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      社会の高齢化率が急速に高まるなか、医療や介護のニーズは劇的に拡大しています。一方、少子化による労働力減少は担い手不足の深刻化を招いており、医療・介護現場の質の確保や生産性向上が求められています。

      本連載は、「業種別2030年市場展望と求められる人材要件」と題して、メディア・エンターテインメント(メタバース)行政(行政DX・スマートシティ(都市OS)) 、医療福祉(ヘルスケア) 、自動車(自動運転車・コネクテッドカー)運輸(物流DX)教育(EdTech)の各6分野を取り上げて考察しています。

      第3回である本稿では、医療・介護に加え、健康維持や予防分野を含むヘルスケア産業について2030年の市場展望を描き、提供価値の変化に伴い求められる人材要件について考察します。

      1.医療福祉(ヘルスケア):国内市場・労働市場規模の見通し

      ヘルスケアはサービス提供領域によって規制産業にあたるものがあり、政府の動きが重要です。民間企業は各種規制に沿った事業展開を行う必要があり、PHR(パーソナルヘルスレコード)、ゲノム解析、医療タスクシフティング、オンライン診療・処方/薬剤配送サービス、介護機器/ロボットなど、新興分野は細分化されて個別に進捗しています。

      近年では一部規制緩和が進むなかで、DTx(デジタルセラピューティクス)、オンライン技術を介した事業者間のサービスが連携され、より予防医療に根差した便利な医療・介護サービスが実現し始めています。今後は、規制産業、かつ細分化した環境下であることから、大手と新興系ベンチャー間のポジション争いが起こると予測されます。

      ヘルスケアのうち新興分野について、各社公表資料を基にKPMGが試算したところ、2030年には国内市場規模は約13.5兆円、労働力に支払われる対価も約2.7兆円に達する見込です。

      【図表1:ヘルスケア新興分野国内市場規模】
      Japanese alt text: 医療福祉(ヘルスケア)_図表1 出所:各社公表資料を基にKPMG作成
      【図表2:ヘルスケア新興分野国内労働市場規模】
      Japanese alt text: 医療福祉(ヘルスケア)_図表2 出所:各社公表資料を基にKPMG作成

      2.医療福祉(ヘルスケア):新たな提供価値と未来予想図

      2030年における提供価値の変化として、PHRでは健康、未病段階といった個人の健康やライフステージをより広範に捉えた領域において、本人自身の活用による日常生活改善・健康増進や医療・介護従事者の活用によるより質の高い医療・介護の提供など、オンライン診療・処方/薬剤配送サービスでは医師不足対策、軽微・初期的な症状での受診に対する心理的障壁低減、医療の地域間格差解消などが予想されます。加えて、介護機器/ロボットでは介護者の省人化や高齢者の自立支援の普及拡大などが予想されます。

      これらの実現にあたって、健康・医療・介護を一気通貫したヘルスケア情報プラットフォームの整備(ハード面)や、従来の診断・治療のみではなく健康・予防の段階から医療従事者が住民との関係を強化していくような仕掛け(ソフト面)など、それぞれのさらなる環境構築の促進が予想されます。

      【図表3:2030年の国内ヘルスケア新興分野未来予想図】
      Japanese alt text: 医療福祉(ヘルスケア)_図表3 出所:KPMG作成

      3.医療福祉(ヘルスケア):求められる人材要件

      新たな提供価値実現には、価値を作り出し、提供の枠組みを整備し、仕組みとして運用していく必要があります。医療福祉(ヘルスケア)において、それぞれを担う人材に期待される役割は以下のとおりです。

      (1)新たな提供価値の創造

      <探索>

      • PHR・ゲノム情報を活用した個別化保健医療の研究開発

      <構想・企画>

      • オンライン診療・処方/薬剤配送プラットフォームの企画(スマートホスピタル)
      • 業種・企業規模を超えたサービス・技術が連携される産官学エコシステム形成
      • エコシステム上で自社の強みを見定めた新たな収益源の開拓
      • 政府への働きかけを通じた医療・ヘルスケアに関する規制緩和促進

      (2)価値提供の仕組み構築

      <サービス>

      • 地域での包括的アプローチを見据えた医療タスクシフティングにおける業務、役割分担の再設計
      • 日々の活動情報やバイタルデータを取得するウェアラブルデバイスの設計・開発
      • 企業・サービス横断でのデータ利活用の実現のための、データセキュリティ管理スキームの確立(要配慮個人情報の匿名性の担保など)
      • 現場ニーズを踏まえた介護機器/ロボットの開発・導入
      • ペイシェントジャーニー※1に即したユーザーに寄り添うUI・UXの開発

      ※1:患者が未病の段階から診断、治療開始から治療後に至るまでのプロセス

      <プラットフォーム>

      • 保健医療情報を適切に管理・取得することが可能なネットワークインフラの整備
      • オンライン診療・処方/薬剤配送プラットフォームの構築・導入

      (3)仕組みの運用・継続改善

      <普及>

      • 個人情報の取扱いにおける個人の不安感払拭や、個人情報利用に関する合意形成
      • 医療・介護現場へのサービス導入・活用サポート

      <維持>

      • 変化する法規制に合わせた製品・サービス・インフラの更新・維持
      • 機械化・自動化で導入される機器やロボットの管理・運用保守
      • 上記機器やロボットの不具合・故障発生時の迅速なユーザーサポート・修理
      • サイバーセキュリティへの対策

      <改善>

      • 収集データやユーザーの声を基にした製品・サービスの改善点探索・抽出、および企画・開発へのフィードバック

      今後はこれらの業務を行えるスキルを持つ人材をリスキリング・採用・外部活用といったさまざまな方法で確保することが、医療福祉(ヘルスケア)での事業成功の大きなドライバーとなります。

      執筆者

      KPMGコンサルティング
      パートナー 井城 裕治
      ディレクター 山田 伸一
      シニアマネジャー 松本 友之
      コンサルタント 谷口 弘樹

      KPMGコンサルティング

      戦略策定、組織・人事マネジメント、デジタルトランスフォーメーション、ガバナンス、リスクマネジメントなどの専門知識と豊富な経験から、幅広いコンサルティングサービスを提供しています。

      Japanese alt text: KPMGコンサルティング