競争法に関する違反は、課徴金や企業名公表といった制裁にとどまらず、レピュテーション低下や取引停止など企業経営に深刻な影響を及ぼすリスクを伴います。
KPMGは、競争法に関する専門的知見とデジタル技術等を組み合わせて、企業が違反リスクを未然に検知し適切に対応するための内部監査を支援します。
競争法違反リスクの高まりと事前対応の重要性
近年、公正取引委員会による独占禁止法違反の法的措置件数および課徴金総額は依然として高水準を維持しており、重大事案においては排除措置命令・課徴金納付命令が発出され、課徴金額は数億円規模に達することが通例となっています。また、行政制裁にとどまらず、民事訴訟による損害賠償責任を伴う例も散見され、企業は「行政リスク」と「民事リスク」の双方を負う状況にあります。
下請法※の違反においても、勧告と併せて原状回復命令が下され、違反事業者名が公表されることで、企業の信用失墜や取引停止といった重大な経営リスクが生じています。平時におけるリスク顕在化前の発見、迅速な是正措置および利害関係者への説明責任を果たせる体制整備が、企業にとって急務となっています。
内部監査の有用性
カルテル・談合のような重大な独占禁止法違反では、課徴金減免措置であるリニエンシー制度が用意されていますが、適用を受けるにはほかに先立つ申請が必要です。さらに、下請法違反も企業名公表や原状回復命令といった深刻な影響を及ぼすため、違反の発見と即応が求められます。
内部監査を通じ、競争法関係の社内プロセスにおけるリスクの統制状況を確認することで、リスクや違反の可能性を早期に把握することができます。これにより効果的な自己申告や是正措置が可能となり、企業の法的・財務的ダメージを最小限に抑えることができます。
競争法内部監査の課題
独占禁止法や下請法等の競争法は独立した規範も多くあり、見るべき帳票や判断の基準も異なることから、適切な統制状況を実現するには専門的知見が重要となります。また、その内部監査の設計にあたっては、意図的に隠蔽される可能性を考慮するとともに、競争法特有の制度であるリニエンシー制度の活用までも想定した制度設計をする必要があります。加えて、個別の法ごとの特徴もあり、たとえば下請法においては、改正法による適用範囲の拡大を踏まえたスコーピング、膨大な購買取引のなかからの運用評価における的確なサンプリングなどが課題となります。
法令(例) | 監査の課題(例) |
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独占禁止法 | 競争法違反防止ルールの妥当性検証 (共有が認められる情報の範囲、外部接触時の記録の取り方、関係者への協力要請・周知) |
意図的な談合・カルテルの検出 | |
下請法 | 改正法への対応(従業員基準の導入、運送委託への適用など) |
大量の購買取引のなかからの、違反が疑われる取引の抽出 | |
コスト削減手法として意図的であったり、無自覚であったりする違反行為の検出 |
KPMGの支援
競争法内部監査のコソース・アウトソースを提供します。また以下を通じ、違反による行政処分・レピュテーション低下のリスクを下げることで、企業価値の向上に貢献します。
1.競争法の専門家の関与
リスク評価・監査計画の策定において、独占禁止法・下請法をはじめとした競争法に精通する専門家が関与します。違反が疑われる取引を検出した場合は、自主申告制度の適用の判断についても支援します。
2.デジタル技術を活用した違反が疑われる取引の抽出
競合他社との間で不審な情報交換を行う可能性がないか、メール解析等を行います。下請法の運用評価においては、シナリオ分析を活用したデータ抽出により、大量の購買取引のなかから、違反が疑われる取引を抽出します。
3.アンケートを活用した取引先への実態調査
下請法違反の実態について、取引先にアンケート調査を行います。依頼元に社名を明かさないことを条件に、取引先から「本音」を引き出しやすくします。これにより、隠蔽や無自覚による違反行為の検出が期待できます。
4.監査結果を踏まえた支援
改善への取組みの主体となる2線、1線に対して、専門知識を活かした改善策の提案・実行支援をします。また指摘事項への改善のみならず、継続的なモニタリング体制の構築も支援します。
※本サービスにおいて、「独占禁止法」は「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」、「下請法」は「下請代金支払遅延等防止法」および「下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準」等の改正法(「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(取適法)」)を含む法令を指しています。