1.はじめに

公益通報者保護法は、法令違反や不正の通報者を保護し、組織の不祥事の早期発見・是正を促す枠組みです。内部統制・コンプライアンスの基盤であり、企業には通報窓口や再発防止措置などの整備が求められます。

2025年には、制度の実効性を高める改正法が公布されました。2025年6月11日公布、公布から1年6ヵ月以内の政令により定める日に施行(2026年内施行見込み)とされています。

【2025年に公布された改正法のポイント】

公益通報者保護法改正のポイントと企業に求められる対応_図表1

出所:「公益通報者保護法の一部を改正する法律 概要」(消費者庁)を基にKPMG作成

2.改正だけでない、公益通報者保護法をめぐる議論

改正のみならず、2025年には内部通報制度の運用の不適切さが注目を集め、消費者庁が同年5月22日付で行政機関に対して「対応の徹底」を通知しています※1。企業に対しても、制度の“形” ではなく“運用の実効性” が強く求められている流れと整合しています。

2025年改正にも正当な理由のない公益通報者を特定することを目的とする行為の禁止(第11条の3関係)いわゆる「通報者の探索行為」の防止について改正が行われたものの、規制内容としては踏み込みが見送られた経緯もあり※2、昨今の情勢を鑑みて改めて検討が進む可能性は十分にあります。

3.規制対応の意義とリスク、企業にとっての論点

企業内で内部通報制度の設計・運用を担当する部門にとって、同法への対応が、企業のコンプライアンスリスク低減・早期発見として不可欠なものであることは明確です。実際、ほとんどの企業では、規模にかかわらず内部通報制度の規程や仕組み自体は整えられています。しかし、内部通報を担当する部門の立場から見ると、長い間、社内体制の見直しや改善に踏み出せず、結果として最新のガイドラインとの間にずれが生じたままになっているケースも少なくありません。以下に代表的な例を挙げます。

  • 内部通報を担当する部門で従事者指定が未了
  • 内部通報が匿名では受け付けない仕組み、また、処理の過程で通報者の情報が広く共有されてしまう仕組み
  • 通報への対応が、経営層関与前提で代替経路がなく、経営層が不正・不祥事に関与するケースへの備えがない

2025年改正は、保護対象の拡大と制度妨害・通報者探索の明確禁止、従事者指定義務の実効化を通じ、内部通報制度を「形から機能」へ進める内容です。2026年内施行と昨今の流れを踏まえて、300人超の企業はもちろん、すべての企業で体制・運用の一体見直しを早期に進めるべきだと考えます。

執筆者

KPMGコンサルティング
シニアマネジャー 荒尾 宗明
シニアコンサルタント 柿野 和平

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