山内氏:日本では1999年にPFI(Private Finance Initiative)法が成立し、公共施設の建設や運営における官民連携が推進されるようになりました。さらに、都市再開発・公共交通システムの運営・観光振興プロジェクトといった、より広範囲なまちづくりにおいても、行政機関と民間企業の相互連携によるPPP(Public-Private Partnership)が進められています。
私は法律の策定から具体的なまちづくりの施策まで、数多くのプロジェクトに関わってきましたが、最近はIT企業の存在が目立つようになったと感じています。たとえば、従来から進められてきたPFI事業では、公共の体育館は建設会社がつくり、施設運営会社が管理するものでした。しかし近年は、体育館の整備・運営にIT企業が参画するようになっています。単位施設にネットワークインフラを敷くだけでなく、情報をコンテンツ化し、このコンテンツが外に届けられれば、まちづくりにも貢献できるという意図が感じられます。
「イベントがあるときにしか人が来ない。エリア全体の開発をどう進めていくべきか」という新間さんの課題認識に対して、こうした事例は、定常的に人が動くような新たな試みと言えるでしょう。
新間:おっしゃるとおり、建物単体で考えるのではなく、建物と「まち」とをつなぐために、デジタル技術が応用され始めていると思います。
デジタルとまちづくりとが結びつかない方もいるようですが、交通だけを見ても、自動運転やライドシェアといったさまざまな動きがあります。都市OS(自治体サービスの提供や地域連携を行うためのシステム基盤)の導入や、XR(現実世界と仮想世界を融合し、新しい体験を創造する技術。「VR」や「AR」などの総称)によるコンテンツ創出なども全国で取り組まれています。
ただ、個人的に気になるのは、そうしたデジタルによるまちづくりの取組みが実証実験で終わってしまい、実装にまで至るケースは多くないことです。こうした現状についてはどのようにお考えでしょうか?
山内氏:そうした課題は、自動運転において顕著です。全国さまざまなところで実証実験が個別に行われているものの、実装となるとなかなかうまくいっていません。
デジタルの世界では、ネットワークの「外部性」をいかにうまく使うかがポイントです。経済学の言葉では「間接的ネットワーク外部効果」と言い、ユーザーが多いほど価値が高まり、しかもさまざまな主体が参画するメリットがあります。自治体のケースでは、特定の自治体が単独で何か施策を実行しても難しく、複数の自治体や関係主体の参画によって効果が倍増します。
だからといって、国がプラットフォームを用意してもうまくいきません。最初からこれと決めるより、各民間業者に任せて、デファクトスタンダード(企業間競争によって業界の標準として認められた規格)を活用することが効率的です。それを進めるための施策が、国や行政に求められると思います。