「経済安全保障・地政学リスクサーベイ 2025」(速報版)(以下、本調査)は、国内上場企業、および売上400億円以上の未上場企業176社の経営企画・リスク管理部門を対象に、KPMGコンサルティング株式会社とトムソン・ロイター株式会社の共同で実施しました。 

近年、不安定な国際情勢や特定国への過度なサプライチェーン依存への懸念、先端技術の軍事利用などを背景に経済安全保障・地政学リスク分野への対応の重要性が増しています。2024年はさまざまな国・地域で大型選挙が実施され、その後の米国による追加関税の賦課や相互関税の検討など、各国の政策変更が国際関係や市場を揺るがし得るリスクとして浮上しています。

本調査は、企業が注目する経済安全保障・地政学リスクや経営戦略上の対応方針、課題などについて2025年1月7日から2月21日にかけて独自調査し、特に注目される要点を速報版としてまとめています。

※今後、「速報版」に解説などを加えた「経済安全保障・地政学リスクサーベイ2025」を発表する予定です。詳細は追って掲載いたします。

結果の要点

調査の結果、米国新政権の発足や経済安全保障を取り巻く環境の変化に対して、企業が特に注目しているポイントが明らかとなりました。

【米国新政権への企業の反応】

・「中国サプライチェーンの依存度を下げる」企業が27.0%
・米国の「関税引き上げ」次いで「気候変動対策の後退」に懸念
・「AIなど技術分野での米国の規制緩和」に約20%が期待

【経済安保を取り巻く環境の変化】

・インテリジェンス活動を「中長期的な機会/リスク調査」に使う企業が約30%
・前回調査に比べ、「経済安保を経営企画部が担当」する傾向が強まる
・「反ESGが中期経営計画や環境施策に影響」と10%超の企業が回答

エグゼクティブサマリー

(1)懸念される経済安全保障・地政学リスク

米国新政権の政策変更を約66%の企業が懸念 

企業が懸念する経済安保・地政学リスクについて、米国新政権による政策変更が約66%で最多となりました。他にも米国・中国関連のリスクが上位に集まっています。今後1年以内の取組みについては、半数弱の企業がリスク管理体制の整備・見直しと外部環境分析・リスクシナリオ分析と回答しました。

【特に影響が懸念される経済安全保障・地政学リスク】

経済安全保障・地政学リスクサーベイ2025(速報版)_図表1

【今後1年以内に取組みを想定している重点施策】

経済安全保障・地政学リスクサーベイ2025(速報版)_図表2

(2)米国新政権への企業の反応ーサプライチェーンの変化

27.0%の企業が中国の依存度低下を検討

米国新政権発足を受けサプライチェーン依存度低下を検討する国・地域について、中国が27.0%で最多でした。米国政権は中国に高い関税引き上げを表明しており、懸念の高まりがみられます。
依存度を高める地域はインドや東南アジアが上位で、アジア圏内でのサプライチェーン多元化が注目されています。

【サプライチェーンの依存度を下げることを検討している地域】

経済安全保障・地政学リスクサーベイ2025(速報版)_図表3

【サプライチェーンの依存度を高めることを検討している地域】

経済安全保障・地政学リスクサーベイ2025(速報版)_図表3

(3)米国新政権への企業の反応ー関税への警戒

「関税引き上げ」次いで「気候変動対策の後退」を懸念

米国新政権発足で懸念するリスクとして、「関税の引き上げ」と「気候変動対策の変更」が警戒されています。関税強化やEV施策の変更などで、幅広くサプライチェーンが影響を受けるとの受け止めが広がっています。

【米国新政権により懸念するリスク】

経済安全保障・地政学リスクサーベイ2025(速報版)_図表4

(4)米国新政権への企業の反応ー規制緩和への期待

約20%がAIなどの規制緩和と米国内生産の優遇に期待

米国新政権で期待する事業機会のうち、最多はAI、自動運転車を含む技術分野の規制緩和で19.2%でした。トランプ大統領は規制緩和に関心が高く、市場が活性化するとの見立てがあるようです。

【米国新政権により期待する事業機会】

経済安全保障・地政学リスクサーベイ2025(速報版)_図表5

(5)インテリジェンス活動

インテリジェンス活動を中長期的な機会/リスク調査に使う企業が約30%

インテリジェンス活動として最も重視するのが中長期の成長戦略についての機会やリスク調査で、29.8%を占めました。直近の機会やリスクだけでなく、長期的な視点を持とうとする企業の姿勢が垣間見えます。

【インテリジェンス活動で重視する取組み】

経済安全保障・地政学リスクサーベイ2025(速報版)_図表6

(6)経済安全保障の担当部署

前回調査に比べ、経済安保を経営企画部が担当する割合が11.1ポイント増加

経済安全保障を経営企画部署で所掌する企業が前回調査より11.1ポイント増えました。リスクだけでなく、経営戦略の側面からも経済安全保障をとらえようとしている企業が増えていることがうかがえます。

【経済安全保障に関する専門部署の設置状況】

経済安全保障・地政学リスクサーベイ2025(速報版)_図表7

(7)反ESG*

反ESGが環境施策と中長期経営計画に影響と10%超の企業が回答

反ESGが環境施策と中長期経営計画に影響すると懸念する回答が10%超ありました。一定数の企業が反ESGに 関する運動が中長期的に続くと感じて いることがわかります。反ESGへの対応施策として、商品やサービス宣伝でESGを訴えすぎないようにするとの回答が10.5%で最多です。

*ESGに懐疑的な意見・動向で、気候変動施策やDEIなどを批判する立場を取る

【反ESGに関して懸念する影響】

経済安全保障・地政学リスクサーベイ2025(速報版)_図表8

【反ESGに関して必要になる対応】

経済安全保障・地政学リスクサーベイ2025(速報版)_図表10

※今後、「速報版」に解説などを加えた「経済安全保障・地政学リスクサーベイ2025」を発表する予定です。詳細は追って掲載いたします。

※「速報版」の資料は下記よりダウンロードいただけます。

お問合せ