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      Question

      平均残存勤務期間が再検討され短縮または延長された場合、どのような点に留意する必要があるか?

      Answer

      1.平均残存勤務期間が大きく増減した場合には、費用処理年数を再検討する。
      2.定額法採用の場合と定率法採用の場合とで対応が異なる。

      解説

      1.平均残存勤務期間を再検討するときとは

      一度採用した費用処理年数を変更する場合には合理的な理由が必要となるが、平均残存勤務期間を費用処理年数として採用している場合で、リストラクチャリングによる従業員の大量退職などにより平均残存勤務期間の再検討を行った結果、平均残存勤務期間が短縮又は延長したことにより、再検討後の年数が従来の費用処理年数を下回るまたは上回ることとなったときには、費用処理期間を短縮又は延長する(適用指針40項)。また、平均残存勤務期間以内の一定の年数とする方法を採用している場合で、同様の理由により、平均残存勤務期間が費用処理年数より短くなった場合についても費用処理年数を変更する。

      また、適用指針38項では、従業員の年齢構成が大きく変化した場合や企業年金制度において財政再計算時の計算基礎を見直した場合には、平均残存勤務期間についても見直しの要否を検討しなければならないとしているため、このような場合についても、費用処理年数の短縮や延長が必要になる。
      ここで、費用処理方法に(A)定額法を採用している場合と(B)定率法を採用している場合とで対応が違ってくるため、個別に解説する。

      2.定額法採用の場合

      定額法を採用している場合は、さらに(1)平均残存勤務期間が短縮した場合と(2)平均残存勤務期間が延長した場合とで状況が変わってくるため、個別に解説する。

      (1)平均残存勤務期間が再検討されて短縮した場合

      平均残存勤務期間を再計算した結果、平均残存勤務期間が短くなり、過去に採用してきた費用処理年数を下回ってしまった場合には、費用処理年数を新たな平均残存勤務期間以内に設定し直す必要がある。

      費用処理方法として定額法を採用して、発生年度別に数理計算上の差異および過去勤務費用を管理・費用処理している場合は、当年度以降発生する数理計算上の差異および過去勤務費用に対する費用処理年数については、新たに採用した費用処理年数を使用し、未認識数理計算上の差異および過去勤務費用の期首残高は「短縮後の平均残存勤務期間 - 既経過期間」にわたって費用処理する。(適用指針第40項(1))

      なお、適用指針第40項(1)によれば、「短縮後の平均残存勤務期間 - 既経過期間」がゼロまたはマイナスとなる場合は、当期に残高のすべてを一括して費用処理する、とされている。具体例については、以下に図で示す。

      図:平均残存勤務期間が再検討されて短縮した場合の費用処理額(定額法採用の場合)
       経過年数
      数理計算上の差異発生額1年2年3年4年5年
      1年目(100の数理計算上の差異が発生)101026.726.726.7
      2年目(100の数理計算上の差異が発生) 1022.522.522.5
      3年目(100の数理計算上の差異が発生)  202020
      4年目(100の数理計算上の差異が発生)   2020
      5年目(100の数理計算上の差異が発生)    20
      費用処理額合計102069.289.2109.2

      この例では、毎期100の数理計算上の差異が発生していることとし、1年目および2年目の費用処理年数が10年であったときに、3年目に平均残存勤務期間が再検討されて5年に短縮された結果、費用処理年数として5年を採用した場合を想定している。

      ここで、1年目に発生した数理計算上の差異100についてみてみると、当初、費用処理年数を10年で計算し、毎年の費用処理額は10(100÷10=10)としていたが、2年経過して未認識数理計算上の差異が80となった時点で、費用処理年数が5年に短縮した結果、未認識数理計算上の差異を「短縮後の平均残存勤務期間 - 既経過期間」、すなわち3年で費用処理しなければならなくなったため、3年以降は新たな費用処理額が26.7(80÷3=26.7)となっている。2年目に発生した数理計算上の差異についても同様である(90÷4=22.5)。3年目以降に発生した数理計算上の差異については、費用処理年数はすでに5年に短縮しているので、毎年の費用処理額は20(100÷5=20)となる。

      (2)平均残存勤務期間が再検討されて延長した場合

      平均残存勤務期間を再計算した結果、平均残存勤務期間が延長し、過去に採用してきた費用処理年数を上回った場合で、かつ費用処理年数を延長させた場合には、未認識数理計算上の差異および過去勤務費用の期首残高については、変更前の平均残存勤務期間にもとづく費用処理年数を継続して適用し、変更後の費用処理年数は当年度発生の数理計算上の差異および過去勤務費用から適用する(適用指針第40項(3))。具体例については、以下に図で示す。

      図:平均残存勤務期間が再検討されて延長した場合の費用処理額(定額法採用の場合)

       

       経過年数
      数理計算上の差異発生額1年2年3年4年5年
      1年目(100の数理計算上の差異が発生)1010101010
      2年目(100の数理計算上の差異が発生) 10101010
      3年目(100の数理計算上の差異が発生)  555
      4年目(100の数理計算上の差異が発生)   55
      5年目(100の数理計算上の差異が発生)    5
      費用処理額合計1020253035


      この例では、毎期100の数理計算上の差異が発生していることとし、1年目および2年目の費用処理年数が10年であったときに、3年目に平均残存勤務期間が再検討されて20年に延長した結果、費用処理年数として20年を採用した場合を想定している。

      ここで、1年目に発生した数理計算上の差異100についてみてみると、当初、費用処理年数を10年で計算し、毎年の費用処理額は10(100÷10=10)としており、2年経過して費用処理年数が20年に延長したが、過年度に発生した数理計算上の差異については費用処理年数を変更しないため、経過3年以降も、毎年の費用処理額は変わらない結果となっている。2年目に発生した数理計算上の差異についても同様である。3年目以降に発生した数理計算上の差異については、費用処理年数はすでに20年に延長しているので、毎年の費用処理額は5(100÷20=5)となる。

      3.定率法採用の場合

      定率法を採用している場合も、(1)平均残存勤務期間が短縮した場合と(2)平均残存勤務期間が延長した場合とで状況が変わってくるため、個別に解説する。
       

      (1)平均残存勤務期間が再検討されて短縮した場合

      定額法採用の場合は「短縮後の平均残存勤務期間 - 既経過期間」で未認識数理計算上の差異および過去勤務費用の期首残高を費用償却することになるが、定率法採用で発生年度によらず数理計算上の差異および過去勤務費用を一括管理している場合には、発生年度別に数理計算上の差異および過去勤務費用の「既経過期間」を管理していないので、そのような計算は不可能である。

      適用指針第40項(2)によれば、未認識数理計算上の差異および過去勤務費用の期首残高に、短縮後の費用処理年数にもとづく定率を乗じた額を費用処理する、とされている。

      その理由は、償却されていく過年度分の数理計算上の差異および過去勤務費用の残高に対して、将来的に発生する数理計算上の差異および過去勤務費用の残高の割合が相対的に高まっていくため、「将来的にウェイトの大きくなる部分=将来的に発生する数理計算上の差異および過去勤務費用に基づく定率」を採用したほうがよいと考えられるからである。
       

      (2)平均残存勤務期間が再検討されて延長した場合

      平均残存勤務期間が再検討されて延長した場合には、定額法と同様に、未認識数理計算上の差異および過去勤務費用の期首残高については、変更前の平均残存勤務期間にもとづく費用処理年数を継続して適用し、変更後の費用処理年数は当年度発生の数理計算上の差異および過去勤務費用から適用する(適用指針第40項(3))。

      執筆者

      有限責任 あずさ監査法人
      金融アドバイザリー部
      シニアマネージャー 普照 岳

      ※本ページは、書籍『Q&A 退職給付会計の実務ガイド(第2版)』(2013年12月発行)から一部の内容を取り上げてウェブ版としてアップデートしたもので、記載内容はページ公開(2019年5月)時点の情報です。

      普照 岳

      金融アドバイザリー事業部 ディレクター

      あずさ監査法人


      『Q&A 退職給付会計の実務ガイド(第2版)』(2013年12月発行)から、質問と回答の一部をピックアップしました。

      広範な分野をカバーする専門チームを組織し、退職給付制度に係わる問題を経営の視点から俯瞰する統合的・横断的なサービスを提供します。

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