金融庁、重要な契約の開示に関する「企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部改正」等を公表

金融庁は2023年12月22日、重要な契約の開示に関する「企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部改正」等及び「『企業内容等の開示に関する内閣府令』等の改正案に対するパブリックコメントの結果等について」を公表しました。

金融庁は2023年12月22日、重要な契約の開示に関する「企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部改正」等及び「『企業内容等の開示に関する内閣府令』等の改正案に対するパブリックコ…

1.経緯

2022年6月に公表された金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告において、「サステナビリティに関する企業の取組みの開示」、「コーポレートガバナンスに関する開示」等に関して、制度整備を行うべきとの提言がなされました。

2023年1月に、当該提言を踏まえた「企業内容等の開示に関する内閣府令」(以下「開示府令」という)等の改正が行われましたが、「重要な契約」の開示については、投資家の投資判断との関係で各国において開示が求められているが、開示状況に差があるとの指摘に対応するために、引き続き具体的な検討が必要なことから、別途改正を行うとされていました。

これらを踏まえ、金融庁は2023年6月30日に、「企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部改正(案)」、「特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令の一部改正(案)」及び「企業内容等の開示に関する留意事項について(企業内容等開示ガイドライン)」の改正案(以下合わせて「本改正案」という)を公表しました。本改正案は、「重要な契約」に関して開示すべき契約の類型や求められる開示内容を具体的に明らかにするために、有価証券報告書及び有価証券届出書(以下「有価証券報告書等」という)、臨時報告書等の記載事項について改正を行うものです。

その後、金融庁は2023年12月22日に、本改正案に対する意見を踏まえて、「企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部改正」等(以下「本改正」という)及び「『企業内容等の開示に関する内閣府令』等の改正案に対するパブリックコメントの結果等について」を公表しました。

2.本改正の概要

本改正では、主に以下の開示を求めることとされています。なお、本改正案等に対しては140件のコメントが寄せられており、「コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方(企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令)」において、具体的な場面における開示の判断について金融庁の考え方が示されていますので、ご参照ください。

  有価証券報告書等
臨時報告書
企業・株主間のガバナンスに関する合意

提出会社(※1)の株主との間で、以下のガバナンスに影響を及ぼし得る合意を含む契約(重要性の乏しいものを除く)を締結している場合、当該契約の概要、合意の目的、ガバナンスへの影響等(開示府令 第2号様式 記載上の注意(33)f等)

  • 役員候補者指名権の合意
  • 議決権行使内容を拘束する合意
  • 事前承諾事項等に関する合意
-(※2)
企業・株主間の株主保有株式の処分・買増し等に関する合意

提出会社の株主(大量保有報告書を提出した株主)との間で、以下の株主保有株式の処分等に関する合意を含む契約(重要性の乏しいものを除く)を締結している場合、当該契約の概要、合意の目的等(開示府令 第2号様式 記載上の注意(33)g等)

  • 保有株式の譲渡等の禁止・制限の合意
  • 保有株式の買増しの禁止に関する合意
  • 株式の保有比率の維持の合意
  • 契約解消時の保有株式の売渡請求の合意
-(※2)
ローン契約又は社債に付される財務上の特約(※3)

提出会社及び連結子会社が、財務上の特約の付されたローン契約の締結又は社債の発行を行い(※4)、その残高が連結純資産額の10%以上である場合(※5)、当該契約又は社債の概要(契約の相手方の属性、期末残高、弁済期限又は償還期限、担保の内容等)及び財務上の特約の内容(開示府令 第2号様式 記載上の注意(33)h等)

  • 提出会社及び連結子会社が、財務上の特約の付されたローン契約の締結又は社債の発行を行い(※4、6)、その元本又は発行額の総額が連結純資産額の10%以上である場合、当該契約又は社債の概要(契約の相手方の属性、元本の額、弁済期限又は償還期限、担保の内容等)及び財務上の特約の内容(開示府令第19条第2項第12号の2及び第20号)
  • 上記のローン契約又は社債について、弁済期限又は償還期限に変更があった場合や財務上の特約に変更があった場合(※7)、当該変更内容等(開示府令第19条第2項第12号の3及び第21号)
  • 上記の財務上の特約に抵触した場合、財務上の特約の抵触事由等(開示府令第19条第2項第12号の3及び第21号)

(※1)提出会社が持株会社の場合には、その子会社を含む。
(※2)金融庁が2023年12月8日に公表した「令和5年金融商品取引法等改正に係る政令・内閣府令案等の公表について」において、企業・株主間のガバナンスに関する合意の締結・変更及び企業・株主間の株主保有株式の処分・買増し等に関する合意の締結・変更について、臨時報告書の提出事由に追加することが提案されている。
(※3)当該提出会社の財務指標があらかじめ定めた基準を維持することができない事由が生じたことを条件として当該提出会社が期限の利益を喪失する旨の特約に限る。ただし、「特定融資枠契約に関する法律」第2条第1項に規定する特定融資枠契約(コミットメントライン)は含まれない。
(※4)連結グループ内で締結又は発行されたものを除く。
(※5)同種の契約・社債はその負債の額を合算する。
(※6)既に締結している契約や既に発行している社債に新たに財務上の特約が付される場合も含む。
(※7)財務上の特約の変更が、抵触事由及び抵触事由の発生があった場合の効果に照らして軽微なものを除く。

3.施行日・適用時期

本改正に係る開示府令は、2024年4月1日から施行されます。なお、本改正の規定は、以下のとおり適用されます。

有価証券報告書等 臨時報告書

2025年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書等から適用

(ただし、施行日前に締結された契約については、2025年4月1日前に開始する事業年度に係る有価証券報告書等に本改正に係る開示府令を適用する場合、記載を省略する旨を記載することによって代えることが可能(※8))

2025年4月1日以後に提出される臨時報告書から適用

(ただし、財務上の特約に変更があった場合等に係る臨時報告書について、施行日前に締結された契約については、2025年4月1日から2026年3月31日までに提出される臨時報告書では省略可能(※8))

(※8)施行日前に締結された契約の中には、守秘義務等の観点から見直しの必要があるものも含まれ得ることを踏まえて、これらのただし書きが規定されている。

執筆者

あずさ監査法人
会計プラクティス部、開示高度化推進部

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