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      2022年10月4日、国際コーポレートガバナンスネットワーク(International Corporate Governance Network、 以下「ICGN」)は「ICGN 日本のガバナンスの優先課題 」を公表しました。これは、2019年に公表した同文書の初版内容を更新し、現時点での日本のコーポレートガバナンスの課題を反映したものとなっています。また、同文書は、日本の企業のみならず、規制当局や、その他のステークホルダーに向けたガイダンスを提供する目的で取りまとめられたものとされています。

      ICGNは、グローバルな機関投資家を中心に構成するネットワークであり、コーポレートガバナンスの水準の向上を通じた市場や経済の発展のために、提言の発信、イベントの開催、トレーニングプログラムの提供など、さまざまな活動を行っている団体です。ICGNのCEOであるケリー・ワリング氏は、金融庁が設置している「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」のメンバーとして、日本のコーポレートガバナンス・コードやスチュワードシップ・コードの改訂にも携わっています。

      同文書は、2021年のコーポレートガバナンス・コード改訂後の実務の状況のみならず、今般の東京証券取引所の市場区分改革、金融審議会のディスクロージャーワーキンググループによる提言の内容も踏まえたものとなっています。ICGNは、日本におけるこうした改革の進展を評価するとともに、継続的な改革から、さらなる改善とその成果の期待できる分野を強調した内容を挙げているとも述べています。

      今回、ICGNが公表した同文書では、企業報告、取締役会の独立性、取締役会の実効性、資本配分、CEOおよび役員報酬の5つの課題領域ごとに、日本のコーポレートガバナンスのさらなる向上に向けた、複数の推奨事項が挙げられています。5つの領域は、2019年に公表された初版から変更はありませんが、具体的な推奨事項の数は、2019年の初版では14項目であったのに対し、今回は項番が付されているものだけでも31項目、さらに各領域の冒頭にある序文に記載の内容も考慮すると、それ以上となっており、前回より詳細かつ具体的な提案になっています。日本企業にとっては、一見踏み込んだ内容とみられるような提案も含まれています。しかし、グローバルな投資家から、適切なタイミングで適正な評価を獲得するために期待される、世界水準のベストプラクティスを念頭においた提案になっているともいえます。

      具体的な推奨事項の要点は以下の通りです。

      領域推奨事項項番
      企業報告★コーポレートガバナンス関連情報の有価証券報告書への統合序文
      ★招集通知の英文発行【プライム】1.1
      招集通知の総会30日前発行(現行の実務は約20日前)1.1
      ★有価証券報告書の総会30日前の英文発行【プライム】1.2
      ☆定款変更による総会基準日の変更(総会日の集中回避のため)1.3
      ★内部統制システムを監督する取締役会の役割(有効性確認結果)の開示1.4
      ★独立取締役で構成する監査委員会の設置1.5
      ★全ての監査委員の財務的知識の保有1.5
      ★監査委員会規則および委員、委員の出席状況、議題等の開示1.5
      ★企業報告(財務報告およびサステナビリティ報告)に対する取締役会の役割と説明責任を明確にした取締役会規則の開示1.6
      ★取締役会の開催頻度を適正化(経営陣への委任による戦略的問題へのフォーカス)1.6
      日本のサステナビリティ報告の枠組みの世界基準との調和1.7
      取締役の独立性独立社外取締役の割合1/3以上【プライム】2.1
      東証の上場規則における取締役の「独立性」の定義の強化2.2
      指名委員会の主導による透明性の高い独立取締役の選任手続の実施2.3
      ★取締役の財務の理解力の実証と定期的なトレーニングの実施2.3
      ★取締役および従業員の多様性の確保のための目標、計画、進捗の報告2.4
      ★女性の管理職登用へのさらなるフォーカス2.4
      ★取締役会議長とCEOの分離(同一人物である場合の理由の開示および継続的な構成の見直しの検討)2.5
      ★独立した取締役会議長の任命2.5
      ★相談役・顧問の有無、役割、報酬等の有価証券報告書、招集通知、コーポレートガバナンス報告書での開示2.6
      取締役会の実効性取締役会、委員会、個々の取締役のパフォーマンスの厳格なレビュー序文
      取締役会の実効性評価の開示の拡充(議論のトピック、結論に基づく課題認識、今後のアクション等)3.1
      独立性の高い(過半数を独立取締役で構成する)指名委員会の主導による年次の内部評価の実施3.2
      3年に一度の外部評価の実施(外部コンサルタントの任命および外部コンサルタントに関する開示は、指名委員会の責任において実施)3.3
      ★実効性評価、後継者計画、多様性ポリシーを含む指名委員会規則の開示3.4
      ★指名委員の構成、議題、出席状況の開示3.4
      ☆会社のパーパス、長期戦略、後継者計画、ダイバーシティ方針等に沿った指標を用いたスキルマトリクスの開示3.5
      ★各取締役の任命根拠の開示3.5
      ★筆頭独立取締役の任命3.6
      資本配分★取締役の財務知識の保有序文
      ★取締役会による年次の資本配分の方針の見直し4.1
      政策保有株式の削減計画の開示4.2
      政策保有株式の性質(関係性)の開示4.3
      ★取締役会による年次の事業ポートフォリオの見直し(撤退計画や経済合理性の説明)4.4
      ★事業の中核でない非戦略的資産を保有する理由の開示4.5
      ★株主還元方針(配当水準が適切であること)の開示4.6
      CEOおよび役員報酬報酬決定プロセスや報酬レベルと、会社の人事戦略との適合性の開示5.1
      ★CEOおよび執行責任者の報酬の個別開示5.2
      1億円以上に限定した個別報酬開示ルールの廃止5.3
      独立した報酬委員会の設置と委員会規則の開示5.4
      ★報酬委員のメンバー、議題、出席状況の開示5.4
      ★サステナビリティ関連の目標等と関連付けた報酬の根拠の説明5.5
      ★独立取締役の報酬の個別開示5.6

      【プライム】:プライム市場上場会社を対象としたもの
      ★:2022年に新たに加えられた項目
      ☆:2019年からある内容をさらに強化した項目


      執筆者

      あずさ監査法人
      KPMGサステナブルバリューサービス・ジャパン
      シニアマネジャー 橋本 純佳

      KPMGジャパンは、社会的課題の解決を通じて、サステナブルバリューの実現を目指す組織の変革に資する的確な情報やインサイトを提供しています。

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