Skip to main content

読み込み中です

      令和6年能登半島地震の教訓や近年の災害激甚化を受け、災害対策基本法等の改正や、2026年中の防災庁設置に向けた動きに見られるように、国の災害に対する意識が大きく転換しています。

      本稿では、法改正から読み取れる新たな地方自治体に対する要求事項の分析と、地方自治体BCPが直面している障壁について解説します。

      能登半島地震の発生から2年が経ちましたが、いまなお厳しい生活環境や復旧の途上におられる方々も多いと承知しております。
      改めて、被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げます。



      1.防災基本計画の修正内容の概要

      令和6年能登半島地震は、最大震度7・マグニチュード7.6の激震に続いて断続的な大雨が襲い、複合災害の脅威を浮き彫りにしました。また、中央防災会議報告では、半島特性・高齢化・冬期発災という地域要因から多くの課題が表面化したと指摘されています。

      複合災害と地域要因により、行政機能そのものも麻痺した過酷な災害体験を踏まえ、国は「災害関連死ゼロの実現」という高い目標を掲げ、プッシュ型支援の法的位置付けの明確化など、制度面での変革が急速に進めています。令和7年度には、災害対策基本法等の改正およびそれに伴う、災害基本計画の修正がありました。これらの変更に伴い、国や地方公共団体といった公的機関の役割が明確化され、民間企業を含めた防災および発災後の対応力の底上げが期待されています。

      (1)災害対策基本法等の改正

      能登半島地震での教訓を踏まえ、令和7年7月1日に災害対策基本法等が改正され、「国による災害対応の強化」「被害者支援の充実」「インフラ復旧・復興の迅速化」の3つを基軸に、被災者に対する支援体制や福祉的支援の強化が施されました。

      【図表1: 災害対策基本法等の改正】
      Japanese alt text: 災害対応は転換期へ_図表1

      (2)災害基本計画の修正

      災害対策基本法等の改正に伴い、中央防災会議が作成する災害基本計画についても修正がなされました。災害基本計画では、災害の種別に応じ、災害予防~災害応急対策~災害復旧・復興に至るまでの一連の流れにおける各ステークホルダー(国・地方自治体・住民等)の役割および責務が明記されており、今回の修正では主に、第2編「各災害に共通する対策編」、第6編「火山災害対策編」、第15編「林野火災対策編」の3つに関して変更が加わりました。

      【図表2: 災害基本計画の修正】
      Japanese alt text: 災害対応は転換期へ_図表2

      これら制度面での変革は、自治体に対し従来のBCPの見直しにとどまらず、重要インフラのトリアージや備蓄状況の公開およびサプライチェーン管理など新たな責務を課すものです。中央省庁、地方自治体、民間の密な連携が防災・減災に資する対策、そして被災時の迅速な復旧・復興の速さと質を大きく左右します。そのなか中でも、被災地域における対応のハブの役割を担う地方自治体における、地域特性を勘案した防災対策およびBCP策定の重要度は一層増していると言えます。

      2.実効性を阻む壁と課題

      以上のような国の新たな要求は高度であり、多くの自治体がその実行に苦慮しています。実効性を阻む最大の障壁は、BCPの出発点となる前提設定そのものが地域の最悪シナリオを反映していないことにあると言えます。

      自治体の多くは、次のような暗黙の前提に基づきBCPを策定してきました。

      • 庁舎や通信網は早期に復旧する
      • 職員の多くは参集でき、近隣自治体から応援が得られる
      • 主要なインフラは一部損壊しても機能を維持できる

      しかし、能登半島地震では、庁舎が甚大な被害を受け、通信・電力が長期間にわたり広域で停止し、職員自身が被災して参集できないなかで避難所運営に追われました。また、半島の特性上道路の寸断や断水により地域が孤立し、近隣自治体も被災して応援を派遣できない状況が生じました。つまり災害は「行政機能の停止を伴うシステム崩壊」として顕在化したのです。

      この「システム崩壊」のリスクを前提に据えなければ、BCPは機能しません。計画策定の出発点として、行政機能の麻痺や広域停電・断水、通信遮断、支援の空白など、地域特性を踏まえた最悪シナリオを具体的に想定し、甘い前提を捨て去ることが不可欠です。

      最悪シナリオの具体化にあたっては、抽象的な被害想定にとどまらず、対象地域の特性をより解像度高く織り込んだリスクシナリオ設計が求められます。たとえば、半島部や中山間地域では道路寸断による孤立が常態化し得る一方、沿岸部や埋立地では津波や液状化による長期的な機能喪失を前提とすべきです。加えて、人口減少や高齢化の進展、要配慮者の分布といった人口動態・住民属性も、避難行動や支援需要の在り方を大きく左右します。

      さらに、避難所として指定されている庁舎・学校・福祉施設・病院等の立地や老朽化状況、相互の位置関係を踏まえ、災害時に実際に機能し得るのかを冷静に検証する必要があります。たとえば、避難所間の配置は備蓄品の搬送や人的支援の面で効率的か、耐震性や浸水リスクを考慮すればより適切な代替施設は存在しないか、地域の人口構成に応じて各避難所の備蓄内容は最適化されているか、といった具体的な問いを通じて、起こり得る事態とそれに対するリカバリープランを事前に描き切ることが、BCPの実効性を左右します。

      実効性あるBCPとは、上記のような各地域の特性を踏まえ正確にとらえた最悪の前提から逆算して必要な備蓄や訓練、デジタル基盤整備を行うことによって初めて実現するものだと言えます。

      執筆者

      KPMGコンサルティング
      シニアマネージャー 荒尾 宗明
      シニアマネージャー 小出 悠太
      マネージャー 山本 悠真
      コンサルタント 近藤 真由

      BCP×AIを「新たなリスク」であると同時に「便利な道具」であるという2つの論点で整理し、BCPの新たな局面に向けた実務的な視点を提示します。

      企業の法務機能の高度化、グローバル規制対応、知的財産管理、人権リスク対応など、複雑化・多様化するリスクに対して包括的なソリューションを提供します。

      KPMGは、クライシスマネジメント態勢の構築や、BCM/BCPの策定に加え、危機が発生した場合の対応までをワンストップで支援します。

      お問合せ

      お問合せフォームより送信いただいた内容は、確認でき次第回答いたします。

      blue

      KPMGコンサルティング

      戦略策定、組織・人事マネジメント、デジタルトランスフォーメーション、ガバナンス、リスクマネジメントなどの専門知識と豊富な経験から、幅広いコンサルティングサービスを提供しています。

      Japanese alt text: KPMGコンサルティング