ディープテック・スタートアップ領域情報を深堀した1冊
『ディープテック・スタートアップ―12人の新しい事業領域の開拓者』(中央経済社刊)は、全9章構成の書籍です。前半では、ディープテック・スタートアップ分野におけるプロフェッショナルによる情報提供を行い、後半ではディープテック領域で活躍する起業家へのインタビューを掲載しています。ディープテック企業は、日本発で世界的企業へと成長する大きな可能性を秘めています。その一方で、研究開発に多額の資金と長い時間を要し、収益化までに時間がかかるという構造的な課題も抱えています。
本書では、こうした特有の課題に対応するための多様な資金調達手法をはじめ、M&AやIPOの具体的なプロセス、さらにグローバル企業へと成長するために不可欠なガバナンス体制の構築について、専門家の視点から実務上の留意点をわかりやすく解説しています。本稿では、第1章から第8章までのサマリをまとめていますので、ご参考ください。
ディープテック・スタートアップ
立ち上げからイグジットまで網羅的に解説
・第1章:日本において期待が高まるディープテック・スタートアップ
本章では、日本におけるスタートアップ、特にディープテック・スタートアップの現状と課題について述べています。大学や研究機関から生まれる高度な技術は大きな可能性を持つ一方で、事業化までに長い時間と多額の資金を必要とし、高いリスクを伴います。そのため、起業家人材や経営人材の不足、適切な資金調達の難しさが課題として指摘されています。また、研究成果を市場ニーズにつなげる仕組みや、長期的な視点で支援する投資・制度環境も十分に整っているとは言えません。今後は、産学連携の強化やスタートアップ・エコシステムの整備、挑戦を後押しする制度設計が、ディープテック・スタートアップの成長に不可欠であるとしています。
・第2章 ディープテック・スタートアップの立ち上げ
本章では、ディープテック・スタートアップの創出と成長を支えるために、アイデア段階から事業化までをつなぐ支援の重要性について述べられています。特に、研究成果と市場を結ぶ考え方を中心に、技術シーズを事業に転換する過程には、研究者だけでなく、事業開発人材、投資家、企業など多様なプレイヤーの連携が不可欠であると指摘しています。また、単発の支援ではなく、育成・実証・資金調達を段階的に支えるエコシステムの構築が重要であり、スタートアップが継続的に成長できる環境整備が求められています。ディープテック領域では特に、長期的視点に立った伴走型支援が成果を左右するとしています。
・第3章 ディープテック分野のマーケット
本章では、ディープテック分野における国内外のマーケット動向と、その特徴について整理しています。海外ではAI、量子、バイオ、クリーンテックなどを中心に市場規模が拡大しており、政府投資や大企業、ベンチャーキャピタルが連動したエコシステムが形成されています。一方、日本では研究成果や技術シーズは豊富であるものの、事業化や市場展開のスピード、資金供給の面で課題が残っています。海外事例としては、大学発技術を核としたスタートアップや、大企業・投資家が連携する仕組みが紹介されており、長期的視点での支援の重要性が示されています。今後、日本のディープテック・スタートアップが成長するためには、国内市場にとどまらず早期に海外市場を見据え、技術優位性をグローバルに展開していく戦略が不可欠であるとしています。
・第4章 ディープテック・スタートアップの資金調達方法
本章では、ディープテック・スタートアップにおける資金調達の重要性と、その手法の多様化について整理しています。ディープテック分野は研究開発期間が長く、初期段階ではリスクが高いため、通常のスタートアップ以上に安定的かつ長期的な資金供給が求められます。資金調達手法としては、ベンチャーキャピタルに加え、公的資金、企業連携、助成金などの組み合わせが重要であると示されています。また、成長段階に応じた支援や、制度的な後押しの必要性も指摘されています。今後は、セカンダリーマーケットの整備やインパクト投資の拡大などを通じて、資金の循環を促進し、ディープテック・スタートアップが持続的に成長できる環境を構築することが求められるとしています。
・第5章 日本のディープテック・スタートアップの課題
本章では、ディープテック・スタートアップが事業化、成長、社会実装に至るまでに直面する主要な課題と対応の方向性について整理しています。事業化においては、研究成果を市場ニーズに結び付ける難しさや、顧客・用途の探索に時間を要する点が指摘されています。また、規制や制度対応、人材確保、特に高度な研究人材や経営人材の不足も大きな課題です。加えて、国内市場の規模には限界があるため、早期から海外展開を見据えた戦略が重要とされています。これらの課題に対応するため、産学官連携の強化、支援プログラムの活用、国際的人材・ネットワークの獲得を通じて、持続的に成長できる環境を整備する必要があると述べています。
・第6章 M&AとIPO
本章では、ディープテック・スタートアップにおける代表的な出口戦略であるM&AとIPOについて、その特徴や違いを整理しています。M&Aは比較的早期に実現しやすく、事業シナジーや技術獲得を目的とした大企業との連携が進みやすい一方、IPOは企業としての独立性を維持しつつ、大規模な資金調達や社会的信用の獲得が可能であるとされています。ただし、IPOには長期的な成長性、ガバナンス体制、開示対応など高い準備水準が求められ、時間とコストがかかる点が課題です。近年の国内外の動向を踏まえると、スタートアップには創業初期から出口戦略を意識し、自社の技術特性や成長段階に応じてM&AとIPOを戦略的に選択することが重要であると述べられています。
・第7章 コーポレート・ガバナンス
本章では、ディープテック・スタートアップが持続的に成長し、グローバルに事業を展開していくために必要なコーポレート・ガバナンスの考え方と実務上のポイントについて述べています。創業初期から、経営と技術の分離、取締役会の機能強化、透明性の高い意思決定体制を整えることが重要であるとされています。特に海外投資家やグローバル市場を意識する場合、国際標準に沿ったガバナンス体制やコンプライアンス対応が求められます。また、人材、知的財産、資金管理を含めた全社的な統制を整備することで、成長局面におけるリスクを低減し、長期的な企業価値向上につなげることが重要であるとしています。
・第8章 ディープテック・スタートアップの今後の展望と求められる人材
本章では、ディープテック・スタートアップが社会課題の解決および日本経済の持続的成長に果たす役割について整理しています。ディープテックは、環境・エネルギー、医療、食料、安全保障などの分野において、既存技術では解決が難しい課題に対する革新的な解決策を提供できる点が特徴です。一方で、日本では研究成果の事業化の遅れ、人材不足、リスクマネーの供給不足といった課題が存在します。今後は、研究者と事業人材の連携強化、多様な人材が挑戦できる環境整備、社会実装までを見据えた支援の充実が重要であり、ディープテック・スタートアップを通じて新たな産業創出と国際競争力の強化を図ることが求められるとしています。
プレスリリース:あずさ監査法人
書籍「ディープテック・スタートアップ 12人の新しい事業領域の開拓者」を発行
あずさ監査法人、書籍「ディープテック・スタートアップ 12人の新しい事業領域の開拓者」を発行
【本書の構成】
第1章 日本において期待が高まるディープテック・スタートアップ
第2章 ディープテック・スタートアップの立ち上げ
第3章 ディープテック分野のマーケット
第4章 ディープテック・スタートアップの資金調達方法
第5章 日本のディープテック・スタートアップの課題
第6章 M&AとIPO
第7章 コーポレート・ガバナンス
第8章 ディープテック・スタートアップの今後の展望と求められる人材
第9章 ファウンダーの履歴書
【本書の概要】
書籍名:『ディープテック・スタートアップ 12人の新しい事業領域の開拓者』
編者名:あずさ監査法人 インキュベーション部
発 行:株式会社中央経済社
発行日:2025年9月4日
定 価:3,960円(税込