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      IFRSのヒント

      IFRSの適用現場から、実務のつれづれを語ります。


      1. はじめに

      新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行拡大は、ソーシャル・ディスタンスの確保や3密の回避、テレワークや時差出勤といった「新しい生活様式」への変化だけでなく、休業や外出自粛による消費の減少などビジネスにも大きな影響を与えています。

      たとえば、新型コロナウイルス感染症に関連してこんな状況は生じていないでしょうか?

      • お客様の信用状況が悪化していそうだ。期日までに入金されるだろうか…(債権の評価)
      • お客様の数が大分減っているなぁ。もしかすると、この商品はもう売れないかもしれない(棚卸資産の評価減)
      • この情勢下で買っていただいているなじみのお客さんに、追加のキックバックを提供したい(変動対価の見直し)
      • このままでは予定通り工事を進めるのが難しそうだ。追加の人員を確保しよう。(収益見積りの見直し)
      • 遅延に係るペナルティが発生するかもしれないけれど、お客様と工事完成期日の延期を相談できないだろうか(損失を生じさせる不利な契約)
      • 経営資源を集中するために、採算性の低い店舗の閉鎖を検討した方がよさそうだ。配置転換ができなければ、人員削減も検討しなければならないかもしれない…(リストラクチャリング引当金の認識)
      • コロナに関連して、補助金をもらったけど、どのように会計処理すればよいだろうか(補助金の性質と認識)

      上記のようなお悩みは、企業の会計及び開示に対して重要な影響を及ぼす可能性があります。この点、KPMGでは、IFRS適用企業の経営者及び経理担当者のみなさまに向けて、新型コロナウイルス感染症に係る論点別の解説記事を随時公表しています。

      この記事では、上記のうち「債権の評価」及び「棚卸資産の評価減」等の収益サイクルに関連する資産をご紹介します。もしかすると、以下にみなさまのお悩みを解決するヒントがあるかもしれません。


      2. 収益認識に対する影響

      IFRS適用企業は、リース等特定の取引を除き、IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」に規定される5ステップ((1)契約の識別、(2)履行義務の識別、(3)取引価格の算定、(4)履行義務への取引価格の配分、(5)履行義務の充足による収益認識)に基づき収益を認識します。ここで、新型コロナウイルス感染症は、収益を認識する時期及び金額に対して以下のような影響を及ぼす可能性があります。


      (1)収益サイクルに関連する資産(債権、契約資産、棚卸資産、資産計上した契約コストなど)の評価

      債権及び契約資産
      IFRS適用企業は、債権及び契約資産を、IFRS第9号「金融資産」に従い、予想信用モデルに基づいて評価する必要があります。具体的には、当初認識以降の信用リスクの著し増大を示す、利用可能な合理的かつ裏付け可能な情報等を考慮する必要があります。

      債権及び契約資産について減損損失を認識する場合、顧客との契約からの収益とは相殺せず、その他の契約からの減損損失とも区分して、当該減損損失を開示する必要があります。

      棚卸資産
      IFRS適用企業は、IAS第2号「棚卸資産」に従って、棚卸資産を原価と正味実現可能価額のいずれか低い方で測定します。正味実現可能価額とは、通常の事業の過程における見積売価から、完成までに要する原価及び販売コストの見積額を控除した額をいいます。市況の変化により、商品の販売可能性や見積売価を見直す必要が生じたり、「原料コストや労務費の増加により、見積原価が20%も高くなった…」というような状況が生じたりするような場合は、正味実現可能価額の算定に影響を与える可能性があります。また、報告期間後に発生した事象であっても、期末時点で既に存在していた状況であると確認した範囲について、見積りの考慮に入れる必要があります。

      資産計上した契約コスト
      契約を獲得または履行するためのコストは、IFRS第15号に従って、将来回収されると見込まれる場合のみ資産計上され、関連する財またはサービスの移転パターンと整合する規則的な方法で償却されます。この点、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、顧客の契約更新の予想や長期プロジェクトの完成時期の予想が変更される場合、IAS第8号「会計方針、会計上の見積りの変更及び誤謬」に従って、会計上の見積りの変更として将来に向かって償却期間を変更する必要がないかを慎重に検討する必要があります。

      また、資産計上した契約コストは、IFRS第15号に従って減損していないかどうかを評価する必要があります。例えば、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、顧客の信用リスクが増加したり、予想される対価の額について見直す必要が生じるような場合(顧客が契約更新を行うかどうかや、追加の財またはサービスの購入を行うかどうかの予想が修正される場合)などが考えられます。なお、IFRS適用企業は、資産計上された契約コストについて、報告期間中に認識した償却費に加え、該当がある場合は減損損失の金額も開示する必要があります。

      「IFRS適用企業に対するCOVID-19の影響 - 収益サイクルの資産は回収可能か?」をご参照ください。


      3. 新型コロナウイルスに関連するその他の論点

      新型コロナウイルス感染症に係る解説(収益認識及び引当金に関連する論点)として、KPMGでは以下の記事をご紹介しています。「債権の評価」及び「棚卸資産の評価減」等の収益サイクルに関連する資産以外の論点については、以下をご参照ください。


      執筆者

      有限責任 あずさ監査法人
      会計プラクティス部
      シニアマネジャー 島田 謡子
      マネジャー 北村 智子



      国際会計基準審議会(IASB)が公表しているIFRS®会計基準や、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が公表しているIFRS®サステナビリティ開示基準、また、IFRS解釈指針委員会に関する情報などを文書や動画で解説します。

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