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米国赴任に向けての会計・税務・ビジネスの基礎知識
【第1部】
新任米国駐在員の方を主な対象として、会計・税務・ビジネスの基礎をテーマとしたセミナーを毎年開催しており、今回は2025年7月に配信した内容を共有いたします。
米国ビジネス基礎セッション(Session 1–6)
本プログラムは、在米日本企業の経営・管理に不可欠な 税務・会計・評価・AI の基礎を体系的に整理し、コンプライアンス対応力の強化と経営判断の質向上を目的としており、以下のテーマについて取り上げています。
- 駐在員の個人所得税および給与関連税の基本
- 米国の移転価格税制と在米日本企業への影響
- 米国税制の概要と最近の動向
- 企業/資産価値評価の基本的アプローチ
- 米国の主要会計基準と米国会計監査の実務
- 人工知能/生成AIおよびAIエージェントの基礎
1. 駐在員の個人所得税・給与関連税
- 米国赴任者に関する 個人所得税・雇用税・社会保障税の基本構造を整理
- グロスアップ設計、現金・現物給付の課税可否はコストとリスクに直結
- 個人所得税未申告、居住者区分誤りや FBAR(外国金融口座報告書)/FATCA(外国口座税務コンプライアンス法)未対応は高額ペナルティにつながるため、早期管理が重要
経営上の示唆:
▶ 駐在員コストの「見える化」と税務リスクの事前抑制が不可欠
2. 米国移転価格税制と在米日系企業への影響
- 移転価格は「各国間の税収配分問題」であり、IRSの執行姿勢は年々強化
- 米国子会社には **CPM(利益比準法)**が実務標準
- 文書化未整備時は 20~40%の追徴ペナルティのリスク
- 近年は「低利益・赤字」の在米日系企業が重点調査対象
- 日米二国間APA(事前確認制度)は、二重課税リスクの予防という観点で有効
経営上の示唆:
▶ 移転価格は税務問題であると同時に、事業モデルの妥当性確認手段
3. 米国税制の概要と最近の動向
- 米国税制は 連邦+州+地方の多層構造で、実務負荷が高い
- 法人税(21%)に加え、源泉税・売上税・州税等の対応が必須
- 日米租税条約により源泉税軽減は可能だが、手続不備は免税不可
- IRS予算増強により 調査・執行強化は継続見込み
経営上の示唆:
▶ 税務は「後追い処理」ではなく、経営・事業計画と一体で管理すべき領域
4. 企業/資産価値評価の基本
- M&A・減損・組織再編では **公正価値(Fair Value)**が前提
- 評価手法は インカム・マーケット・コストの3アプローチ
- 無形資産・のれんの評価と減損は、業績・BSに直接影響
- 金利・景気・税制変更は評価額に大きく作用
経営上の示唆:
▶ 評価は「会計対応」ではなく、投資判断・資本戦略の中核情報
5. 米国会計基準と会計監査実務
- 米国会計(U.S. GAAP)は見積り・判断を伴う会計処理が多く、文書化や判断根拠が重視される
- 収益認識(ASC606)、リース(ASC842)、減損や繰延税金資産の評価は実務上の代表的判断論点
- 会計判断の一貫性確保および十分な文書化が、監査対応上重要
経営上の示唆:
▶ 米国では、会計判断の妥当性について、説明や根拠を明確に示すことが重要
6. 人工知能/生成AI・AI Agent
- 生成AIは 業務効率化・意思決定支援の実用フェーズに到達
- RAGやAIエージェントにより、調査・文書・分析業務の高度化が可能
- 一方で、情報漏洩・誤情報対策としてガバナンスとガードレールが必須
経営上の示唆:
▶ AIは「試行」から「統制された業務組み込み」の段階へ
まとめますと、在米ビジネスでは、
「税務・会計・評価・テクノロジー」=リスク管理 × 経営判断基盤
▶ 専門対応の有無が、コスト・コンプライアンス・企業価値に直結します
▶ 米国特有の厳格さを前提に、先回りの設計と統合的管理が鍵となります
【第2部】
米国に赴任に際し現在重要な政策動向の1つが、米国の通商・貿易政策です。
米国の通商政策は大きな転換期を迎えており、関税を巡る不確実性が増大しています。関税収入は2024年比で300%増の1,638億ドルに達し、平均関税率も15.8%に上昇するなど、多くの企業が関税コストの価格転嫁を余儀なくされており、企業のコスト負担は深刻化し、サプライチェーン全体への影響が拡大しています。
米国最高裁判所は、2026年2月20日、大統領が国際緊急経済権限法(IEEPA)を用いて関税を発動することはできないとIEEPA関税の無効判決の判断を下しました。これにより、中国、カナダ、メキシコ等に課されていたIEEPAに基づく追加関税や、多数の貿易相手国に対する相互関税は無効となりました。現在、米国税関・国境警備局(CBP)が還付手続きを進めていますが、完了までには数ヵ月を要する見込みです。(2026年3月25日のウェビナーを開催した時点。)
IEEPA無効化への対抗措置として、トランプ大統領は1974年通商法122条に基づき、全世界からの輸入品を対象に10%の追加関税を発動し、今後15%への引き上げも可能となります。この措置は、議会の延長承認がなければ最長150日間(2026年7月24日まで)の時限措置となります。
より長期的な措置として、米国通商代表部(USTR)は日本を含む60ヵ国を対象に、通商法301条に基づく調査を開始しました(2026年3月12日)。これにより、122条関税の期限が切れた後も、新たな追加関税が課される可能性があります。
122条(全世界対象10%)や232条(鉄鋼・アルミ50%、自動車とその部品25%、等)、301条(中国原産品7.5-100%)など、複数の法的根拠に基づく追加関税が発動済みです。さらに、医薬品、半導体製造装置、航空機、ロボット等の分野でも232条に基づく調査が進行中であり、今後も対象品目が拡大するリスクがあります。
日系企業が取るべき対策として、関税による不確実性を管理し、コストを最適化するため、短期・長期の視点から多面的な関税戦略をただちに実行することが不可欠です。
- 関税分類の見直し:有利な関税率を適用するため、自社製品のHSコード(関税分類番号)が最適か専門家を交えて再評価する
- 原産地の精査:特恵貿易協定(例:USMCA)や低関税率の適用が可能な原産国への変更を検討する
- 価格構成の見直し(アンバンドリング):申告価格から非課税費用を切り離し、関税評価額を引き下げる
- ファースト・セール:適用可能な場合、工場出荷時の最初の販売価格を基準に通関申告し、関税コストを削減する
- Duty Drawback制度の活用:米国で輸入した部品を使い製造した製品を再輸出する場合、支払った関税の99%の還付を申請する
- 移転価格調整に伴う還付:事後的な移転価格調整で通関価格が減額された場合、関税の還付を請求する
結論として、米国の通商政策は保護主義的な傾向を強めており、予測が困難な状況が続きます。経営層は、対策を速やかに検討・実行し、サプライチェーンの強靭性を高め、グローバル市場での競争力を維持・向上させることが急務です。
それ以降も2026年4月20日より、米国税関(CBP)は「CAPE(Consolidated Administration and Processing of Entries)」と呼ばれる新しい統合管理ツールの、「フェーズ1」の運用が開始され、還付対象の輸入品のIEEPA関税と利息の還付を請求するためのプロセスがすでに確立されています。
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