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      2026年上半期、化学セクターでは戦略的な意義と価値創出余地が明確な案件に資金が集中した。 買い手は案件を厳選し、利益率の持続性、収益の予見性、サプライチェーンの強靭性、事業運営の柔軟性を重視して取引を行った。 2026年下半期も引き続きM&Aは安定的に推移すると考えられるが、バリュエーション規律、案件実行体制、持続的な価値創出力が引き続きM&Aの成否を左右する要素となる。

      Christian Klingbeil

      Partner, Head of Life Sciences & Chemicals, KPMG in Germany


      化学セクターM&A概況


      取引動向

      注:取引金額は小数点以下を切り捨て
      出処:各種M&A資料に基づくKPMG分析(2026年)


      取引件数と取引金額

      出処:各種M&A資料に基づくKPMG分析(2026年)


      業界動向


      事業構造の見直し:2026年上半期の化学セクターにおいては、幅広い事業拡大よりもポートフォリオの変革が重視され、案件を厳選する動きが続きました。

      厳しい市場環境:供給過剰の継続、需要低迷、価格への下押し圧力、地政学的な不透明感を受けて、投資対象を絞り込んだ規律ある資本配分が行われました。

      安定性の重視:投資家は、利益率が安定し、技術的な強みがあり、明確な価値創出が見込める事業を選好し、スペシャリティ事業や景気変動に強い領域に資金を振り向けました。

      ポートフォリオの再構築:企業は非中核事業の売却を継続するとともに、カーブアウトや事業再編を通じて、戦略的に重要な領域への資本再配分を進めました。

      M&Aハイライト


      2026年Q2のM&Aハイライト

      注:(a) 端数処理の関係で構成比合計が100%とならない場合がある


      2026年Q2のM&Aの特徴

      取引動向:2026年上半期のグローバルの化学セクターにおいて、M&A取引件数は前年同期比6%減、取引金額は30%減となりました。戦略面や事業面で明確な意義のある案件に取引が集中しており、投資対象を厳選する傾向が鮮明となりました。

      M&A市場環境:供給過剰、需要低迷、価格への下押し圧力、中国発の供給過剰、地政学的な不透明感により厳しい事業環境が続く中で、買い手は収益の予見性が高く、具体的な価値創出余地のある資産を選好しました。

      企業の動向:戦略的投資家が引き続きM&A市場をけん引し、競争力の強化と戦略の明確化に向けて、ボルトオン買収、ポートフォリオ最適化、拠点の合理化、非中核事業の売却を進めました。

      取引の特徴:大型の事業変革案件よりも、対象を絞り込んだ買収や低リスクの案件が好まれ、引き続き小規模案件が大部分を占めました。 

      スペシャリティケミカルの重視:スペシャリティケミカルや高付加価値領域が選好される一方、汎用化学品関連資産のバリュエーションは一層厳しくなりました。資金が向かった先は、技術的な強みがあり、安定した需要基盤を持つ事業です。

      M&Aハイライト(大型案件)

      地域別取引数および金額

      ※ターゲット企業の国を取引量に基づき青の濃度で分類
      ※前年比は2025年第上半期を基準として算出
      ※前年比「N/A」は取引金額が非公表の案件

      Deal Thermometer

      Deal Thermometer 2026

      Deal Thermometer 2026

      注:(a) Forward P/Eレシオ:2026年の時価総額を2027年の予想純利益で割った数値
      注:(b) 投資余力:2027年の予想ネットデットを予想EBITDAで割った数値
      注:(c) 各四半期末の90%分位を指す


      まとめ


      2026年第2四半期の化学セクターのバリュエーションは、供給過剰や需要回復のばらつき、利益率の低迷が続く中でも、安定した投資家心理に支えられ、概ね横ばいで推移しました。

      スペシャリティケミカルのバリュエーション・マルチプルは、引き続き3つのサブセクターで最も高い水準となりました。販売事業者・その他では上昇幅が最も大きく、基礎化学品・石油化学品も取引環境の安定化に伴い小幅に改善しました。

      KPMGのDeal Thermometerは、化学セクター全体で投資意欲が続くとともに買収余力も高まっており、M&Aに前向きな環境が続くことを示しています。財務面の柔軟性や資金調達余力も改善していることから、2026年末にかけて戦略的なM&Aやポートフォリオ最適化、投資先を絞った資本投入が進むと見込まれます。


      今後の見通し

      2026年下半期も、世界の化学セクターでは案件を厳選する動きが続くと見られるものの、買収余力の改善、規律ある資本配分、継続的なポートフォリオ最適化を背景に一定の取引水準が維持される見込みです。買い手の関心は、安定した収益力と戦略上の強みが評価されているスペシャリティケミカル、先端材料、高付加価値型の販売事業に引き続き集中するでしょう。

      カーブアウト、ボルトオン買収、ケイパビリティ強化を目的とする案件が引き続きM&Aの中心となり、投資家は安定した利益率と競争力を備え、明確な価値創出が見込める資産を重視すると考えられます。  

      スペシャリティケミカル

      取引内訳(a)

      取引内訳

      注:(a) パーセンテージは小数点以下を切り捨て

      地域内訳

      サブセクター動向


      スペシャリティ資産の選好:市場全体が厳しい環境にある中でも、安定した収益力と底堅い需要のあるスペシャリティケミカル分野には、2026年上半期もM&A資金が集まりました。

      質を重視した投資:
      買い手は技術力、製剤ノウハウ、価格決定力、強固な顧客基盤を備えた事業を選好し、特にコーティング、先端材料など需要が底堅い市場で事業を展開する資産に関心が集まりました。

      ポートフォリオの変革:戦略的投資家はスペシャリティ事業の拡充とポートフォリオの質向上に向けて、特定領域に絞った買収やカーブアウトを進める一方、プライベートエクイティ投資家は事業改善や価値創出の余地が明確な優良プラットフォームへの投資に注力しました。


      今後の見通し

      スペシャリティケミカル分野は、価格決定力、高い顧客定着率、技術的な強みを持つ高収益な製剤型事業への需要に支えられ、2026年下半期も引き続き有力なM&A投資先となる見込みです。戦略的投資家はボルトオン買収やポートフォリオ最適化を進める一方、プライベートエクイティ投資家は明確な価値創出余地のあるスペシャリティ事業やカーブアウト案件への投資に注力すると見られます。正常収益力、安定した利益率、景気変動への耐性が案件の成否を左右するでしょう。  


      基礎化学品・石油化学品

      取引内訳(a)

      取引内訳

      注:(a) パーセンテージは小数点以下を切り捨て

      取引内訳

      サブセクター動向


      構造的な課題:供給過剰に加え、中国の生産能力の増強、需要低迷、利益率の低迷を受けて、2026年上半期の基礎化学品・石油化学品分野ではM&Aが引き続き抑制されました。汎用化学品へのエクスポージャーが高い資産に対する買い手の慎重姿勢から、バリュエーションも抑制されました。

      規模拡大と統合:戦略的M&Aでは、原料調達面での優位性の強化、シナジー創出、競争力向上に向けて、統廃合、垂直統合、ポートフォリオの再構築が進められました。  

      規律ある資本配分:投資家は、原料調達面で競争力があり、正常収益力と景気変動への耐性を備えた資産を選好しました。また、エネルギーの安定確保や地域競争力が、投資判断で一層重視されました。


      今後の見通し

      2026年下半期、石油化学品のM&A取引では、原料価格の変動、地政学的な不透明感、需要回復のばらつき、供給過剰の継続を背景に、案件を厳選してバリュエーションを慎重に見極める姿勢が続く見込みです。大手企業は拠点の合理化やポートフォリオ最適化を進め、 設備増強も必要な領域に限定する一方、コスト競争力、正常収益力、景気変動への耐性を備えた資産を中心に投資を行うと見られます。



      販売事業者・その他

      取引内訳(a)

      取引内訳

      注:(a) パーセンテージは小数点以下を切り捨て

      地域内訳

      サブセクター動向


      相対的な底堅さ:2026年上半期の本サブセクターでは前年同期比で取引が増加し、市場全体が厳しい環境にある中でも投資家が関心を寄せ続けていることが示されました。

      展開地域の拡大:買い手は、販売網の拡大、顧客基盤の強化、魅力的な市場への展開につながる販売事業者への投資を進めました。  

      買収を通じた事業基盤の強化:ケイパビリティの拡充、取扱製品の拡大、競争力の強化を企図したバイ・アンド・ビルド戦略のもと、ボルトオン買収が取引の多くを占めました。  

      スペシャリティ製品販売事業者の重視:特色ある製品構成、技術的ノウハウ、顧客ニーズに対応したサービス力への需要を背景に、スペシャリティ製品に特化した販売事業者が一段と選好されました。


      今後の見通し

      2026年下半期の化学品販売事業者サブセクターでは、案件を厳選しつつも堅調な取引が続くと見込まれます。規模拡大、ケイパビリティ強化、事業運営上のシナジーを狙ったボルトオン買収が引き続き取引を支えるでしょう。投資家は、特色あるサービスモデルや技術的ノウハウを有し、有望な市場に顧客基盤を持つ販売事業者を選好すると見られます。


      化学業界の今:変動を乗り切る
      -M&Aは成長重視から強靭性重視へ-  

      2026年の化学分野におけるM&A取引は、成長の加速や通常のポートフォリオ最適化を目的とする取引から、事業の強靭性を重視する取引へとシフトしています。買収、売却、カーブアウトを通じて変動リスクを抑え、キャッシュフローを確保するとともに、原料・供給面の安定性を高め、需要の見通しが立てやすい市場に軸足を移す動きが進んでいます。


      化学業界の厳しい市場環境とM&A戦略の転換


      市場の変動要因、M&Aによる対応

      化学企業のM&A戦略:足元の投資判断のポイント


      化学企業のM&A戦略:足元の投資判断のポイント


      Deal Capsule - 化学セクターにおけるM&A取引動向 2026年第2四半期


      お問い合わせ先

      高橋 恵太

      KPMG FAS 執行役員パートナー 化学セクターリーダー

      KPMG FAS

      エネルギー業界における国内外の事情に精通したプロフェッショナルが、企業の課題解決を支援します。

      KPMGのグローバルネットワークとの連携の下、経営戦略の立案から、M&A/PMI・事業再生支援のほか、企業内不正調査・防止策の策定まで、顧客企業の課題を解決し、企業価値の向上に貢献します。