本レポートでは、KPMGがグローバルで行った調査結果から得られた、XaaS、データ、サイバーセキュリティ、人材、デジタル化とイノベーション、そしてESGの6つのトレンドを踏まえ、AIが普及した世界におけるITのミッションやバリュープロポジションに与える影響について解説します。また、数年先を見据え、テクノロジー投資を促進し、AIや自動化を使用してデータの力を活用することにより、ITが組織をどの程度デジタル化できるかについて考えます。さらに、このような未来を実現するためにITリーダーやチームが習得すべき能力を提案します。
CIOの役割はかつてないほど重要になっています。KPMGは、ITリーダーおよびチームはこの6つの重要な優先事項に取り組む必要があると考えています。
1.XaaSチャンピオン(XaaS活用のエキスパート)
クラウドやXaaSは、短時間で規模の拡大・縮小が可能で、最新かつ革新的なソリューションを利用でき、新しいソリューションの導入にかかる初期費用を削減することもできるなど、顧客に多大なメリットをもたらします。
XaaSチャンピオンになるための基準は明確です。ITリーダーがそこに到達するためには、今すぐに行動を起こす必要があります。最初に取り組むべきステップは次のとおりです。
パブリッククラウドの進化を管理するガバナンスを浸透させる
IT部門、ビジネスパートナー、ベンダー間で調整・協力する
サイバーセキュリティおよびデータ保護機能を開発する
IT関連コストの資本的支出から運営費への移行に伴う財務システムやポリシーの変化に対応する
2.データ中心主義
プロセスの実現からインサイトの提供へと前進するために、ITリーダーはデータアーキテクチャを再構築し、活用能力を拡張させる必要があります。
組織をデータ中心主義へと移行させるために、ITリーダーが現在取り組むことができるステップは次のとおりです。
データをより広範なテクノロジー戦略に統合する
データ中心のITオペレーティングモデルとロードマップを作成する
データ人材の不足を解消する
XaaSへの移行
3.レジリエンス重視
強固なレジリエンシー文化に支えられたテクノロジーと人を組み合せにより、サービスの中断やサイバー脅威に対する脆弱性を軽減できます。
IT部門が直面するサイバー技術競争はますます厳しくなっています。多くの組織でサイバーセキュリティにかかるコストが大幅に増加しており、これはインシデントおよびそれに関連する復旧コストの増加に伴ってより一層拡大しています。IT部門はこれを傍観するわけにはいきませんが、容赦なくサイバー攻撃が行われることを考慮すると、焦点は予防から迅速な復旧へとシフトしています。
サイバー技術競争に勝つことや、攻撃を防ぐことが不可能だとしても、レジリエンスを高めるためにITリーダーが今すぐ取り組むことができるステップがあります。
技術的なレジリエンスとIDベースの万全なセキュリティ対策を講じる
サイバーリスクを生む文化的な障害に取り組む
第2の大規模なプラットフォーム再構築を見据えたサイバーロードマップを策定する
4.人材の育成
組織は採用活動や人材開発への創造的なアプローチを通して能力の隔たりを解消し、多様性があり、刺激的で充実した職場を生み出すことができます。
その一方で、IT人材を巡る争いは激しくなり、アーキテクチャやデータエンジニアリングの専門的なスキルを持つ人は、XaaSの未来で生き残るために必要な人材として求人リストに加わると予想されます。しかし、ITへの投資総額の増加予測にもかかわらず、トレーニングに費やされる割合は減少すると考えられています。トレーニングの機会が減少し続ければ、適切なスキルを持った専門家の全体数が減少するおそれがある一方で、離職者は増加すると思われます。
IT組織が人材育成を強く主張しているにもかかわらず、成長に必要なスキルの獲得を妨げる障害があります。潜在的なハードルを乗り越えるために、ITリーダーは以下の行動を取ることができます。
人事部門とのよりダイナミックなパートナーシップを構築する
IT部門は人事部門と連携することで、採用パイプラインの変化を共有し、新しい役割やスキルが生まれた場合に適切に対応できるよう事前に協力して計画を立てておかなければなりません。人事部門だけでなく調達などのビジネス部門も、IT部門が必要なスキルとその獲得方法を戦略的に把握できるように支援することができます。
未来のITタスクは、フルタイム勤務の従業員、ベンダー、テクノロジー(AI、自動化など)の組合せによって実行される可能性が高く、スキルアッププログラムや労働生産性の向上によって強化することができます。
人事プロセスおよび仕事とキャリアのアーキテクチャを今すぐ進化させる
また人事部門は、新しい方法で新たな人材を探し、確保するためのテクノロジーを保有していない可能性があります。既存の人事システムは、当然ながらIT部門以外の他部門のために運用されているため、IT部門のキャリアパスやスキル要件の管理に必要な新しいアプローチに適応できない可能性もあります。そこでIT部門は、未来のIT人材のライフサイクルを管理するためにシステムを適応させ、新たな機能を開発しなければなりません。結局のところ、ITの核となる強みの1つは、テクノロジーをビジネスの業務に合わせることにあるのです。
テクノロジーと働き方を最新化し、魅力的な職場を作る
5.イノベーションの加速
ITは今や変革をもたらすビジネスパートナーとしてのポジションを確立していますが、そのポジションを維持するためにイノベーションを加速させる必要があるでしょう。
IT部門はコロナ禍への対応によってそのポジションを確立しました。ほぼ一夜にして状況は変わり、IT部門は、組織が顧客や従業員へのアプローチ方法を再定義し、サプライチェーンの最適化を支援しました。2023年になると、デジタルリーダー集団が出現します。彼らは、組織がより速いペースでトランスフォーメーションを行い、世界平均を上回る成果を上げられるよう支援しています。具体的には、従業員生産性の向上、顧客エンゲージメントの強化などであり、まさに未来のIT部門の特徴を示しているのです。
生成AIやその他のAIテクノロジーを活用した究極の自動化も始まっています。未来のITリーダーは、どの部分でAIの利用を増やすべきか、そしてこのAIテクノロジーからより大きな価値を得るためにどのように人を配置すべきかを理解しています。また、未来とはただ単により懸命に、より迅速に、より良い仕事をするよう人に求めるものではないと理解しています。イノベーションを加速するため、AIの活用に的を絞る必要があるのです。
デジタルリーダーシップの必要性が明確になった今こそ、行動を起こす時です。イノベーションを加速させるために、ITリーダーが着手できるステップをいくつか紹介します。
支えとなるAI戦略とテクニカルアーキテクチャを見直す
現在のオペレーティングモデルの多くは自動化に対応していないため、従業員やビジネスパートナーも自動化に向けてスピードアップする必要があります。この基盤の構築には時間がかかり、抵抗が生じる可能性があります。従業員はテクノロジーに仕事を奪われるのではないかと危惧し、組織は従業員のスキルアップや、AIと既存のツールやシステムの統合に懸念を抱いています。しかし、AIツールやスキルが急速に変化する状況では、自動化の仕組みを効果的に導入し拡大する方法の早急な見直しが求められています。
DXの障害となる協力や調整の課題を解消する
資金調達のアプローチを急速に進化させる
適切な人材を惹きつけ、定着させ、育成するための機能とジョブアーキテクチャを獲得する
6.責任ある運営(ESGの取組み)
IT部門は組織全体におけるESGの取組みを促進するという独自の立場にあります。
組織にとってESGは、短期的視点(経費や資本コストの削減など)と、マーケットシェアの拡大、従業員の維持、規制リスクやレピュテーションリスクの軽減といった長期的視点の両方において、新しくダイナミックな価値の源泉です。投資家はグリーン企業への投資に意欲的で、金融市場におけるESG投資の運用資産は増加の一途をたどっています。債権者はサステナブルな活動に資金を提供するために、有利な条件で融資を行っています。顧客もまたサステナブルな製品を求めています。
ESGの台頭は、報告ツールへの投資とクラウドへの移行を促進しました。ESGの取組みによって価値を獲得するには、IT部門を含む組織全体がESGを運用できるようになる必要があります。IT部門によるバリュープロポジションは、企業のESGパフォーマンスに貢献できるかどうかにかかっています。
ESGを中心とした組織に変化させるために、ITリーダーが現在取り組むことができるステップ例を紹介します。
企業のESG戦略および評価に対するITの貢献度を理解する
E(環境)、S(社会)、G(ガバナンス)について考える
ESGから価値を獲得する
7.おわりに
ITには素晴らしい未来が待っています。ITリーダーとITチームは、組織がデジタル化と第2の大規模なプラットフォーム再構築を進め、つながり(Connected)、推進力があり(Powered)、信頼される(Trusted)企業になるためのサポートを行うことができます。
本レポートでは、その取組みの中心となるITの未来について、必要な能力とその習得手順に焦点を当てて紹介しました。最後に、KPMGの専門家の経験と本レポートで取り上げたトピックに基づいて、ITリーダーが望ましい未来の姿に近づくために考慮すべき点をいくつか紹介します。
| 1 | XaaSの豊かな可能性を活用する |
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|---|---|---|
| 2 | データ中心主義の組織を作る |
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| 3 | サイバーレジリエンスに注力する |
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| 4 | 人材を育成する |
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| 5 | 急速なイノベーションを行う |
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| 6 | ESGでリードする |
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レポートのPDFでは、KPMGが行ったグローバル調査の回答結果や課題などの詳細がご覧になれます。
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