松田:
そうですね。この調査の趣旨とは必ずしも一致しないかもしれませんが、昨今「人的資本」と呼ばれる領域については、コーポレートガバナンスの観点からは、経営人材をどうやって育成するかにフォーカスしてしまっていいと思います。多くの企業で人的資本経営の重要性はわかっていながら、あまりに分野が広いので、何をすべきかがわからなくなっているのだと感じます。でも、最優先すべきは経営人材の育成です。
そうするとまずやるべきことは、取締役会で指名委員会での議論の仕組みを構築することです。経営人材が内部にいなければ外部から連れてくることも考えなければなりませんが、日本では未だ外部人材プールが乏しいですし、内部登用が主流です。ですから、内部登用を前提とした経営人材育成は、指名委員会の大きなテーマになります。私はここが一番、急務だと思っています。なぜならば、今までの日本企業は、それをやってこなかったからです。そして監査役等には、そのプロセスが適切に機能していることの監査が求められます。
田中:
その流れができている会社はまだ少ないですね。
松田:
「財務部門が直面している最も大きな課題はどれだと思いますか?」という問いでも、日本では「人材の確保と維持」という回答が77%と際立っています(図表3参照)。ここにも経営人材育成の遅れが見て取れます。
これに対してIT で置き換えよう、DX推進だと皆さんおっしゃいますが、どのようなシステムデザインを作ったら良いのかという企画面、実際にオペレーションを動かす現場面など、やはり人は必要なわけです。本当にDXで代替できるのか、何がDX では代替できないのかを経営陣に知らせることは、現状を知っている監査役等の重要な役割だと思います。
田中:
おっしゃるとおりですね。これまでDX は、生産性向上ばかりフォーカスされていました。でも私は、将来的にDXとはリソースマネジメントになるのではないかと思っています。リソースマネジメントの一環として、人的資本の観点からもDXで何を代替していくかという議論は非常に重要です。将来のマネジメント層をどう育成するかもまさに同じで、従来のように内部登用だけでなく、外部採用を含めた全体としての人材プールをどうするかを議論する必要があります。