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      2022年3月期決算において、「収益認識に関する会計基準」、「時価の算定に関する会計基準」等が適用されます。また、「グループ通算制度を適用する場合の会計処理及び開示に関する取扱い」については2022年3月期決算から早期適用が可能ですし、執筆時点(2022年1月)で公開草案が公表されている改正「LIBORを参照する金融商品に関するヘッジ会計の取扱い( 案)」については基準公表日以後適用が予定されています。

      執筆時点で最終化されていない会計基準等については、公開草案の概要を紹介していますが、最終基準等で変更される可能性があるため、ご留意ください。なお、本文中の意見に関する部分については、筆者の私見であることをあらかじめお断りいたします。

      POINT 1
      2022年3月期決算において原則適用となる会計基準等は次のとおりである。また、執筆時点で公開草案である改正「LIBORを参照する金融商品に関するヘッジ会計の取扱い(案)」についても2022年3月までに最終化された場合、適用となる予定である。

      1. 「収益認識に関する会計基準」等
      2. 「時価の算定に関する会計基準」等

      POINT 2
      2022年3月期決算において、早期適用が可能な会計基準等は次のとおりである。

      1. 「グループ通算制度を適用する場合の会計処理及び開示に関する取扱い」
      2. 改正「時価の算定に関する会計基準の適用指針」

      目次


      I.「収益認識に関する会計基準」等の概要

      1.基本的な収益認識の流れ

      (1)ステップ1:契約の識別
      「収益認識に関する会計基準」( 以下、「収益認識基準」という)等は顧客との個々の契約を対象として適用されます。そのため、ステップ1では契約の識別を行います。

      (2)ステップ2:履行義務の識別
      収益の認識は、原則として各履行義務単位で行います。そのため、ステップ2では履行義務の識別を行います。ここで履行義務とは、顧客との契約において、別個の財またはサービス(または、一連の別個の財またはサービス)を顧客に移転する約束であるとされています。

      (3)ステップ3:取引価格の算定
      ステップ3では、取引価格を算定します。取引価格とは、財またはサービスの顧客への移転と交換に企業が権利を得ると見込む対価の額であるとされています。

      (4)ステップ4:履行義務への取引価格の配分
      ステップ4では、取引価格の各履行義務への配分を検討します。

      (5)ステップ5:履行義務の充足による収益の認識
      ステップ5では、収益の認識時点と認識方法を検討します。収益認識基準では、履行義務の充足が「一時点」または、「一定の期間にわたる」のいずれかに該当するかについて検討します。

      履行義務が一時点で充足される場合、収益は履行義務が充足された時点で認識されます。一方、履行義務が一定の期間にわたり充足される場合、収益は一定の期間にわたって認識されます。

      なお、一部の項目については従来の実務等を考慮した重要性等に関する代替的な取扱いが定められています。


      2.表示および注記

      (1)表示に関する要求事項
      表示に関しては、主に以下の取扱いが定められています。

      • 顧客との契約から生じる収益の区分表示又は注記
      • 契約資産と顧客との契約から生じた債権及び契約負債の区分表示又は注記
      • 重要な金融要素が含まれる場合の取扱い


      (2)注記に関する要求事項
      注記事項の検討は、次の基本的な方針に基づいて行われています。

      • 包括的な定めとして、IFRS第15号と同様の開示目的及び重要性の定めを含める。また、原則として、IFRS第15号の注記事項のすべての項目を含める。
      • 企業の実態に応じて個々の注記事項の開示の要否判断を行うこと、また、開示目的に照らして重要性が乏しいと認められる項目は注記しないことができることを明確化する。


      収益認識に関する注記事項の包括的な定めとして、「顧客との契約から生じる収益及びキャッシュ・フローの性質、金額、時期及び不確実性を財務諸表利用者が理解できるようにするための十分な情報を企業が注記すること」という開示目的が設けられています。

      上記の方針を受けて、注記事項として以下の項目が定められています。

       1.重要な会計方針の注記(主要な事業における主な履行義務の内容、当該履行義務を充足する通常の時点)

       2.収益認識に関する次の注記

      • 収益の分解情報(収益及びキャッシュ・フローの性質、金額、時期及び不確実性に影響を及ぼす主要な要因に基づく区分に分解した情報)
      • 収益を理解するための基礎となる情報(契約及び履行義務に関する情報、取引価格の算定に関する情報、履行義務への配分額の算定に関する情報、履行義務の充足時点に関する情報、収益認識基準の適用における重要な判断)
      • 当期及び翌期以降の収益の金額を理解するための情報(契約資産及び契約負債の残高等、残存履行義務に配分した取引価格)

       3.連結財務諸表を作成している場合の個別財務諸表における注記(個別財務諸表で注記不要の項目及び連結財務諸表の注記の記載を参照できる項目)

       4.工事契約等から損失が見込まれる場合の注記

       

      (3)適用時期および経過措置
      収益認識基準は、2021年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用されています

      また、適用初年度については期首より前に新たな会計方針を遡及適用した場合の累積的影響額を、適用初年度の期首の利益剰余金に加減し、当該期首残高から新たな会計方針を適用できる等、さまざまな経過措置が設けられています。さらに、適用初年度の比較情報においても、次の経過措置が認められています。

      • 新たな表示方法に従い組替えを行わないこと
      • 収益認識基準に定める注記をしないこと

      II.「時価の算定に関する会計基準」等の概要

      2019年7月4日、ASBJにより、企業会計基準第30号「時価の算定に関する会計基準」(以下「時価算定会計基準」という) 等が公表されました。


      1.適用範囲

      時価算定会計基準は、企業会計基準第10 号「金融商品に関する会計基準(以下「金融商品会計基準」という)における金融商品、および企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」におけるトレーディング目的で保有する棚卸資産の時価に適用するとされています。


      2.時価の定義

      「時価」とは、算定日において市場参加者間で秩序ある取引が行われると想定した場合の、当該取引における資産の売却によって受け取る価格または負債の移転のために支払う価格と定義されています。

      時価の定義の変更に伴い、改正前の金融商品会計基準において定められていた「その他有価証券の期末の貸借対照表価額に期末前1ヵ月の市場価格の平均に基づいて算定された価額を用いることができる」という定めは削除されました。ただし、その他有価証券の減損を行うか否かの判断については、「期末1ヵ月の市場価格の平均に基づいて算定された価額」を用いることができる取扱いを踏襲しています。


      3.時価算定方法

      時価の算定にあたっては、状況に応じて、十分なデータが利用できる評価技法を用いるとされています。時価の算定に用いるインプットは、次の順に優先的に使用します。

      インプット内容
      レベル1のインプット時間の算定において、企業が入手できる活発な市場における同一の資産または負債に関する相場価格であり、調整されていないもの
      レベル2のインプット資産または負債について直接または間接的に観察可能なインプットのうち、レベル1のインプット以外のインプット
      レベル3のインプット資産または負債について観察できないインプット。当該インプットは、関連性のある観察可能なインプットが入手できない場合に用いる

      4.第三者から入手した相場価格の利用

      取引相手の金融機関、ブローカー、情報ベンダー等、第三者から入手した相場価格が時価算定会計基準に従って算定されたものであると判断する場合には、当該価格を時価の算定に用いることができるとされています。

      また、上記の定めにかかわらず、一定の条件に該当する場合、次のデリバティブ取引については、第三者から入手した相場価格を時価とみなすことができるとされています。

      • インプットである金利がその全期間にわたって一般に公表されており観察可能である同一通貨の固定金利と変動金利を交換する金利スワップ(いわゆるプレイン・バニラ・スワップ)
      • インプットである所定の通貨の先物為替相場がその全期間にわたって一般に公表されており、観察可能である為替予約又は通貨スワップ

      5.市場価格のない株式等の取扱い

      市場価格のない株式等に関しては、たとえ何らかの方式により価額の算定が可能だとしても、それを時価とはしないとする従来の考え方を踏襲し、引き続き取得原価をもって貸借対照表価額とするとされています。また、市場価格のない株式等については、時価に関する注記が不要とされています。

      一方、これまで時価を把握することがきわめて困難であるとして、取得原価または償却原価法に基づいて算定された価額をもって貸借対照表価額としていたもののうち、市場価格のない株式等に含まれないものについては、時価をもって貸借対照表価額とすることになります。


      6.開示

      改正企業会計基準適用指針第19号「金融商品の時価等の開示に関する適用指針」(以下「金融商品時価開示適用指針」という)では、金融商品の時価のレベルごとの内訳等に関する事項として次の開示項目の注記が求められています。

      区分開示項目
      貸借対照表においてまたは注記のみで時価評価する金融商品
      • 時価のレベルごとの残高
      貸借対照表においてまたは注記のみで時価評価するレベル2の時価またはレベル3の時価の金融商品
      • 時価の算定に用いた評価技法およびインプットの説明
      • 時価の算定に用いる評価技法またはその適用の変更の旨およびその理由
      貸借対照表において時価評価するレベル3 の時価の金融商品
      • 時価の算定に用いた重要な観察できないインプットに関する定量的情報
      • 期首残高から期末残高への調整表(当期の損益に計上した未実現の評価損益を含む)
      • 企業の評価プロセスの説明
      • 重要な観察できないインプットを変化させた場合の時価に対する影響に関する説明


      時価算定会計基準は、2021年4月1日以降開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用されています。また、適用初年度においては基準が定める新たな会計方針を将来にわたって適用し、その変更の内容を注記する等のさまざまな経過措置が設けられています。


      7.改正「時価の算定に関する会計基準の適用指針」について

      2021年6月17日、ASBJにより、「時価の算定に関する会計基準の適用指針」(以下「改正時価算定適用指針」という)が公表されました。改正時価算定適用指針では、投資信託の時価の算定について、以下を規定しています。

      • 投資信託財産が金融商品である投資信託の取扱い
      • 投資信託財産が不動産である投資信託の取扱い


      また、貸借対照表に持分相当額を純額で計上する組合等の出資の時価の注記は不要とし、その場合、「時価の注記を要しないとする取扱いを適用しており、時価の注記を行っていない旨」および当該取扱いを適用した組合等への出資の貸借対照表価額の合計額を注記することとされています。

      改正時価算定適用指針は、2022年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用されます。また、2022年3月31日以降終了する連結会計年度および事業年度の年度末から早期適用することもできます。


      III.改正「LIBORを参照する金融商品に関するヘッジ会計の取扱い(案)」

      2021年12月24日、ASBJにより、実務対応報告第40号の改正案「LIBORを参照する金融商品に関するヘッジ会計の取扱い(案)」が公表されました。概要は次のとおりです。

      • 金利指標置換後の会計処理に関する取扱いの適用期間を、2024年3月31日以前に終了する事業年度まで延長する。
      • 金利指標置換後に金利スワップの特例処理について一定の要件が満たされている場合には、2024年3月31日以前に終了する事業年度の翌事業年度の期首以降も、金利スワップの特例処理の適用を継続できる。また、この取扱いは振当処理にも同様に適用できる。
      • 金利指標置換時が2024年3月31日以前に終了する事業年度までに到来していない場合であっても、2024年3月31日以前に終了する事業年度までに行われた契約条件の変更または契約の切替が一定の要件を満たしているときには、2024年3月31日以前に終了する事業年度の期末日後に到来する金利指標置換時以後も金利スワップの特例処理を継続できる。


      なお、適用時期については、公表日以後適用できるとすることが提案されています。


      IV.「グループ通算制度を適用する場合の会計処理及び開示に関する取扱い」の概要

      1.概要

      2021年8月12日、ASBJにより、実務対応報告第42号「グループ通算制度を適用する場合の会計処理及び開示に関する取扱い」(以下「実務対応報告第42号」という)が公表されました。

      グループ通算制度を適用する場合の実務対応報告の開発にあたっては、基本的な方針として、連結納税制度とグループ通算制度の相違点に起因する会計処理および開示を除き、連結納税制度における従来の実務対応報告における会計処理および開示に関する取扱いを踏襲することとされています。

      「実務対応報告第42号」の概要は次のとおりです。

      【会計処理】

      • 個別財務諸表における損益計算書において、通算税効果額を当事業年度の所得に対する法人税および地方法人税に準ずるものとして取り扱う。
      • 連結財務諸表においては、「通算グループ内のすべての納税申告書の主体を1つに束ねた単位」に対して税効果会計を適用する。

      【開示】

      • 通算税効果額を法人税および地方法人税を示す科目に含めて個別損益計算書に表示し、通算税効果額に係る債権および債務は、未収入金や未払金などに含めて個別貸借対照表に表示する。
      • 繰延税金資産および繰延税金負債に関する表示について、個別財務諸表では、同一納税主体の繰延税金資産と繰延税金負債は双方を相殺して表示し、異なる納税主体の繰延税金資産と繰延税金負債は双方を相殺せず表示する。連結財務諸表では、通算グループ全体の繰延税金資産の合計と繰延税金負債の合計を相殺して、連結貸借対照表の投資その他の資産の区分または固定負債の区分に表示する。
      • 「実務対応報告第42号」による会計処理を行っている場合には、その旨を注記する。

      2.適用時期等

      2022年4月1日以後に開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用されます。ただし、税効果会計に関する会計処理および開示については2022年3月31日以後に終了する年度の期末からの早期適用が可能です。また、グループ通算制度への移行の形態に応じて経過措置が定められています。
       

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      2022年3月期決算の留意事項(会計)

      KPMG Insight Vol.53

      執筆者

      あずさ監査法人
      会計プラクティス部
      シニアマネジャー 藪前 弘

      会計・開示コンテンツ

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