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      なぜ今、宇宙が経済安全保障の文脈で重視されているのでしょうか。宇宙は、衛星通信、測位・航法・時刻、衛星リモートセンシング等を通じて、産業活動、行政サービス、国土強靱化・防災を支える基盤インフラとなっています。経済安全保障を強化するには、宇宙技術を「守る」視点と、宇宙システムを活用して経済活動の継続性と競争力を高める「攻め」の視点が重要となっています。



      1.なぜ宇宙×経済安全保障なのか

      地政学リスクや自然災害、サプライチェーンの分断など、企業活動を揺るがす事象が相次ぐなか、衛星データは、物流、通信、金融、防災、環境など幅広い産業を支える基盤的なインフラとなっています。

      各国は宇宙を経済安全保障の中核として位置付け、政策・投資を加速しています。日本においても、宇宙基本計画・工程表等に基づき、関係府省が連携して宇宙安全保障上の利用拡大と、宇宙輸送・技術・産業・人材基盤の強化を推進し、安全保障と産業発展の好循環を形成する方針を明確にしています。宇宙は守るべき産業であると捉えると同時に、経済を強化するための手段として活用することが求められています。

      宇宙分野における経済安全保障の実務で重要となるのは、「依存」の可視化と、デリスキング(de-risking)の設計です。まず特定国依存、単一供給源、代替困難工程(宇宙用部材、製造装置、打上げ・地上局、暗号等)をリスク評価により特定し、そのうえで重要度に応じて冗長化、国内能力の確保、同盟国・同志国との分散調達を組み合わせた供給確保策を設計します。日本においても、人工衛星やロケット部品の供給途絶リスクは課題とされており、「経済安全保障推進法」に基づく安定供給確保の枠組みのもと、人工衛星・ロケット部品は特定重要物資として指定されています。

      2.経済安全保障の要となる宇宙インフラをどう守るか

      宇宙は現在、企業や政府が状況を把握し、判断するための情報の土台となっています。こうした状況を他国に過度に依存した場合、非常時に国や企業の経済活動へ大きな影響が及ぶ可能性があります。宇宙産業の守るべき対象は幅広く、たとえば衛星やロケットといったハードのほか、データを集め分析し、使うことができる形にする仕組みや、それを支える人材・運用ノウハウも含まれます。

      宇宙産業の経済安全保障を強化するうえでは、サプライチェーン強靱化の制度実装は重要な論点の1つです。重要機能や重要工程を見極めたうえで、「国内に維持すべき能力」「同志国・同盟国と分担すべき領域」「商用調達で補完可能な領域」を適切に組み合わせ、供給途絶リスクに対する実効的な分散・冗長化を設計することが求められます。

      日本では「経済安全保障推進法」に基づき、特定重要物資の安定供給確保に関する供給確保計画の認定制度が整備されています。認定事業者に対しては、助成金、ツーステップローン、株式等引受け、信用保証等の支援措置が制度化されており、宇宙分野では人工衛星やロケットの部品が特定重要物資として位置付けられており、安定供給の確保に向けた取組みが進められています。

      また商用サービスの活用が進むなかでは、供給停止や規約変更、サイバー攻撃などへの備えも重要になります。危機時にも利用可能な能力を確保するため、主権的に保持すべき機能と商用で補完する機能を見極めることが求められています。

      3.競争力強化を支える宇宙インフラをどう活用するか

      宇宙は、企業や政府が状況を把握し、判断するための情報の土台であると同時に、経済活動を止めないための兆候把握に不可欠なインフラです。

      たとえば、港の混雑や工場の稼働状況、自然災害の影響など、地上で起きている変化を宇宙から俯瞰的に捉えることで、物流の遅延や供給網の寸断といったリスクの早期察知につなげることができます。主な活用例としては、

      • 海洋監視(不審船・密漁、航路の安全)
      • 災害時緊急観測(被害把握、復旧支援)
      • サプライチェーン監視(港湾混雑、工場稼働、輸送経路)
      • 投資先の政情不安リスク監視(現地の変化を可視化)

      などを挙げることができ、企業は調達ルートの見直しや在庫調整など、先手の対応が可能となります。

      また、関連する企業にとっては技術そのものより、どう使うかという設計が重要となります。調達、在庫、投資判断など、どのような業務で用いるのか、どのタイミングで誰が判断するのか、社内の意思決定プロセスとどう結び付けるのかといった設計が不十分だと、データを十分に生かすことはできません。

      宇宙は、重要な産業・技術基盤として保護すべき対象であると同時に、経済活動と国家機能の継続を支える基盤インフラとして活用すべき対象です。経済安全保障を実効化するうえで、宇宙はリスク低減と競争力強化の双方を下支えします。宇宙を使いこなすことで、企業は変化をいち早く察知し、経済活動を止めないための判断力を高めることができます。

      執筆・編集

      KPMGコンサルティング
      アソシエイトパートナー 涌井 聡一郎
      シニアマネジャー 七森 泰之
      シニアコンサルタント 間野 晃充

      元航空幕僚長 片岡晴彦氏と語る、民間技術や宇宙作戦の展望

      内閣府策定の「宇宙スキル標準」を基に、宇宙産業の成長に必要な人材と組織について、キャリア設計・採用・育成等の実践方法を読み解きます。

      変化する国際情勢やグローバル経済におけるサプライチェーンの依存関係等を背景に重要性を増す、経済安全保障・地政学リスクに備えます。

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      KPMGコンサルティング

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