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      はじめに

      2025年7月31日にEFRAG(旧欧州財務報告諮問グループ)からESRS(European Sustainability Reporting Standards:欧州サステナビリティ報告基準)の改正に関する公開草案(以下、改正ESRS案)が公表されました。

      その概要は、EFRAG、ESRS改訂の公開草案を公表-KPMGジャパンを参照頂ください。

      本稿では、実務に影響すると思われる3つのポイントを解説します。

      なお、本稿の意見等は執筆者の個人的見解であり、その所属する組織の公式見解ではありません。文中の表現等については、全て執筆者の責任に帰します。


      改正ESRS案の実務に影響する3つのポイント

      DP(datapoints:開示小項目)の削減状況

      最初にDPの削減状況(図表1)を確認します。

      現行のESRS(以下、ESRS)において“shall disclose”等とされているmandatory disclosure(開示必須)項目は全体として56%削減されており、”may disclose”等とされているnon-mandatory disclosure(任意開示)項目は100%の削減となっています。

      ただし、改正ESRS案の基準書には基準本文とそれに付属するAR(Application Requirements)が含まれており、ARにはmayが残されています。

      図表1:DATAPOINTS(DP:開示小項目)の削減状況

      出典:改正ESRS案を参照して筆者作成


      実務に影響する3つのポイント

      Sub-sub-topicの削除等によるAR16の簡素化と位置づけの明確化

      概要は(図表2)のとおりです。

      図表2:3つのポイント(1)sub-sub-topicの削除等によるAR16の簡素化と位置づけの明確化

      出典:改正ESRS案を参照して筆者作成

      ESRSのうち全般的な要求事項を定めるESRS1に含まれるAR16には、トピック基準書(E1~E5、S1~S4、G1)ごとにtopic、sub-topic(topicの内訳)、sub-sub-topic(sub-topicの内訳)のリストが含まれています。このリストはDMA(Double Materiality Assessment:ダブルマテリアリティの評価)を行う際の単なるツールとして位置づけられていたのですが、実際にはチェックリスト的な使用がなされるケースがあり、実務上の弊害と負担が生じていると認識されているようです。

      例えば、トピック基準書E4(生物多様性)のsub-sub-topicには気候変動が含まれています。このような場合、生物多様性はマテリアルでないが気候変動はマテリアルであると判断されると、sub-sub-topicから遡ってE4に含まれる開示大項目DR(Disclosure Requirements)を全て開示する必要があるのではないかという懸念を生じさせるケースが想定されるようです。

      このような懸念を払拭し、開示企業の負担を削減するために(図表2)にある解決策が改正ESRS案で提示されています。

      ちなみに改正ESRS1案に含まれるAR16のリスト(改正ESRS案ではESRS1のAppendix A :List of topicsとされました)のE1~E5のtopic、sub-topicは(図表3)のとおりです。

      図表3:3つのポイント(1)改正ESRS1案 Appendix A:E1~E5の概要

      出典:改正ESRS案を参照して筆者作成


      財務的影響額の開示に関する2つのオプション

      概要は(図表4)のとおりです。

      図表4:3つのポイント(2)財務的影響額の開示に関する2つのオプション

      出典:改正ESRS案を参照して筆者作成

      このオプション1、2について、国際サステナビリティ基準審議会(以下、ISSB)メンバーのJenny Bofinger-Schuster氏が見解を表明しています(IFRS Foundation news 18 August 2025 ”Disclosing information about anticipated financial effects of sustainability-related risks and opportunities”)。

      それによるとオプション1はIFRS®サステナビリティ開示基準とのinteroperabilityに寄与するものとして評価しています(ただし、ISSB™基準に含まれる定量開示するためのスキル等が不足している場合に定性開示を許容する定めがオプション1に含まれていないことには懸念を示しています)。

      一方で、オプション2についてはanticipated financial effects開示が定性開示をデフォルトとしていることを問題視しています。オプション2に従った場合、仮に改正ESRS案に基づいて開示を行う企業がIFRSサステナビリティ開示基準に準拠した開示を求められた場合には、定量開示を行うための追加の作業負担が企業に生じることになることを懸念しています。また、投資家等にとって定量開示は重要な情報であることから、それを入手できないことも懸念材料であるとしています。


      スコープ1、2のboundaryの修正

      概要は(図表5)のとおりです。

      図表5:3つのポイント(3)スコープ1,2の boundaryの修正

      出典:改正ESRS案を参照して筆者作成

      ESRSではfinancial controlとoperational controlが混在しています(EFRAG IG2:Value Chain Implementation Guidance 54項参照)が、これを前者に統一する提案がなされています。

      排出量の開示に与える影響が生じる企業も多いのではないかと思われます。主な留意点は、(図表5)に記載しています。


      執筆者

      KPMGサステナブルバリューサービス・ジャパン/有限責任 あずさ監査法人
      金融統轄事業部/サステナブルバリュー統轄事業部
      テクニカル・ディレクター
      加藤 俊治

      加藤 俊治

      KPMGサステナブルバリューサービス・ジャパン/有限責任 あずさ監査法人 金融統轄事業部/サステナブルバリュー統轄事業部 テクニカル・ディレクター

      あずさ監査法人


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