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調達領域におけるAIの役割が、大きく変わろうとしています。書類作成や検索など人の作業を補助するだけでなく、申請審査や照合、交渉など、AIが自ら業務を実行する段階へと進化しつつあります。一方、AI機能を導入するだけで、調達業務の変革が実現するわけではありません。本記事では、Coupa AIの進化を踏まえ、AIエージェントによって調達業務がどう変わるのか、また、その実現に向けて企業は何を整え、どうAIに仕事を任せていくべきかを解説します。
調達システムは「使う」から「働く」へ
従来の調達業務では、担当者がCoupaなどのシステムを開き、必要な情報を確認しながら、購買申請、承認、発注、請求書照合などの処理を進めていました。業務を進める主体は人であり、担当者が内容を確認したうえで、一つひとつ操作することが前提でした。
AIエージェントの登場によって、この前提が変わり始めています。人がシステムを操作して業務を進めるだけでなく、AIが人を支援し、さらには業務そのものを実行する方向へと役割を広げています。Coupa AIも、こうした変化をAssist(補助)、Advise(助言)、Act(自律実行)の3段階で具体化しています。
Assistは、請求書やレシートの読み取り、契約書からの申請ドラフト作成、ポリシーに関する問い合わせへの回答など、人の作業を支援する段階です。
Adviseでは、ポリシー違反、購買価格と市場価格の差、請求書と登録情報の不一致などを検知し、対応が必要な点を人に知らせます。
Actの段階になると、AIは、設定された権限やルールの範囲で、申請の審査や承認依頼、小口案件の価格交渉、休眠サプライヤーの特定といった処理を進めます。人が目的を伝えると、AIが必要な情報を集め、重要な判断が必要な場面で人に確認を求めるという姿です。
KPMGが開発を進めているAIエージェントは、担当者がAIチャットに必要な品目の手配を依頼すると、AIが在庫状況を確認し、他拠点からの移送と新規発注を組み合わせた調達プランを作成します。さらに、予算、単価、権限、承認条件を確認し、必要な承認を依頼します。人がプランを承認した後は、AIが発注や在庫振替の処理を進め、完了を報告します。
ここで注目したいのは、個々の作業が速くなることだけではありません。在庫確認、購買申請、承認、発注など、従来は別々に行われていた処理をAIがつなぎ、一連の業務として進める点です。調達システムは、人が操作する「使うシステム」から、目的を受けて処理を進める「働くシステム」へと、その役割を広げようとしています。
AIに業務を任せるために、何を整えるべきか
AIエージェントによる調達業務の変化の現れ方は、現場担当者や調達バイヤー、マネジメントなど、立場によって異なります。一方、人の仕事の中心が、処理、照合、督促から、例外判断、分析、交渉、関係構築へ移行していくという点は共通しています。AIに何を任せ、その結果を誰が検証し、最終的な判断を誰が担うのか。人とAIの役割を業務プロセス全体で再設計する必要があります。
その前提となるのが、データと業務ルールの整備です。AIが参照する情報が不正確であれば、AIに任せられる業務は限定されます。
たとえば、同じサプライヤーが部門ごとに異なる名称で登録されている、品目のカテゴリーや契約期間が正しく管理されていない、といった状態では、AIは適切な判断ができません。また、承認条件や例外対応が担当者の経験に依存している場合も、AIが参照すべき基準が明確になりません。
AI導入は、製品選定やPoCから始めるのではなく、まず、どの業務をAIに任せたいのかを明確にすることが重要です。そのうえで、必要なデータ、判断ルール、人による承認条件、例外発生時の対応を整理する。こうした準備が、AIに仕事を任せるための土台となります。
AIに任せる範囲を、どう広げていくか
業務とデータを整えた後も、最初からAIにすべての処理を任せられるわけではありません。AIエージェントの導入は、新しい担当者を育成するプロセスになぞらえて考えることができます。
最初の段階では、AIには提案だけを行わせ、実行は人が担います。人が判断結果を確認し、AIがどのような条件で誤るのか、どのような例外を扱えないのかを把握します。
次に、AIの判断結果を継続的に計測し、誤りを修正しながら精度を高めます。そのうえで、事前に設定した水準に達した領域から、AIに実行を任せる範囲を広げます。標準的でリスクの低い処理はAIが実行し、高額案件や高リスク案件は人が判断するなど、業務ごとの設計が必要です。
求める水準は、業務の性質によって異なります。金額が小さく、後から修正できる業務と、支払いや契約締結のように影響が大きい業務では、必要な精度や承認条件は同じではありません。重要なのは、一律の数値を基準にすることではなく、どこまでAIに任せ、どの条件で人の判断に戻すのかを、業務ごとに決めることです。
AIに任せる範囲が広がれば、調達部門に求められるスキルも変わります。システムの操作や実務手順の習熟に加え、AIへ適切な指示を出す力、結果を検証する力、データから意味を読み解く力が重要になります。成果の捉え方も、削減額や処理件数だけでなく、供給リスクの回避、サプライチェーンの強靱性、事業戦略への貢献などへ広がります。
調達領域におけるAI導入の実現への道筋は、「整える」「育てる」「変える」という3つの言葉に集約できます。業務とデータを整え、精度を見極めながらAIを育て、人の役割と必要なスキルを変える。AI導入を調達変革につなげるためには、この3つを一体で検討することが重要です。
オンデマンドセミナーで、具体的な変化と実現方法を解説
AIエージェントは実際の調達プロセスにどのように組み込まれ、現場担当者、調達バイヤー、マネジメントの仕事をどう変えるのでしょうか。また、自社ではどの業務から検証を始め、AIに任せる範囲をどう広げるべきなのでしょうか。
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オンデマンドセミナーで紹介している主な内容
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執筆・編集
KPMGコンサルティング
シニアマネジャー 安達 貴裕