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      IPビジネスへの注目が高まるなか、IPを効率的・戦略的に管理するうえでのシステム・ソフトウェア整備、体制整備にはどのような課題があるでしょうか。また、自社の「稼ぐ力」に結びつけるため、いかにして実効的な取組みを進めるべきでしょうか。株式会社CreativeGain代表取締役CEO 三橋亮太氏と、株式会社Plott執行役員 田川勝也氏をお迎えし、意見を交わしました。


      Japanese alt text: 全員

      左から KPMG 木村、中川、Plott 田川氏、
      KPMG 谷萩、CreativeGain 三橋氏

      【インタビュイー】

      株式会社CreativeGain
      代表取締役CEO 三橋 亮太氏

      株式会社Plott
      執行役員 田川 勝也氏

      KPMGコンサルティング
      執行役員パートナー 木村 みさ
      シニアマネジャー 中川 祐
      シニアコンサルタント 谷萩 光

      加速する、成長戦略としてのコンテンツミックス

      木村:
      企業におけるガバナンスの高度化の取組みが進展するなか、IP・知的財産を重要なイシューとして明確に位置付ける動きが広がりつつあります。かつて私たちがお受けするご相談の内容は、特許を中心とする知財管理に関するものが大きな比重を占めていました。最近では、経済産業省による「『稼ぐ力』の強化に向けたコーポレートガバナンスガイドライン」(2025年4月公表)の影響もあって、コンテンツIPなどに関するお問合せが増えており、社会的な注目の高まりを実感しています。

      中川:
      コンテンツが生み出す収益性の管理については、多くの企業が課題を抱えています。たとえばテレビドラマは視聴率を念頭にコンテンツが評価されており、1本当たりの収益性、投資利益率など、データを基に戦略を築くという発想自体が業界に定着していないように見受けられます。コンテンツ産業におけるDXの遅れは日本企業の課題でもあり、潜在的なコンテンツ収益性の可視化を前提に、IPビジネスの「攻め」と「守り」、無形資産活用、といった戦略検討の重要性が高まっているのではないでしょうか。

      三橋氏:
      テレビの世界はもともと、直接的にユーザーから対価を得るビジネスモデルではなかったため、定量的に収益を測定・管理し、データを基に次の一手を打つという考え方が生まれにくかったのかもしれません。しかし最近では、グッズやイベントのチケットの販売が相当規模の収益を上げるようになり、管理の必要性が高まった結果、グッズ等のマーチャンダイジングの売上を、伝統的な視聴率と同等の評価指標として取り扱う流れがようやく広がりつつあります。

      谷萩:
      定性判断を重んじる文化が根強かった伝統的なエンターテインメントの世界に変化の兆しが見受けられる一方、SNSや動画配信サイトといった新分野での戦略を模索する動きもあります。1次コンテンツの在りようが多様化し、2次コンテンツの重要性も強く意識されるなかで、最小限の打席数でヒットを生み出す戦略の構築や、そのための指標の立て方も論点となりそうです。

      田川氏:
      従来、IPビジネスの世界では「大きく作り、長い時間を掛けて回収する」という姿勢が基本とされてきました。一方、SNS発のIPビジネスは「小さく始め、毎日磨いて、長く育てる」ことが重要と考えます。

      ショートアニメ事業やIP展開事業を日々手掛けるなかで感じるのは、コンテンツの2次展開に向けたPDCAはSNS起点の場合、従来のIPビジネスに比べ、はるかに高速で回転させることができるということです。1次コンテンツの視聴率や再生回数と、MDの販売量等をほとんど同時に把握できるため、「今回は2次コンテンツの売れ行きが低調だったので、次は1次コンテンツにさらなる工夫を加えよう」「既存ファン層の外側にリーチする施策を考えよう」という具合に、フィードバックを効率化できるからです。

      Japanese alt text: Plott 田川氏 Plott 田川氏

      三橋氏:
      適切に設定されたKPIは、経営管理的な見地から「勝ち筋」を見究め、将来性への期待がより大きなIPにリソースの比重を傾けて育てていくといった戦略の高度化に役立ちます。KPIの立て方は個々のIPホルダーごとの特性に応じて異なるべきであり、唯一の正解は存在しませんが、まずは各種データを収集・整理し、可視化することが出発点となります。

      こうした考えのうえで、当社ではSNSの反応数、MDの販売量、ライセンスアウトの状況を含めて可能な限り全方位的に各種データを取得し、成長を構造面から支えるサービスを提供しています。IPの成功は正確な予測が困難であり、「打率」を上げる魔法が存在しないからこそ、データ蓄積とAI活用により業務を徹底して効率化し、挑戦の「打席数」そのものを最大化する体制構築が不可欠です。

      Japanese alt text: CreativeGain 三橋氏 CreativeGain 三橋氏

      ロジックをクリエイティブの中継地点に

      木村:
      IPビジネスは根本的には「感情ビジネス」であり、人間が感動することでさらなる進化が生まれます。感情の動きをデジタルの力で分析することで戦略の精度向上が期待できる一方、人の「慣れ」など理屈を超えた行動があるため、新たな分析手法の模索と予測を超えた新たな行動とが「いたちごっこ」となりうることも考えられます。IPビジネスにおいては、定量的な分析と定性的な解釈のバランスをどう取るかが重要だと考えます。

      Japanese alt text: KPMG 木村 KPMG 木村

      田川氏:
      二律背反という言葉がありますが、定量と定性、ロジックとクリエイティブは相反するのではなく、実はそれぞれ延長上に存在するものだと考えています。もちろんIPの世界も、あらゆるビジネスと同様にロジックをベースに据えるべきですが、定量面の分析だけでは中継地点までしか行き着くことができません。KPIを起点にロジックを突き詰め続け、その結果として、予想していた再現性を裏切るクリエイティブなものが生み出されるといった流れが理想的ではないでしょうか。

      SNSの世界では基本的に、動画配信サイトなどを裏側で動かしているアルゴリズムを前提に戦略を組み立てますが、そのアルゴリズムはプラットフォーマーの一存でいつでも変更される可能性があります。一方、コンテンツを享受する人々の価値観には不変的なものがあり、両者を適切な配分で考慮するバランス感覚の維持が求められるのです。

      三橋氏:
      エンターテインメントが定性の比重が大きい領域であることは事実であり、データ上は同じ試みであっても、まったく異なる結果が出るというケースが珍しくありません。とはいえ、MDが稼ぎ柱となり、在庫を抱えるビジネスがIP領域の主流となっている現在では、「足を引っ張る定量判断のミス」を低減する施策が不可欠です。在庫を抱えるリスクを抱えながら定量面でミスを起こすと、本来であればより長く走れたはずのコンテンツの寿命を短期化させるリスクがあるからです。

      中川:
      実際にIPコンテンツビジネスを拡大させようとすると、権利処理も大きなハードルになりますね。権利関係の複雑化を避けるため伝統的な製作委員会方式からの脱却を図る動きが見られる一方、予算の制約があるなかでハリウッドなど海外のコンテンツに対抗するスキームとして、その意義を見直す向きもあります。

      Japanese alt text: KPMG 中川 KPMG 中川

      田川氏:
      多方面でのビジネス展開を志向する以上は当然、自社だけで解決できない部分が出てくるものです。当社ではこれまで原作の権利をできるだけ少ない関係者間で完結させるなど座組を工夫し、ライセンスアウト時の許諾の協議がなるべく複雑化しないようにしてきました。一方、昨今注目を集めているショートアニメ市場の成長を委員会の方式が後押ししてきたことも事実です。外部と協力する場合には、最初の契約スキームの結び方がプロジェクトの成否を分けることになります。将来の展開を見据えつつ、不測の事態を回避する緻密な権利設計が、IPビジネスの持続的な成長を担保するうえでの優先事項の1つと言えるでしょう。

      ソフトウェアに“思想”を組み込む

      谷萩:
      プロデューサーの手腕によってグローバル展開で成功を収めたものの、その手腕を組織のノウハウに落とし込む方法を見出しかねているケースも少なくありません。ノウハウを蓄積できる体制の土台を作り上げることも、コンテンツ業界において要求されるDXの役割の1つです。

      Japanese alt text: KPMG 谷萩 KPMG 谷萩

      三橋氏:
      IPとは結局のところ無形物です。システムには、人々がリスペクトする「偶像」でしかない存在に対し、ビジネスの枠組みに組み込むことのできる明確な形を与える力があります。適切にシステムを整備することによって初めて、組織内の個々の人材の役割、責任を表現することも可能になります。

      当社ではIPを最上位概念に据え、社内で使用するシステム全体を横串で結び付けるようにしています。画一的なBtoB向けのシステムをそのまま適用し、承認フローやワークフローにおいて実務との隔たりが生じると、組織体制そのものが維持できなくなってしまう懸念があるからです。

      田川氏:
      ソフトウェアと思想の単純な二者択一ではなく、ソフトウェアに思想を組み込むという姿勢に強く共感します。

      木村:
      ビジネスモデルの前提が大きく変容するなかで、無形と有形の両方に目を向けつつ、IP戦略を多層的に捉える必要性が増しています。緻密な権利獲得と処理による「守り」と、データに基づくIPコンテンツの収益化という「攻め」、そしてこれらを支える思想をシステムへと有機的に組み込んでいくことが、今後の「稼ぐ力」を左右する重要な鍵となるとの考えを改めて強くしたところです。本日はどうもありがとうございました。

      Japanese alt text: 全員 左から CreativeGain 三橋氏、Plott 田川氏、KPMG 木村、中川、谷萩

      【知財・無形資産戦略支援】
      KPMGでは、企業が有する知的財産やその他無形資産の的確な把握と経営戦略への組み込みが「稼ぐ力」の強化および企業価値向上のキーになると捉えており、ビジネスモデルを支える企業固有の強みに基づく知財・無形資産戦略の策定支援を提供します。

      志賀国際特許事務所との対談

      「知財・無形資産」を企業の事業戦略や経営戦略とどう結び付け、価値創造につなげるかをテーマに、志賀国際特許事務所と対談しました。

      企業の価値向上を推進するために、知財・無形資産の可視化・獲得・活用をワンストップで支援します。

      KPMGコンサルティングが支援した取組みの一部を紹介します。


      KPMGコンサルティング

      戦略策定、組織・人事マネジメント、デジタルトランスフォーメーション、ガバナンス、リスクマネジメントなどの専門知識と豊富な経験から、幅広いコンサルティングサービスを提供しています。

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