法制化を扱ったセッションでは、アジアにおける人権・環境デュー・ディリジェンスの義務化に向けた検討状況が共有された。タイでは、対象となる事業者に人権・環境デュー・ディリジェンスを求める「責任ある企業行動促進法案(仮訳)」の策定が進められている※2。2026年9月時点で同法案は検討段階にあり、適用対象、基準および義務の最終的な内容は確定していないものの、フォーラムでは、法案が想定する枠組みとして、方針の公表、負の影響の特定・評価、予防・軽減、ステークホルダーとの協議、救済、実施状況の追跡および情報開示等が紹介された。
インドネシアでは、2023年の大統領規則第60号により「ビジネスと人権に関する国家戦略」が定められ、2026年7月には、企業向けの「人権デュー・ディリジェンス・ガイドライン」が公表された※3。フォーラムでは、人権デュー・ディリジェンスの制度化に加え、中小零細企業を含むサプライチェーン全体の実施能力を高めるため、ガイダンス、教育、技術面・資金面の支援を組み合わせる必要性が議論された。
中国に関連するセッションでは、2026年6月に公表された「国家人権行動計画(2026―2030年)」の第5章「新興人権領域の健全な発展を導く」に、「企業による人権責任の履行促進」が独立した節として設けられ、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に言及するとともに、企業の人権デュー・ディリジェンスに関する意識および能力の向上を掲げていることが紹介された※4。また、セッションでは、今後の推進において、業界団体等がガイドライン整備や能力構築において果たす役割に対する期待が示された。
こうした制度整備や企業への実施支援に加え、関連セッションでは、制度の実効性を確保する観点から、影響を受ける労働者や地域社会の意味のある参加が重要な論点として示された。具体的には、影響を受ける人々が安全に参加できる環境を整え、その声をリスク評価、企業の意思決定および是正・救済に反映することの必要性が指摘された。