金融業界のなかでもいち早く生成AIを活用した変革に取り組んできた、みずほフィナンシャルグループ(以下、みずほ)。同社はビジネス機会の創出、サービス向上や業務効率化のため、さらなるAIの戦略的な活用を安全かつ適切に推し進めるべく、その土台としてAIガバナンスの構築に着手。2025年に公開した「〈みずほ〉のAIに関する取組方針」に基づき、攻めと守りの両面からのリスク評価、規程・手続きの整備、および体制づくりをすべく、KPMGコンサルティングの支援のもとで高度化プロジェクトを行った。
左から みずほフィナンシャルグループ 堺氏、藤井氏、
KPMG 関、津田
【プロフィール】
みずほがAIアプリケーションを内製化する理由とは
――早くから生成AIを積極的に活用してきたことで、みずほの動向は業界を問わず注目されています。
藤井氏:
2023年6月に、ChatGPT-3.5を使ったテキスト生成AIアシスタントを国内社員向けにリリースして以来、生成AIによるビジネス機会の創出を進めてきました。
2024年4月には、本格的な生成AIの業務適応に向けて、「AIX推進室」というCoE(Center of Excellence:企業内で専門知識を持つ人材やノウハウを集約した組織)を設置しました。この組織の体制をさらに増強したのが、2025年4月に発足した「デジタル・AI推進室」です。
みずほフィナンシャルグループ 藤井氏
関:
当初から自社開発・内製化に積極的に取り組んでこられたことが、取組みのスピード感につながっているのではないかと受け止めています。これは、AIへの投資と活用を積極的に進めている欧米の金融機関においてもみられる特徴です。
藤井氏:
私自身、「DXは内製化しなければならない」という持論が10年来ありました。他人任せのシステムを導入しても、社内での活用は広がりません。既製品では解決すべき課題に直結していなかった、無理にカスタマイズしたばかりに最低限の機能しか生かせなかった、といった事態が起きるためです。
生成AIという「新しい風」をみずほに定着させるには、技術を理解したうえで仕組みを作り込み、みずほの環境にフィットする最適なシステムを構築する必要があると考えました。もちろん、社会に広く普及する既製のシステムが最適なケースでは、私たちも適材適所でさまざまなデジタルツールを導入しています。しかし、生成AIに関しては当時、私たちの環境に合ったシステムはありませんでした。
また、生成AIの世界は、3ヵ月前の正解が不正解になり得る過渡期にあります。メインストリームとしてのAIの進化がどこへ向かうのか、目利き力が重要です。内製化することで、最新技術動向やユースケースに関する情報にも自ずと敏感になる目利き力の向上や、それに基づく迅速なブラッシュアップが可能というメリットもあります。
津田:
実際に、社内で開発されたAI関連のアプリケーションは相当数に上り、ユーザー数も着実に増えているそうですね。
KPMG 津田
藤井氏:
たとえば、2025年11月にリリースした「めんきくん」という議事録作成AIアプリケーションは、リリースから半年足らずでユーザー数が1万人を超えました。主に営業拠点の担当者がお客さまとの面談内容を音声で記録し、要約・整理するために使われています。
このアプリケーションの特徴は、記録した情報をスマートフォンだけでなく、パソコンやタブレットなど、あらゆる端末で共有し、加工や編集ができることです。みずほの社員は、複数の端末を使い分けながら仕事をする環境にありますので、マルチデバイスに対応する設計にしました。こうしたきめ細かな工夫を凝らせるのも、内製化ならではのメリットだと言えます。
関:
現在では、金融業界全体として生成AI活用が進みつつありますが、当時はまだ「お客さまに提供するサービスの品質に影響しないか」と心配して活用をためらうケースも少なくありませんでした。
藤井氏:
当然ながら、サービス品質の維持や、ガバナンス、コンプライアンスの徹底などは最優先事項です。そのうえで、進化を遂げ続けるAI技術をタイムリーにキャッチアップしながら、いかにスピード感を持って新しいサービスを提供できるかが大事だと考えています。
「攻め」と「守り」の両面が求められるAIガバナンスを
――金融システムの安定や顧客保護のため強固なリスク管理が求められる金融機関においては、特に厳格なAIガバナンスが要求されます。どのように整備していくべきでしょうか。
関:
一般にガバナンスというと、「リスクマネジメント」や「コンプライアンス」などの、いわゆる「守り」の側面ばかりが語られがちです。これらの要素が重要なのはいうまでもありませんが、AIガバナンスの本質は「組織の戦略や目標を達成するために攻めと守りのバランスを取る」という点です。
また、従来的なガバナンスと、AIガバナンスを分けて考える企業も少なくありません。しかし、確からしい事実と異なる情報を生成してしまう、ハルシネーションのようなAI固有の問題はあるにせよ、ガバナンスの方法論に大きな違いはありません。
すでに社内で確立されたガバナンスの仕組みやルールを応用し、「AI活用を後押しするための基盤を整備する」という意思を持って、「守り」に徹するだけでない「攻め」のガバナンスを構築することが望ましいと考えます。
KPMG 関
津田:
日本の多くの金融機関がAIガバナンスを構築済み、または着手しています。裏を返せば、それだけAI活用が進み、リスク認識が進んでいることを示しています。
AIガバナンスに関しては、個社のみならず金融業界としての取組みもみられます。たとえば、一般社団法人 金融データ活用推進協会(FUDA)では、金融機関によるイノベーティブで健全な生成AIの活用を促すために「金融生成AIガイドライン」をまとめています。
AIガバナンスのような非競争領域に関しては、官民、業界が一体となって環境整備を図っていこうという意気込みを感じます。そうしたなか、みずほは業界においても先進的にAI活用へ取り組み、それに見合ったAIガバナンスを目指していると言えます。
ワンチームとなってAIガバナンス高度化を実施
――みずほでは、AIガバナンスにどのように取り組んでいるのでしょうか。
藤井氏:
2025年1月に当社のガバナンス方針である「〈みずほ〉のAIに関する取組方針」を公開しました。今後もより多くの社員へと生成AIの活用範囲が広がっていくことを考えれば、シャドーAI(部門が組織の正式な承認を得ずに独自に導入したAI)などの課題も起こり得ます。先んじて明確なポリシーを確立しておく必要があると判断し、制定に至りました。
「〈みずほ〉のAIに関する取組方針」は、「責任ある行動」「信頼性の追求」「公平性の追求」「イノベーションの追求」の4つの柱で構成されています。ガバナンスは徹底しつつ、イノベーションは追い求め続けるという「守り」と「攻め」のバランスが取れたポリシーが制定できたと思っています。
――2025年から「AIガバナンス高度化プロジェクト」を実施され、2026年4月から新たにAIガバナンスの枠組みを開始されています。詳細をお聞かせください。
堺氏:「〈みずほ〉のAIに関する取組方針」の実践に向けて、AIガバナンスを利かせるための規程・手続き整備、業務プロセスなどの整備、体制づくりに取り組んだプロジェクトです。KPMGコンサルティングの支援を受けながら、ほぼ1年がかりで諸々の仕組みを作り上げました。
これらの仕組み作りにおいても、「攻め」と「守り」のバランスを十分に配慮しました。「攻め」に関しては、社内におけるユースケースを把握し、みずほならではの生成AIの使い方を高度化させていくには、どのような規程やルールにすべきかを関係者と徹底的に議論しました。
一方、「守り」については、企画の段階から実際の活用まで、生成AIのユースケースをライフサイクル全体で把握し、どの段階にどのようなリスクが潜んでいるのかを洗い出したうえで、リスクをコントロールするための仕組みを綿密に構築しました。
グローバルで同様のプロジェクトに数多く携わった経験があり、豊富な知見を持つKPMGコンサルティングからのアドバイスは、本当にありがたかったですね。
みずほフィナンシャルグループ 堺氏
津田:
本プロジェクトの特徴は、AIのリスク発現の原因となる要素が、業務、システム、法規制、コンプライアンスなど多岐にわたるため、関係者が多いということにありました。また、AIガバナンスとはAI推進のためにあるものですので、リスク評価が過度に慎重になれば、推進のスピードを鈍らせる懸念もありました。
多くの関係者が関与しながら、リスク評価を合理的な負荷・期間に収めるべく、現場の自律性を重視した柔軟な枠組みの構築を目指しました。そのためには関係者の協力が不可欠でしたが、前提としてAIガバナンスの重要性に関する共通理解があったので、スムーズに取組みを進めることができました。KPMGコンサルティングとしては、とにかく丁寧なコミュニケーションを心掛けながら、毎日のディスカッションに参加し、現場も含めた皆さまの視点で携わることで、ワンチームとなってご支援させていただきました。
――最後に、今後のビジョンをお聞かせください。
藤井氏:
AIは、もはや人による活用の領域を超えて、それ自体が業務実行の主体となる存在にまで進化しています。ロボットや設備の操作に用いられる、フィジカルAIなどを見据えて、今後もどんどん新しくなっていく技術をタイムリーに取り込みながらサービスを進化させたいと思っていますし、そのためにはこれからもガバナンスの見直しや高度化を図っていく必要があります。KPMGコンサルティングには、引き続きのご支援を期待しています。
関:
これからはAIが経営の根幹に据えられる時代となり、それに対応できないと淘汰されてしまう可能性もあります。KPMGコンサルティングは、そうした時代の要請に応え、日本企業のAI活用やAIガバナンス構築の取組みを、スピード感を持ってご支援させていただきます。
※本記事は、「日経ビジネス電子版」(2026年5月11日)に掲載された記事広告を、株式会社日経BPの許可を得て転載したものです(一部加筆・修正)。無断での複写・転載は禁じます。
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