世界中の企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組み、「デジタルディスラプション(デジタルによる既存産業の破壊)」が起こるなか、日本の産官学も近年、抜本的なデジタル改革の遂行を戦略上の最重要事項として掲げています。
KPMGは、「DXの安定的な立上げ、停滞からの脱却および推進の再加速」に資する、ヒトの意識や行動にフォーカスしたチェンジマネジメントの方法論“DX-Behavioral Change Management(以下、DX-BCM)”により、企業のDX成功に向けた行動変容を支援します。

企業変革の現場が抱える現状

DXを進めるうえでの大きな課題は、経営者・従業員に内包されている自組織特有の文化・慣習・風土に基づいた不文律が足枷となって、当初掲げた変革のビジョンの完遂以前に、DXに取り組むこと自体が目的化してしまうことです。
DXを成功させるためには、業務の変革だけではなく、企業の文化・慣習・風土の変革活動を推進するべく、組織固有の変革の背景に合わせたアプローチとあるべき姿の設計が重要となります。そしてDXプロジェクトの実行メンバーのみならず、企業全体でDXを達成するために有効となるチェンジマネジメントの施策が必須と言えるでしょう。

DX-Behavioral Change Managementとは

DX-Behavioral Change Management(DX-BCM)とは、「DXの安定的な立上げ、停滞からの脱却および推進の再加速」に資する、ヒトにフォーカスしたチェンジマネジメントの方法論です。DX戦略のビジョン、個別DXプロジェクトの実行アプローチと変革のストーリー、および組織の内部環境分析をベースとし、“経営者・従業員の行動変容を促す効果的なトリガー”を見定めたうえで、継続的にチェンジマネジメントを実行します。

DX-BCM実行支援_図表1

DXにおけるチェンジマネジメントの成功要因

DXの推進・実行によって、従業員のなかに変化への期待という動機が生まれ、取組みに対するコミットメントレベルが上昇し、これら活動の受け止め方や行動を変えられた時に成功できたと言えます。ただし、すべての人に対して同じアプローチが効果的とは限りません。ステークホルダーや組織の特性、現在のコミットメントレベルに応じた取組みの内容とアプローチの選択により、メンバーの途中離脱を防ぐことが重要です。

DX-BCM実行支援_図表2

【DXにおけるチェンジマネジメントの重要成功要因】

  • スタート地点と目標レベルの見極め
    DXの取組みに対し、各ステークホルダーと組織/個人のあるべきコミットメントレベルと現在地を評価する
  • 有効なCM手法の選択
    コミットメントレベルに応じたチェンジマネジメント手法を選択する(教育と連携の促進から始まり、具体的な活動に巻き込む)
  • 連続したCMアプローチの設計
    一過的な活動ではなく、行動変容をもたらすための連続したCMアプローチおよび支援組織を設計する

組織に根差した不文律

変革や新しい文化の形成に対する抵抗/障害の要因は通常、組織文化と密接に関連しています。「組織に根差した不文律が変革の推進を阻害している」といった構図とその要因を明らかにすることは、DX-BCM推進において特に意識すべきことと言えます。

DXやITに限らず、過去の業務改革のプロジェクトで発生した典型的な抵抗パターンがあるとすれば、また何らかの取組みでマネジメント層が難色を示すとしたら、そこにはある種の「力学」が存在し、その多くが「組織の不文律」と考えられます。これを明らかにするためには、「モチベーター、イネーブラー、トリガー」となる組織力学の要素を因数分解して分析する必要があります。

DX-BCM実行支援_図表3

・この例の場合の不文律は、「DXの効果によって長時間残業の慣習から逃れ、資格取得学習に充当しようとすることに対する、否定的な文化と同調圧力によってQOLが向上しにくい状況」となりやすい

・従業員へヒアリングを行い、組織の慣習や評価などに関する発言に含まれる単語から、DXの推進を阻む不文律が無いかどうかを、上図の3つの要素分解をすることで確認する

DX推進上の課題とDX-BCMによる解決の方向性

DX-BCMに用いる手法は、DX施策推進における各利害関係者およびグループに求められるコミットメントレベルを特定し、そこに到達するための適切なアプローチを設計することです。内部環境分析を基に、変革を司るステークホルダーマネジメントの課題・リスクへの対応策を特定し、目的達成に資する行動変容を促す活動を継続的に実施します。

DX-BCM実行支援_図表4

ステップ1:DX-BCMテーマの設定
DX-BCMの開始にあたり、企業のミッション・ビジョン、中期経営計画、事業計画を基にDXの戦略テーマを定義・選定し、当該テーマに対する変革メッセージ・ストーリーを策定します。また、ここで策定したメッセージは、変革を推進するリーダー層と共有し、承認を得ます。

ステップ2:DX-BCM分析
DX推進にかかわるステークホルダーは、各企業の業態や文化、組織ごとのデジタル成熟度によって異なります。これを漏らさず広く可視化・分類し、変革による影響とリスクを特定・評価します。

ステップ3:DX-BCMアプローチの設計
DX施策方針の実行主体となる社内のキーパーソンに対しては、DX推進体制への巻き込みを図り、啓発を行います。同時にDXの取組みにかかわる各ステークホルダーに対して、DX-BCMを主導する社内組織であるDX Behavioral Change Management Office(DX-BCMO)がコミュニケーションを継続的に実行するための役割、コミュニケーションマネジメントの手段およびアプローチを設計します。

ステップ4:DX-BCMの実行
DX-BCMを統括する組織体は、DX推進部門を設置のうえ、そのなかの1つの役割として配置します。企業におけるDX推進部門は、一般的に“独立事業部門型”・“企画部門推進型”・“IT部門推進型”のパターンで配置され、それぞれに影響度や権限、メリット・デメリットが存在します。KPMGは、企業特性に応じたDX-BCMの実行を支援します。

DX-BCM実行支援_図表5
DX-BCM実行支援_図表6

お問合せ