1.グローバル
過去14四半期で最高水準を記録し、年間の投資額も5,000億ドルに到達
2025年第4四半期の世界のベンチャーキャピタルによる投資は、過去14四半期で最高水準の1,380億ドルとなり、年間の投資額も5,000億ドルに達しました。取引数が減少する一方で取引額は増加しており、市場がますます少数の大型取引に牽引されていることを示しています。
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2026年第1四半期に注目すべきトレンド
AI分野は世界的に投資先の最もホットな分野であり続けると考えられ、ベンチャーキャピタルはAIを活用したビジネスや産業の変革を目指す企業に注目しています。企業でのAIの普及が進み、単純作業の代替にとどまらず組織の生産性を向上させるなか、注目すべき分野の1つは教育分野です。世界の多くの組織がAIツールやAIソリューションを最大限に活用できるよう従業員のスキルアップを目指すなか、次世代の学習がどのようなものになるのか、EdTech(エドテック)への関心が高まる可能性があります。
2.米国
過去4年間で最高となる3,394億ドルを記録
米国のベンチャーキャピタルによる投資は、長期化した連邦政府機関の閉鎖や取引件数の急激な減少などの逆風にもかかわらず堅調に維持しました。通年での米国のベンチャーキャピタルによる投資総額はこの4年間で最高となり、2021年の記録をわずかに下回る3,394億ドルでした。
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2026年第1四半期に注目すべきトレンド
米国では、引き続きAI関連企業が大型ラウンドを行うと考えられることから堅調さを維持すると予想されます。多くの企業が上場よりも柔軟性のある非公開を好むと考えられ、AI以外の分野においても投資活動が活発化する可能性があります。また、さまざまな企業がイノベーションを加速させる目的で企業買収に目を向けることからM&Aの取引価格は上昇すると考えられるほか、コーポレートベンチャーキャピタルによる投資も高い水準を維持すると考えられます。さらに、2026年にはセカンダリーマーケットも勢いを増すと考えられ、特別目的会社などのSPV(特別目的事業体)の活用が期待されます。
3.南北アメリカ
AI分野に対する投資家の強い投資意欲から、年間投資額は過去2番目に高い水準を記録
南北アメリカのベンチャーキャピタルによる投資は、米国でのAI関連企業に対する投資家の強い投資意欲もあり、過去2番目に高い水準を記録しました。投資総額に占めるAI分野の大型レイターステージ案件の割合が高く、資本の集中と選択的なリスクテイクがますます顕著になっています。
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2026年第1四半期に注目すべきトレンド
南北アメリカでは、米国における規制緩和と追加的な金利引き下げの見通しに加え、IPOとM&A環境の改善が投資活動を後押しすると考えられ、AI分野を中心に2026年第1四半期も引き続き投資は拡大を続けると予想されます。カナダでは、比較的安定した投資活動が行われると予想されるなか、2026年の後半に防衛テックやAIなどの分野で投資の勢いが増す可能性があります。ブラジルとラテンアメリカのベンチャーキャピタルの多くは引き続き慎重な姿勢から、安定した企業に資本を集中すると予想されます。
4.欧州
取引件数が過去10年間で2番目に低い水準となるなか、投資額は過去10年間で3番目を記録
2025年第4四半期の欧州のベンチャーキャピタル投資は207億ドルにとどまり、前四半期に記録した過去最高を大きく下回りましたが、通年では853億ドルに達し、投資額ベースでは過去10年間で3番目を記録しました。マクロ経済の不確実性や地政学的緊張の高まり、バリュエーションの厳格化、ビジネスのファンダメンタルズにより投資家の慎重な姿勢が強まるなか、規模や収益性、回復力を重視する投資家の傾向から投資活動が数少ない大型の取引に集中した結果、取引件数は3四半期連続で減少し、年間でも過去10年間で2番目に低い水準でした。
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2026年第1四半期に注目すべきトレンド
欧州の投資家は実証済みの基礎や明確なユニットエコノミクス、現実的な規模拡大の道筋を持つスタートアップにより多くの資金を投入し続けると予想されます。AIと防衛テックは2026年の投資対象として非常にホットなセクターになると考えられ、フィンテック、ヘルステック、クリーンテックも引き続き投資家の関心を集めるほか、量子コンピューティングも今後投資レベルが上がると予想されます。欧州でのイグジットは、2026年の第1四半期と第2四半期にイグジット環境が顕著に改善されれば取引数も改善し始める可能性が高く、その後の四半期で徐々に改善が見られると予想されます。
5.アジア
中国では低調に推移する一方で、インド、日本、オーストラリアでは前四半期から顕著に増加
アジアにおけるベンチャーキャピタルによる投資は2,474件で214億ドルとなり、2025年は1年を通して控えめに推移しました。中国でのベンチャーキャピタルによる投資は引き続き低調でしたが、インド、日本、オーストラリアでは前四半期から顕著に増加しました。
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日本でのベンチャーキャピタル投資は好調な四半期に
2025年第4四半期、日本におけるベンチャーキャピタルによる投資は320件で19億ドル近くに達し、過去最高を記録しました。この四半期の結果により、通年でも過去最高の58億ドルを超え、2021年に記録したこれまでの記録を塗り替えました。日本では大企業が自社の業務や戦略上の課題に対処するためにベンチャー企業によるイノベーションに目を向けるようになったこともあり、大企業とスタートアップの連携への注目が高まりました。
これらの大企業とスタートアップとのパートナーシップや投資は、今後数四半期にわたってスタートアップの成長を加速させるだけでなく、急速に進化する市場において企業が競争力を維持するために、より多くの企業のベンチャーキャピタル市場への参画が期待されます。当四半期、日本では円安と金利の上昇に伴ない、新しい資金を供給するうえで重要な役割を果たしてきた金融機関に警戒感をもたらした結果、ベンチャーキャピタルは実績があり成功の可能性が高い、より確立されたスタートアップに資金を集中させるようになっています。この変化が取引形成とイノベーションの力学にどのように影響するかは、2026年に向けて注目すべき重要な傾向です。
2026年第1四半期に注目すべきトレンド
アジアでもAI分野が主要な投資領域であり続けると予想され、投資家の関心が産業全体の自動化と生産性向上を支援する実用的でスケーラブルなアプリケーションにますます集中していることから、自動運転車やロボティクス、産業におけるイネーブルメント、AIインフラなどの幅広いサブセクターにも資金が流れ込むと考えられます。香港(SAR)では2026年初頭もIPO活動は積極的に行われると予想されるほか、インドでは豊富なドライパウダーを保有するベンチャーキャピタルによる投資が大幅に増える可能性があります。日本では、上場維持基準の見直しによりIPOを目指すスタートアップの数が減少する一方でM&Aが活発化すると予想され、エコシステムにおいては戦略的な買収や企業が支援するイグジットがより大きな役割を果たす可能性が高いと考えられます。
Global analysis of venture funding日本語抄訳版
英語コンテンツ(原文)