腐敗・贈収賄防止は、SDGs(持続可能な開発目標)や国連グローバルコンパクトでも言及される、重要な社会的課題であり、企業において贈収賄防止に向けた体制・取組みは必須テーマです。
贈収賄規制は、米国・英国等による域外適用により、国内外の事業活動が広く適用対象となり、また、10億USドルを超える巨額の制裁金を科される事例が発生するなど、制裁金の高額化も顕著です。ESG投融資においても、腐敗・贈収賄防止に向けた取組状況は考慮されることが多く、自社への投融資にも影響します。
一方で、国際NGOのトランスペアレンシー・インターナショナルの公表する腐敗認識指数(CPI)によれば、日系企業が積極的に海外展開を進める国・地域において、依然として腐敗・贈収賄リスクの高いところは少なくありません。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)などのパンデミック下においては、公共調達や助成金などに関する贈収賄リスクの増加も指摘されています。
KPMGでは、このような腐敗・贈収賄リスクを適切に対応するための体制の構築から、違反の予防・発見・対処に向けた取組みの整備を支援します。
米国のFCPA(Foreign Corrupt Practices Act:海外腐敗行為防止法)
米国における外国公務員贈賄規制であり、米国外における活動についても一定の要件の下(米国領域内で行為の一部を実施した場合等)で適用され得る点(域外適用)、10億USドルを超える制裁金など、高額な制裁が科され得る点などが特徴である。
英国Bribery Act(UK Bribery Act)
英国における贈収賄防止法であり、米国FCPAと同様に、域外適用がなされる。UKBAの特徴として、贈賄行為を行ったことだけではなく、贈賄行為の防止措置を講じなかったことを処罰する贈賄防止措置懈怠罪が存在すること、民間人に対する贈賄(いわゆる商業賄賂)も規制対象であること、高額な制裁金が科され得る点が挙げられる。
コンプライアンスガイダンス・原則
腐敗・贈収賄リスクへの対応策として、米国、英国などの当局コンプライアンスガイダンスを踏まえたコンプライアンスプログラムを構築することが肝要です。そうした体制を築くことにより、リスクの発生を防止する効果はもちろん、万一、贈収賄が発生しても、制裁金の減免につながる可能性があります。ガイダンスの中でも、域外適用がされ、執行が活発な米国および英国の当局コンプライアンスガイダンスは重要です。
米国FCPAに関しては、2020年7月に、A Resource Guide to the U.S. Foreign Corrupt Practices Act(米国FCPAリソースガイド)が改訂されており、有効なコンプライアンスプログラムとして、「不正行為の調査、分析および救済」に関する記述が追加された点が注目されます。また、米国司法省によるFCPA Corporate Enforcement Policy(2019年改訂)では、違反時の自主的な申告、捜査への全面協力、適時・適切な改善措置が訴追判断に影響を及ぼすことが明示されています。
英国Bribery Actにおいては、贈賄防止措置懈怠罪の成否に関して、贈賄行為を防止するための適正な手続(adequate procedures)を講じているか否かが問題となります。英国Bribery Actの解釈・執行の指針であるThe Bribery Act 2010-Guidance(英国Bribery Actガイダンス)では、6つの原則を踏まえた贈収賄防止プログラムの構築がなされているか否かを問われており、これらの原則を踏まえた贈収賄防止体制・取組みの推進が必要です。
【関連原則・ガイダンス例】
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【海外当局コンプライアンスガイダンス例】
米国FCPAリソースガイド | 英国Bribery Actガイダンス |
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贈収賄以外のコンプライアンスリスク対応への応用・連携
腐敗・贈収賄リスクはグローバルコンプライアンスリスクの中心テーマとして捉え、腐敗・贈収賄防止体制を念頭に置きつつ、グローバルコンプライアンス体制の基盤を構築されるケースが少なくありません。上記の各国当局コンプライアンスガイダンスで要求されるコンプライアンスプログラムの視点は、贈収賄以外のコンプライアンスリスク対応にも当てはまることが多いため、共通的に対応できる部分について、効率的な対応をすることが肝要です。この点に関して、例えば、贈収賄と人権侵害リスクへの対応に関する相互連携の重要性や進め方を解説するガイダンスも公表されています(例として、BIAC(Business at OECD)およびIOE(International Organization of Employers)から公表された、企業向けガイダンス”Connecting the anti-corruption and human rights agendas”)。
KPMGの支援事項
国内外の動向を踏まえて、腐敗・贈収賄リスクの適切な管理を実現するために、KPMGでは、腐敗・贈収賄防止体制・取組みの強化・効率化を支援します。
機能:体制
支援事項例 | ポイント例 | |
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贈収賄防止体制の機能設計 | ・法務・コンプライアンス、調達、財務・経理、CSR等の各部門との連携を踏まえた贈収賄防止体制の設計 ・各組織の管理部署等の役割・責任の設計および機能改善 |
・現状のリスク評価プロセスや関連部門(調達、財務・経理、CSR等)の機能を踏まえた、関連部署間の役割分担 ・リスク管理/コンプライアンス委員会等、各種委員会との機能整理 |
機能:予防的統制
支援事項例 | ポイント例 | |
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贈収賄防止プロセス・ルールの整備 | ・贈収賄防止方針・基本規程、接待・贈答規程類などの関連文書の策定 ・海外拠点向け贈収賄防止ガイドブックの作成 ・不当要求への対応ガイドラインの策定 |
・贈収賄規制の要求事項の反映 ・関連規程類の整合 ・医療従事者との適切な関係確保にかかわるプロセス・ルールとの整合(医薬品・医療機器業界) |
贈収賄リスクアセスメント(規制調査) | ・贈収賄規制の調査 ・贈収賄規制リスクの評価 ・贈収賄防止体制の脆弱性・課題の抽出 ・リスク低減策の立案 |
・贈収賄リスクの高い国・地域におけるビジネススキーム・規模、公共案件 ・COVID-19下で変化したビジネスモデルに対応したリスクの特定 |
デューデリジェンス(DD)の実施 | ・第三者に対する贈収賄DDプロセス・ツールの導入 ・M&Aにおける贈収賄DDプロセス・ツールの導入 |
・リスクアセスメントと連動したプロセスの設計 ・DD結果と継続的なモニタリングが連動したプロセスの設計 |
教育計画の策定・実施 | ・教育計画の策定、各教育コンテンツの作成・実施 ・教育効果の測定 |
・子会社の拠点地域や業態ごとのリスクを踏まえた教育コンテンツの作成 ・教育プラットフォーム |
機能:発見的統制
支援事項例 | ポイント例 | |
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モニタリング | ・贈収賄関連ルールの遵守状況の監査 ・データアナリティクスに基づく贈収賄関連ルールの遵守確認(接待・贈答・無償供与等) ・リモート監査の設計・実施 |
・サードパーティリスクを踏まえたモニタリングテーマ・対象取引・拠点の選定 ・リモートワーク環境下におけるデータアナリティクス、リモート監査手法の活用 |
レポーティング | ・内部通報体制の設計 ・通報受付から処理に至るまでの具体的な業務の整理、ガイドラインの策定 ・社内リニエンシー制度の導入 |
・贈収賄関連事案のスキーム例、対応ポイントの整理 |
機能:対処
支援事項例 | ポイント例 | |
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クライシス・インシデント対応 | ・贈収賄の懸念に対する調査にかかわるPMO ・贈収賄リスクシナリオに関するクライシス対応マニュアルの作成 ・贈収賄リスクシナリオにかかわるシミュレーション ・再発防止策(体制・取組み)の策定・実行 |
・再発防止に向けた短中長期計画の策定 ・再発防止策実施における目標の設定・管理支援 |