近年の社会環境変化により、製品ライフサイクルの短縮化や開発サイクルの高速化、製品の多様化が進んでおり、製品の設計からそれらが製造を経て世に出るまでのリードタイムの短縮が求められています。その動きに対応するためにはエンジニアリングチェーン(EC)領域とサプライチェーン(SC)領域の両面での改革が必要になります。

KPMGは、生産シミュレーションをイネーブラーとして活用し、製造領域の課題に対する解決策の効果を定性・定量的に検証します。そして実効性の高い解決策を短期間で立案することにより、意思決定プロセスの変革を支援します。

ものづくりにおける対応力強化の鍵となる業務プロセスを取り巻く課題

製造業を取り巻く変化に対応する力を強化していくためには、ECとSCの接点である工程設計/生産準備や生産計画/製造の領域において、確かな情報を基にした迅速な経営判断が重要です。

しかしこれら生産活動の中心となる業務は依然として担当者のスキルに依存する割合が高く、市場対応スピードが頭打ちとなっています。また工場全体を俯瞰してパフォーマンスを適切に評価することができず、判断材料が不十分なままでしばしば意思決定が行われます。

生産シミュレーションによる製造領域の意思決定プロセス変革支援_図表1

【業務プロセスを取り巻く課題】

生産シミュレーションによる製造領域の意思決定プロセス変革支援_図表2
工程設計
  • 製品ライフサイクルが短くなってきており、従来の試作量産プロセスを踏襲したままでは対応が難しい。
  • 担当者間の認識齟齬や制約の考慮漏れによる手戻りが発生し、立ち上げ期間が長期化するうえに品質を維持できない。
  • 実際に立ち上げないと見えない課題や工程間の干渉等が事前に検知できない。
工程改善
  • 表計算ソフトを利用した簡易な検討に留まっており、検証できる仮説の数にも限界がある。
  • どの程度の改善効果が見込めるかを正確に見積もることができない。
  • 顧客や製造現場からの改善提案を工程設計に織り込めていない。
生産計画
  • 担当者の勘と経験に頼った計画立案が常態化しており、業務が属人的になっている。
  • 多様な品種をさまざまな異なる設備によって生産することで工場が複雑化すればするほど、計画と実績の乖離が大きくなる。
原価管理
  • 製品別の原価が把握できていないため、収益性の高低で製品を分類できない。
  • 原価構成と生産活動との紐づきが明確化されておらず、コスト観点で何を検討してよいかわからない。
  • 製造後の仕損などの費用がフィードバックできておらず、改善の方向性を検討できない。

生産シミュレーションを活用した製造領域における意思決定プロセス

製造業の生産や物流の現場では、設備や人をはじめとしたさまざまなリソースが複雑に配置され、それらの能力や動線が影響し合いながら日々の生産業務が行われています。これら現場を構成する情報がデジタル化されているケースは少なく、工場の拡大や生産性向上の検討においては、担当者の勘と経験が頼りにされ、客観性を欠き、不十分な判断材料をもとに経営判断を迫られることがしばしばあります。

生産シミュレーションにおいては、生産リソースの配置、工程順序などの情報を基にサイバー空間に現場をデジタルモデル化し、多様なパラメータを変更してシミュレーションを実行します。シミュレーションから出力される複数の指標を組み合わせた分析を行うことで改善施策の効果を定量的かつ客観的に検証し、最も効果的な結果を得られるよう意思決定を支援します。

生産シミュレーションによる製造領域の意思決定プロセス変革支援_図表3

生産シミュレーションによる課題解決の具体的なアプローチ

生産シミュレーションを活用した課題解決は、(1)課題分析/仮説設定(2)仮説検証(3)意思決定/実行計画策定というアプローチで推進します。

まずは手元にある稼働率、歩留まり、リードタイム等の生産パフォーマンスに関する情報を整理・分析、課題を洗い出し、その打ち手を仮説ベースで立案します。それら仮説の検証のため、生産シミュレーションツールを用いてサイバー空間に再現した生産工程について、立てた仮説に基づいて生産条件を変更してシミュレーションを実行します。シミュレーションから得られる定量情報から実現性や改善効果を評価し、打ち手の優先度を決定して、優先度が高いものから実行計画を立てて推進します。

生産シミュレーションによる製造領域の意思決定プロセス変革支援_図表4

製造領域のさまざまなテーマにおける生産シミュレーション活用事例

製造領域が抱える課題について、生産シミュレーションを用いてパフォーマンスを評価・検証した事例です。各評価指標を定量的に提示、さらにそれらを金額換算して製造コストへの影響を明確化することで、確実な意思決定を可能とします。

(1)生産リードタイムやスループットの試算

納期短縮の要求、デマンドの増加、製品の多様化等に対応するため、工場にかかわる変更や投資について判断を求められます。しかしリードタイムやスループット等の生産パフォーマンスの試算は表計算ソフトなどを使用した簡易な手段に留まっており、さらに複数設備で構成される複雑な工場では工場全体の最適化検討が困難です。生産シミュレーションの利用により、工場全体の活動が俯瞰で可視化され、オペレーションの変更や設備の増設等の施策の効果も定量的に評価できます。

生産シミュレーションによる製造領域の意思決定プロセス変革支援_図表5

(2)工場全体のキャパシティや個別設備ごとの稼働状況の評価

量産工場においては、機械やそれらを操作する作業員の稼働率を最大化するためのムリやムラの無い工程設計や生産計画立案が必要です。しかし工場の構成が複雑になるほど、キャパシティや稼働状況を試算することは困難です。生産シミュレーションにより、機械の稼働状態を個別に計算することができます。機械や人の稼働と待機の時間が明確になることで、生産ライン間の負荷平準化や新製品投入の影響等の多様なテーマの検証が可能となります。

生産シミュレーションによる製造領域の意思決定プロセス変革支援_図表6

(3)人的リソースの配置や育成プランの検討

製造現場において、最小限のリソースで最大限のアウトプットを生み出せるよう、管理者は現場に配置する作業員の人数や習得すべきスキルを検討し、採用や育成の計画を立てます。作業員数やスキル配置について複数条件でシミュレーションを実行することにより、最適な人員配置を検討できます。作業員の育成には多大な時間と労力を要するにもかかわらず、改善後の効果が事前に見えづらい傾向にあります。生産シミュレーションにより改善効果を定量的に事前に見積もることができ、最大の効果を見込んだ過不足ない育成プランを立てることができます。

生産シミュレーションによる製造領域の意思決定プロセス変革支援_図表7

(4)現場オペレーション変更によるコスト改善効果の検証

生産設備や人的リソースのみならず、現場の作業手順やルール等のオペレーションのデザインも工場のパフォーマンスに大きく影響します。たとえば量産工場においてロットサイズは、コスト管理、在庫管理、工程管理等の観点で最適化が求められますが、生産シミュレーションにより、ロットサイズに応じた設備ごとの段取りの発生頻度や待機時間を計算できます。また、場内の作業性を考慮した各設備や作業場所のレイアウトの影響もシミュレーション可能です。

生産シミュレーションによる製造領域の意思決定プロセス変革支援_図表8

KPMGによる支援

KPMGでは、生産シミュレーションをイネーブラーとすることで、生産現場の課題解決における属人的および感覚的な意思決定を脱し、デジタルデータに基づいて迅速かつ正確に判断するプロセスづくりを支援します。現状分析から打ち手の実行計画策定までを、仮説の改善効果を可視化しながら短期間で推進します。

具体的には、生産工程のモデル化に必要な情報収集と仮説立案、サイバー空間におけるシミュレーションモデルの構築、生産シミュレーションの実行およびシミュレーション結果の分析、そしてシミュレーションから導き出される課題解決のための打ち手について、実現性の高い実行計画策定を支援することで工場のパフォーマンス向上を推進します。

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