらず、中期的な世界の景況感が比較的堅調に推移していることです。やがて国際的に持続可能な長期成長路線に戻れるというコンセンサスがあります。 CEOにとって、より公平で‟成功した世界”へ回帰するチャンスは目の前にあります。成功への鍵は、長期的、戦略的な計画に絶えず焦点を当て、不確実性の高い時期に常に脅威となる短期的で消極的なリーダーシップの危機を回避することに尽力することだと考えます。

      ビル・トーマス

      グローバルチェアマン兼CEO, KPMGインターナショナル

      A happy man standing outside the office building

      世界経済に対する自信は前年比ほぼ横ばいで、パンデミック前の水準を上回っています。CEOのほぼ4名中3名(73%/日本は60%)が、今後3年間の経済に自信を持っています(昨年は71%、日本も71%)。これは、国際的に持続可能な長期成長路線に戻ることができるというコンセンサスを反映しています。一方で、自社の成長見通しに対するCEOの自信は3年ぶりの低水準にあります。2020年の初めには、CEOの85%が自社の成長見通しに自信を持っていましたが、今年はその比率は77%(日本:65%)でした。

      今後3年間の世界経済の成長見通しに対するCEOの自信

      このことは、CEOが事業の成長に対するリスクとして捉えているものが大きく変化していることを反映しています。CEOは現在、地政学と政治的不確実性を事業の成長に対する最大のリスクとして位置づけています。具体的には、紛争地域における企業のプレゼンスへの対応や、サプライチェーンの混乱への対応、価格変動への対処といったものになります。

      この変化は、CEOが地政学的リスクは短期的な検討事項にとどまらないという事実を理解したことを示しています。地政学的に分断された世界では、CEOはしばしば事実上の政治家となります。CEOのアプローチとして、取締役会の議題での政治の比重を高めると同時に、専門的な洞察、シナリオ・プランニング、ストレス・テストを含む地政学的リスクをめぐる戦略を構築する必要があります。

      今後3年間の成長リスク

      CEOは、今後12ヵ月間の成長実現に向けて、より短期的な障壁に直面しています。例えば、4名中3名超(77%/日本は70%)が、金利上昇と金融政策の引き締めにより、潜在的な不況や現在の不況が長引く可能性があると回答しています。また、同じく77%(日本:66%)は、今後3年間で物価上昇の圧力が組織の経営に悪影響を及ぼすと考えています。

      これらの課題に対処し、対応するなかで、CEOは個人の誠実さを示すことが信頼を築く上で重要であることを認識しています。大多数(71%/日本は69%)のCEOは、自社の評判に悪影響を及ぼしている場合、利益の出る部門であっても手放す準備ができていると述べています。地政学が取締役会の議題に浮上するなか、61%のCEO(日本は49%)は、取締役会の懸念にも関わらず、政治的または社会的に論争のある問題については、公的な立場を取ると述べています。

      Two people working on the laptop 01
      生成AIは、その可能性をよりよく理解し、ビジネス戦略に導入する方法を模索しているリーダーたちの間でますます注目を集めています。課題は、適切な場所に資金を投入し、AIがもたらす機会を十分に活用するための適切なスキルを持つことです。

      リサ・ヘネガン

      KPMGインターナショナル グローバル・チーフ・デジタル・オフィサー

      人工知能(AI)は、人類の活動のほぼすべての分野を変えつつあり、日常生活、ビジネス、社会のさまざまな側面に組み込まれています。BardやChatGPTのようなツールが脚光を浴びるにつれ、世界のCEOは生成AIの無限の可能性をますます認識し、このテクノロジーへの投資と探求に積極的な姿勢を取っています。

      世界のCEOは生成AIを投資の最優先事項としています。調査によると、70%が将来の競争力を求めて生成AIに多額の投資を行っており、その半数が(52%/日本は43%)が3~5年で投資額を回収できると考えています。実際、組織内で生成AIを導入することの最大の利点として、収益性の向上が挙げられています(22%/日本は27%)。

      KPMGが最近発表したKPMG global tech report 2023によると、55%の組織が、AIシステムがどのように意思決定を行うかについて懸念しているため、自動化への進展が遅れていると回答しています。

      投資を推進する意欲はあるものの、世界のCEOは、新たなテクノロジーにより対処すべきリスクが生じる可能性があることを認識しています。57%(日本は66%)が生成AIを導入する際の最大の懸案事項として倫理的な課題を挙げており、次いで規制の欠如が僅差で続いています。AIに対する監視や規制が強化されるにつれ、組織には明確な方針と信頼性をもって運用できる実務の整備が必要になるかもしれません。

      CEOはまた、AI技術がサイバーセキュリティのリスクを高めているという課題にも取り組んでいます。AIがサイバー攻撃の検知に役立つ可能性はあるものの、82%の回答者(日本は77%)は、AIが敵対勢力に新たな攻撃戦略を提供することで、新たな危険が生じる可能性もあると考えています。また、過去数年間におけるサイバーセキュリティへの注目にもかかわらず、サイバー攻撃に備えていると回答したCEOは53%(日本は63%)にとどまっており、約4分の1(27%/日本は32%)は、潜在的なサイバー攻撃に備えていないと回答しています(昨年の24%から増加)。

      CEOは、組織が責任ある強固なAIフレームワークを採用し、セーフガードとガバナンスに徹底的に注力するよう先頭に立ってリードする必要があります。

      生成AIに対するCEOの視点

      People in a meeting room
      この調査結果は、CEOが大きな問題に対して迅速な決断を迫られていることを浮き彫りにしています。経済が不透明な今、人材争奪戦は和らいでいるかもしれませんが、オフィス勤務に対する画一的なアプローチは弊害をもたらすかもしれません。

      ヌラム・ドロム

      人材部門グローバルヘッド, KPMGインターナショナル

      今年の厳しいグローバル情勢から、CEOはさまざまな重要課題に対して意思決定を迫られていることが浮き彫りになっています。これらの課題は、CEOが今後3年間でどのような人材を支援し、惹きつけていくかということに影響を与えています。

      注目すべきは、グローバルCEOは、パンデミック前の働き方を支持する意志を示しており、過半数(64%/日本は75%)が今後3年以内にオフィス勤務に完全回帰すると予測していることです。これは、2022年のCEO Outlookにおける彼らの意見と一致しています。さらに、87%のCEO(日本は93%)は、積極的に出社しようとする従業員に対して、有利なアサイン、金銭的報酬や、昇進で報いる可能性があると回答しています。

      この意見は、CEOの間で従来のオフィス中心の考え方が根強く残っていることが明らかになっています。これは、ハイブリッドワークが過去3年間、生産性向上に大きく寄与し、特に若い世代の労働者に強い支持を受けていることと対立した価値観です。組織がオフィス勤務への回帰を進めるなか、リーダーは、優秀な人材を育成しサポートするために、従業員の価値提案を受け入れ、すべての人の懸念やニーズを包合する長期的な視野を持つことが極めて重要です。

      インクルージョン、ダイバーシティ&エクイティ(IDE)の重要性について多くのCEOが同意するものの、進展のペースは十分でないという懸念が示されています。グローバルCEOの3分の2(66%/日本は52%)は、ビジネスにおけるインクルージョンとダイバーシティの進展が遅すぎるとし、大多数(72%/日本は59%)は、職場でダイバーシティを実現するには上級管理職レベルの変革が必要だと述べています。

      オフィス勤務回帰に関するCEOの見解

      Two women with laptop in garden
      経済的・政治的な不確実性が高まっているにもかかわらず、今回の調査結果は、ESGに対するCEOのレジリエンスと集中力の高まりを反映しています。気候危機のような話題は、地域によっては二極化していますが、ビジネスリーダーは、より持続可能な事業への移行を推進する上で、積極的な役割を果たし、すべての人に利益をもたらすために厳しい倫理的な決断や姿勢を取る準備ができていると語っています。財務的・地政学的な圧力が続くなか、多くのCEOにとって神経を使う試練となることは間違いありませんが、この調査結果から、大多数の経営幹部は現在、E(環境)、S(社会)、G(ガバナンス)が、持続可能なビジネスを成功させるためのオプションではないことを認識し、全面的に取り組んでいることが分かります。

      ジョン・マカラリーシー

      グローバルESGヘッド, KPMG

      ESGは地政学的不確実性や、経済的な課題に直面した場合でも、事業のレジリエンスを確保し長期的な成長を実現するための企業戦略に不可欠な要素であるとCEOは認識しています。

      ESGという用語を巡る激しい議論があるにもかかわらず、CEOはESGが彼らのビジネス運営や企業戦略の不可欠な一部であることを認識しており、より成果重視のアプローチをとっています。グローバルCEOの2/3以上(69%/日本は55%)が、価値創出手段としてESGをビジネスに完全に組み込んでいます。ESGに対する認識と対話の変化を反映し、CEOの35%(日本は16%)が社内外でESGに言及する際の表現を変えています。これは、CEOがESGの各側面についてより具体的に理解するとともに、最も影響力のあるところに優先的に取り組む傾向を示しています。

      世界のCEOは、ESG投資に対するリターンを得るにはまだ数年かかると考えているものの、ESGが顧客やブランドにとって重要であることは認識しています。4分の1近く(24%/日本は27%)は、今後3年間で、ESGが顧客との関係に最も大きな影響を与えると考え、さらに16%(日本は17%)は、ESGがブランドの評判を高めるのに役立つと考えています。

      ESGに関して、世界のCEOは新たな規制や政治の変化に敏感になっています。それにも関わらず、68%のCEO(日本は75%)は、現在のESGの進捗状況は、ステークホルダーや株主からの潜在的な評価に耐えられるほど強固ではないと回答しています。事業の成長とESG進捗のバランスを取ることの難しさは、ESG Assurance Maturity Indexでも裏付けられています。同インデックスでは、ESGの保証を受け入れる準備ができていると考えている経営幹部の半数以上が、保証の目標と株主の利益期待のバランスを取ることが課題であると回答しています。

      ESGに対するCEOの視点

      成長機会の探求のために

      テクノロジー

      • 倫理的で、ビジネスにとって最も理にかなっており、従業員と顧客のニーズを最優先する方法で生成AIを導入する。

      • ビジネスをリスクにさらすことがないように、サイバー攻撃戦略を常に最新の状態に保つ。


      人材

      • 従業員がハイブリッドワークやリモートワークを望んでいる際、長期的な視野を持って優秀な人材を育成しサポートする。

      • トップが方針を示す。シニアリーダーは、IDEを優先事項として掲げ、具体的な目標を設定して資金を提供し、責任を持ってプログラムを主導するマネジメントを任命すべき。


      ESG

      • ESGをリスク管理対象ではなく、事業の成長における価値創造の原動力として位置づける。ESGが成長の議論に組み込まれると、新たな展望が開ける。

      • ブランドや顧客との関係を維持するためにESG規制の変動に常に注意を払う。

      • ESGへの投資を、自社の価値観や事業の価値観に合致する領域に集中させる。


      KPMG 2023 CEO Outlookについて

      第9回KPMG CEO Outlookは、2023年8月15日から9月15日の間に1,325名のCEOを対象に実施され、CEOの考え方、戦略、戦術立案について独自の洞察を提供しています。

      調査対象企業の年間売上高は5億米ドル超であり、うち3分の1が年間売上高100億米ドルを超えています。調査対象は、11の市場(オーストラリア、カナダ、中国、フランス、ドイツ、インド、イタリア、日本、スペイン、英国、米国)の11の主要産業分野(資産管理、自動車、銀行、消費者・小売、エネルギー、インフラ、保険、ライフサイエンス、製造、テクノロジー、通信)の企業経営者となっています。

      注:四捨五入の関係で一部の数値の合計が100%にならない場合があります。

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